S.E.に纏わる日常(開発室編)前編

S.E.に纏わる日常(開発室編)前編


※閲覧注意・エ駄死要素あり

特殊装備「S.E.」過去作SS

第0話

第1話

第1.5話(前半)/(後半)

第1.75話

第2話/別視点/アビドスサイド視点

第2.5話/別視点

ミッション説明

イブキ救出作戦

外伝

騒動中

秘する花

騒動後

FDゲーム化への試練


庇われたゲヘナモブの手記

現在はミレニアム内に設置されているS.E.の開発室と(砂糖)中毒治療室についてではあるが、当初はD.U.地区内に設置する予定だったという。勿論理由はシャーレ管轄、正確には"先生"主導で立ち上げた事にあるが、それでは資金力・開発力に長けるミレニアムの支援を受けづらくなるというのが、一番の原因となったそうだ。なお、これ以外に中毒症状に陥ってしまったユウカさんを手許に置いておきたいという、とある生徒の思惑も存在しているという風説が流れているが、どうもこれについては事実の様である。

そういう事で、ミレニアム生を除いた他生徒は母校から、もしくは比較的安価に貸し出されているシェアハウスから通う事が大半である。自分も後者を利用している生徒の一人である。


Gen3開発に突入しているS.E.開発室は、昼夜交代・分業しながらごった返す、ある意味アビドス以外で最も活気のある場所ではないかと錯覚する程の生徒達で溢れていた。勿論生徒以外も、全体から見たら少数派とはいえ居る。

当初は当学園内の偶々空いていたオフィススペースを借りて、細々と開発を進めていた様である。と言っても、私はGen1の開発には参加していないので伝聞に頼らざるを得ない。


確かその当時は、まだ各校内でも砂糖中毒者と健常者、そしてその中でも砂糖に対するスタンスや元の派閥毎にバラバラに分かれていたのが実情であり、"先生"や僅かな協力者だけでどうにかしなければならなかったという。また、同時並行で中毒治療室では治療薬開発が進んでおり、そちらに人材が集中していたのも人手不足の原因になったのだと思われる。

Gen1の開発完了後、漸く試験運用や巡回や警備等の軽任務に投入された。一応実戦投入は可能だったものの、宝石で言えば原石を研磨せずに投入した様な完成度だった為、慣熟訓練や今後の開発用のデータ取りの側面が強かったという。この巡回任務中に例のアビドスによるテロ攻撃が行われ、コハルさんが私を庇った事で、皮肉にもスーツの開発が大きく進むことになったのは、運命の悪戯だろうか。

Gen2は、無計画らしいテロ攻撃によって偶然もたらされた、スーツの防御力を貫通する特殊注射弾頭の情報を元に、完成した治療薬「コンティニューコイン」を自動注射する機構の搭載と、全身タイツ状態の外見の改善を目標に開発が行われた。

この時は前述したユウカさんに加えて、私を庇ってくれたコハルさん、そしてその二人と仲が良かったゲーム開発部の皆さんやノアさん、ミカさんにヒフミさんとアズサさん、スーツ開発や前述の事件の噂を聞いて駆けつけてくれたアリウススクワッドの皆さん等、名だたる面々が揃うドリームチームが徐々に形成されつつあった頃でもある。特にワカモさんとFOX小隊の皆さん、美食研究会の皆さんと風紀委員会の皆さんという風に、元の関係性では対立していた組織やグループが協力し合う事になれたのは、ブラックジョークかもしれないがある意味砂糖のお陰なのかもしれない。


そして万魔殿からの依頼で行われたイブキさん救出作戦という、一見すると無謀な賭けの様な作戦を成功に導いた事で、大きな功績ができたと共にキヴォトスにそれを知らしめる事ができた。実を言うとアビドス側の被害はそれ程ではなく、物資消耗量で言えばこちらが不利であった。しかし、砂糖による目覚ましい復興と共に各校の散発的な攻撃を見事に捻じ伏せてきたアビドスにとっては、無視できる敗北ではなかったと考えられている。

また、連合軍で本作戦に当たった成功体験が、「シャーレと共に連携して行動した方が個々で反撃するよりも効果的である」という論調に繋がり、協力者が激増したのも大きい。勿論、利害関係の不一致問題や首脳陣に対する戦後の処遇スタンスで揉めそうになった事はあった。しかし、今までの影響力と本作戦の総指揮という功績による発言力で優位に立った"先生"の説得と、各学園の有力者達のささやかな支持によって、先送り気味に沈静化できたのは幸運であったのだろう。

そうして先程の喧騒に包まれた開発室の現状に至る訳であった。当初よりも大幅に規模が拡大し、様々な派生装備の開発や先の中毒治療室との緩やかな統合によって、もはや1スペースでは入り切らなくなった結果、砂糖戦争の影響で空きビルと貸した1棟を丸ごと使う形で移転したのである。流石に多額横領して創り上げたらしい、とある都市に比べたら極めて小規模だと考えられるものの、私が知る限りでは破格の対応であると言える。


ようやく話を戻すが、Gen3では背部バックパックユニットの分散化とそれに合わせたアウタースーツの端子の分散配置と追加装備用ハードポイントの搭載、そして装着者個人に合わせた特化型カスタマイズと、汎用的な追加オプションの新規開発を行う事になった。これは、ツルギさんやコハルさん等の有翼生徒から、バックパックが干渉して動かし辛いという問題が出てきた事や、先の救出作戦で水中活動能力が当初の想像以上に高かった事、そして防御力を重視した為に火力面での増強が無かった事が理由となった。一応羽根問題については、Gen1の時点で身体と同じくインナースーツとアウタースーツで全体を覆う様になっており、快適性と機密性は保ったつもりである。しかし、大量のバイタル維持機能を盛り込んだバックパックが思いの外嵩張り、羽根の稼働に大きく制約を設けていた様であった。他にも、スカジャンが羽織れないという改善要望も約1名から出されており、こちらも同時に改善できそうという事で要求仕様に盛り込まれた背景が存在している。

細かい改善点で言えば、一般的なフィルター缶形式とは違う仕様になっているガスマスクの改良や、当マスクを通して戦場で接種可能な、飲料やペースト糧食の改良も盛り込まれる事になった。こちらはGen2開発時から行われており、装着者本人だけでなく、ガスマスクについては取り扱いに慣れた元アリウス生達やアリスクの皆さんが、飲料や糧食については美食研や給食部の皆さんが、それぞれ協力してくれており、自分としては特に頼もしいと感じていた。

 

長くなってしまった気がするのでここで一旦区切ろうと思う。

それにしても、スーツ脱着工程が最早モータースポーツのピット作業の如き速度になっている件については、流石にツッコんだ方が良いのだろうか?

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