裏切り者

裏切り者


※閲覧注意・エ駄死要素あり

特殊装備「S.E.」過去作SS

第1話

第1.5話(前半)/(後半)

第2話/アビドスサイド視点

ミッション説明

イブキ救出作戦

外伝

FDゲーム化への試練


あるトリニティモブの手記(第2話後半と同一人物)

私が最初に異変を感じたのは、周囲の生徒達の様子が顕著におかしくなり始めた時であった。

何故か学園内で異常に流行る特定の菓子と調味料。

攻撃性の増幅により頻度と過激さが日々増していく喧嘩と騒動。

そして鼻につく甘ったるい香りが絶えない校内。

明らかに正常ではなくなってしまったと思いつつも、他の生徒との交流が少なかったせいもあって、何をすれば良いのか、そもそも誰が正常そうなのかもはっきりと掴む事ができなかった。


事態が大きく動いたのは、補習授業部と正義実現委員会のトップ、そしてティーパーティーの重鎮との極秘会談に、何故か巻き込まれる形になってしまった事をきっかけとする。

あの後、どうもトリニティ内で数少ない正気を保っていた生徒であるヒフミさんやアズサさん、そしてコハルさんとツルギさんとひょんなきっかけで本格的な繋がりが作れた事と、私が偶々夜中に甘ったるい臭いで寝付けずに無断で外出した事を契機として、その4名に発見されて半ば拉致られる形で会談に付き合わされたのである。今思い返すとこの後に話す内容が極秘中の極秘だった為に、ここまでする必要があったのだと納得している。

その内容が、ナギサ様とセイア様による罪の告白と、ミカ様のミレニアムへの極秘搬送任務の依頼であったのは、流石に驚愕せざるをえなかった。なんせミカ様を砂糖中毒にさせられ、その彼女を人質として砂糖の流通の黙認をせざるをえなくなるという、今回のトリニティの元凶にして被害者である事を自白したに等しく、その上こんな強迫をしてきたのがアビドス側と、そちらに寝返った補習授業部のハナコというのだから、同じグループに属していた3人、特にヒフミさんとコハルさんが怒りを顕にしていた。特にヒフミさんに至ってはこのまま刺し違えにアビドスに向かいそうな程であったが、普段恐ろしそうに見えたツルギさんの冷静な静止と、ナギサ様がこの後話した依頼でどうにか繋ぎ止める事ができたのは、ある意味不幸中の幸いであったと言えるのかもしれない。

そして、お二人のご友人であるミカ様をこれ以上傷つけさせず、またティーパーティーに対する人質にさせない為という事で、砂糖の蔓延がまだ抑えられており、治療法を最も早く確立しそうなミレニアムに搬送する事を決定したのだという。既にノアさんと"先生"を介して各方面から協力者を募っており、受け入れ体勢や搬送支援の確立だけでなく、セイア様が白々しく予測されていたトリニティへの襲撃を隠れ蓑に使えるという目算であった。あまりにも用意周到でお二人の政治力というものがどれだけ強力だったか知ると同時に、これだけ手を尽くしても隠れて行わなければならない事情というのが、どれだけ深刻か実感させられた。

その上、トリニティに実質麻薬の様な砂糖を蔓延させて堕落させた裏切りの罰を受けると同時に、最悪の事態を起こさない様に敢えて残り、重い舵をどうにか取る。だからこそ君達は真のトリニティの未来の為に、今のトリニティを裏切ってくれという衝撃的なお願いをお二人がされたのには、流石に開いた口が塞がらなかった。でも、ほぼ同時期に連れてこられた全身自傷跡だらけのミカ様を見たときには、この驚きも強い義務感によって早々に掻き消される事になった。


最低限の私物と、こんな状況では頼れるとは言い難い"水道管"(中古)を持って、ミカ様を収容した車両に他のメンバーと共に乗りこんだ。周囲を警戒しているとはいえ、やはり母校を一時的にも裏切らなければならない事については、4人とも複雑な心境を表すかのような顔をしていた。やがて私達が逃げる様に深夜の闇に消えていった頃、後ろから高く登る爆炎と共に轟音が上がったのを見て、これが予測されていた襲撃かと納得している自分が居た。幸いな事に派手な襲撃だったが故か、こちらへの追手が来ることは無かった。


トリニティ区域内を抜けてからも非常にスムーズに事が進んだ。途中で事前に待機してくれていたC&Cが護衛に参加してくれた事もあり余裕ができた為、自然な流れで各々の近況について情報交換を行っていた。

ツルギさん曰く、正規実現委員会の大部分が砂糖に侵され実質全滅。苛烈で独善な組織に成り果ててしまったとの事であった。幸いにも救護騎士団は、ミネ団長の迅速な判断により早々に"裏切った"そうであり、現在はゲヘナの救急医学部やその他有志連合と合同で中毒者対策にあたっているそうであった。

ヒフミさんとアズサさんからは、シスターフッドも絶望的であり、それどころか企業の方にまで毒牙が掛かっている現状を聞くことができた。モモフレンズ公式グッズについても食品方面は徐々に調味料の侵食が始まっていた事については、二人とも悲哀なのか憤怒なのかそのどちらも含まれていそうな表情で語っていたのが印象に残った。

コハルさんについてはミカ様の付き添いという事もあって直接お話を聞く機会が無かったものの、時折幻覚幻聴に苦しまれた時にできる限り手を尽くそうとしていたのを聞くことはできた。どうやら中毒症状の中でもだいぶ重い方だったらしく、抱いた罪の意識を増幅させる悪辣な禁断症状が余計に過去に行った所業と合わせて、酷い噛み合わせを見せていた様であった。


ミレニアム到着後早々に、C&Cは別の搬送者の護衛に向かってしまった為に簡単なお礼しか伝えることができず、その後もミカ様の中毒治療室への搬送や私も含めた5人の仮転入措置(一応籍はトリニティのまま)に追われた事もあり、用意された空き部屋で落ち着いたと同時に泥のように眠る羽目になってしまった。あまりの疲労故に悪夢を見ることすら不可能だったのは、不幸中の幸いだったのだろう。

その後は自身の戦闘力が周りと比較しても残念な事もあり、積極的に行動することはせずに中毒治療室で患者の看護手伝いをしていた。覚悟はある程度していたとはいえ、禁断症状による苦悶の声が絶えず、時には暴れだす事もある程の地獄に対しては、流石に精神が幾らか消耗する事になった。特に禁断症状の一つである身体能力の低下も合わさって、自力でお手洗いに行けなくなった生徒達に対して、ミレニアム製の排泄物処理装置を装着するのには、特に強い抵抗感があった。

幸い、補習授業部の3人も時折協力してくれたり、ヒフミさんやアズサさんに至っては忙しい中でもどうにか時間を作り、モモフレグッズを差し入れしてくれたりした。そのお陰もあって例のスーツ開発まで心が死なずに済んだのだと思っている。なお、後から聞いた話ではあったが、それぞれペロロとスカルマンが推しであった為に、差し入れグッズがその2つに偏っていたのには、流石に苦笑せざるを得なかった。

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