S.E.に纏わる日常(スーツ試験運用編)

S.E.に纏わる日常(スーツ試験運用編)


※閲覧注意・エ駄死要素あり

特殊装備「S.E.」過去作SS

第1話

第1.5話(前半)

第2話/アビドスサイド視点


あるゲヘナモブの手記(第2話前半と同一人物)

5名全員が全装備を装着し終え、一列に並んだ時は、ある程度想像していたとはいえ目を疑うような光景であった。

とにかく人間性が薄く感じてしまうのだ。勿論表情は自前の狐面で隠している一名を除いて丸見えであり、シルエットとしても身体のラインがでている完全な人型にも関わらず、である。恐らくガスマスクとラバースーツの相互効果による威圧効果と、場の空気がピリピリひりつくレベルで悪化していたのが原因であろう。どう見ても原因は羞恥心です、本当にありがとうございました。

問題なく各機能が動作することは事前テストで確認済みとはいえ、実際第一世代という事もあって部分的に荒い箇所が存在している事は事実であった。それ故に美甘ネルなんかは普段着ているスカジャンを腰に巻いて、なんとか鼠径部付近を隠そうとしている程であり、次の世代で改善すべき点である事は誰の目から見ても明らかであった。前述の通り狐面で顔を隠していた狐坂ワカモを始め、真っ直ぐ顔を向けられない装着者が大半であり、同じ言葉を繰り返す下江コハルやしきりに横乳があったであろう箇所を気にする天雨アコと、慣れるまでに時間がかかる事が目に見える状況であった。


その後、一旦ガスマスクを外した日常状態に戻り、数日間日常生活を送ったりしながらスーツに慣らしていく試験運用期間に入っていった。ただし、こんな未知の感覚に簡単に慣れる事ができるはずもなく、お花を摘みに行くのに行く必要の無いお手洗いに入っていったり、巡回中にもどこかそわそわしていたり、はたまた通りがかりの何も知らない生徒に話しかけられて真相をはぐらかすのに苦戦したりと、後の報告で各々大変な事になっていた事が判明した。むしろどんなに茨の道だったとはいえ、誰もリタイアせずに脱衣日まで耐え抜いてみせた事の方に個人的には脱帽している。私にはこんな苦難を受けて、正気でいられる自信が無いからである。(故に体を張って排泄物処理システムの試験を行ったミレニアムモブさんの事は、内心尊敬している。)


その後念入りな洗浄と1日の休息を経て再度装着し直し、今度は射撃訓練も含めた様々な戦闘訓練と、それらにスーツが与える影響の確認という名目の試験運用が行われた。今度はフル装備で様々な環境下に適応する為のものであり、猛暑から極寒、そして荒天や豪雪等の、様々な過酷な環境を人工的に作り出せる演習場を用意して実施された。勿論こちらも事前試験で不具合を起こさない様に調整しており、実際に動作不良も起こらなかった。

だが、新たな問題が浮上した。というのもマスクとスーツの影響で口も耳も覆われている関係で声が聞こえづらくなってしまい、状況報告や連携の為の指示が通り辛いという、かなり致命的な問題が出てきてしまったのである。その為マスク部分の基本的な構造はそのままに、急遽、短距離無線音声通信(トランシーバー)機能を盛り込む事になった。どうしてこんな初歩的な事を見落としているのかについては、最初期の開発チームの人手が足らず、また、短距離無線を多用した経験のある面子も殆ど居ないか携わる事が出来なかった点や、納期と訓練期間の問題でとりあえず最低限完成させようという空気感が、チーム内に蔓延していたのが大きかったと言える。やはり新しい物を作り形にするのと、既存の物を改良するのとでは、大きな差があったというのを実感させられた。


そしてまた休養と洗浄を挟み、最後に総仕上げとして装着者5名で、排泄物処理装置装着に携わった面子、即ち便利屋68+補習授業部+C&C(トキ不在)+風紀委員会+FOX小隊+αという、15人超の大集団とそれを指揮する先生という、超ハンディキャップマッチを組むことになった。勿論これはツルギにネル、そしてワカモという最重要警戒クラスの生徒が3名も集中して揃う状況の上、仮に先生が指揮できない状況に陥っても、チーム全体で対処できる様にする連携力を育てる目的も存在していたが故であった。

私には当時の状況を詳細に語る能力が無いためざっくりとした説明になってしまうが、最終的には当初の先生の予想を超えた5人の連携力を見せた結果となった。まず前線をツルギとネルが強引にこじ開け、それをアコがサポートしつつコハルが的確に支援攻撃を挟み、そして単独行動をしていたワカモが相手の支援や後退、体制立て直しをゲリラ戦術の様な後方撹乱や奇襲で阻害。あわよくば主力クラスの一撃必殺(ヘイローは壊してません)を狙うという、各々の強みを生かしたものであった。参加していた風紀委員会モブの一人の証言曰く、「いつの間にか自分より後方の味方からの交信が途絶したかと思ったら、そこからまもなく横から狙撃を食らってやられた。凄く怖かった。(要約)」との事だった。この演習は開発チームにも中継されていた為、当時のモニター部屋が凄い盛り上がりで煩くなったのは、ある意味必然と言えよう。


ともかく、一通りの訓練プログラムが終了した時点で評価するなら、かなり満足の行く結果であったと言える。勿論改善点も存在していたものの、次の世代で問題なく実装できそうな感じであった。


私も話の区切りが良くなったので、ここで一旦切ろうと思う。

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