隊長格との遭遇③一護到着
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「ほらだから言わんこっちゃねェ」
地に伏せ地面には血が滴っている石田に向かいそう言い放つ。
限定霊印されているとは言えど仮にも副隊長である阿散井恋次に石田と璃鷹は手も足も出なかった。
「そんじゃトドメいっとくか死ぬ前によ───く覚えとけよ」
勢いをつけるために上に掲げられた刃を石田は見上げた。
もう動けるほどの体力が残っていない石田にはその振り上げられた刀を避けることは不可能だった。
石田に駆け寄りながら璃鷹は叫んだ。
「竜ちゃん…!」
「来ちゃダメだッ…!」
語彙を強めてこちらに足を踏み出していた璃鷹にそう発した。
無理に声を絞り出したせいか石田の腹部からは血がまた溢れ出る。
石田は苦痛に顔を歪ませた。
璃鷹の方向からは石田の表情は見えず、苦虫を噛み潰したように悔しそうな顔をした。昼間とは違い雑音が聞こえない夜中に嗚咽する声が響く。
「こいつの言うとおりそこで大人しくしてた方が身の為だぜ?次はてめーなんだからよ」
「────……」
「阿散井 恋次てめーを殺した男の名だよろしくっ!!」
さてどうするかと考えていた矢先──璃鷹は一護の霊気を感じ取った──。
恋次は振り下ろそうとした刃の地面が割れた。恋次は近くの塀の上に飛び
「…な…⁉︎…!…何だてめーは…⁉︎」
「黒崎一護!テメーを倒す男だ!!よろしく!!」
***
「オラオラオラオラぁ!!どうしたどうしたァ⁉︎何だてめぇ⁉︎そのデケー刀は見かけだけかよ⁉︎あァ⁉︎」
「ペラペラうるせェ奴だな…ッ舌噛むぞテメー!
3人を助けに恋次と戦闘を開始した一護だったが──副隊長である恋次に押され、戦況は凄まじく絶望的と言っていい状況だった。
「だらァッ」
一護は自身の大太刀を恋次に振りかぶる──しかしその刃が恋次に届くことはなく、逆に一護は恋次によって後ろ肩を切られ負傷した。
一護は足から崩れ落ちる。
「………‥」
「終わりだな てめーは死んで能力はルキアへ還る──そしてルキアは尸魂界《ソウルソサイティ》で死ぬんだ」
恋次はルキアがなぜ危険を顧みず、1人で外に出たのかについて語った。
そして一護に愚かなことだと嘲笑した。
「てめーみてぇなニワカ死神じゃオレ達本物にはキズ一つだってつけられやしねえん… ………!」
その言葉が続くことはなかった。
恋次が気づいた時には既に恋次の顎に僅かな傷が出来ており、恋次は押し黙る。
一護は恋次を煽るように話しかけた。
「…おっとワリー…話の途中だったのによ あんまりスキだらけだったんでつい手が出ちまった…ハナシのジャマしたか…?悪ぃな続き聞かせてくれよ 『キズ一つ』が…何だって?」
「…てめぇ……!」
青い斬撃が恋次の体に向かってくる──恋次は体ごと後ろに下がり、その弓を躱した。
「…!」
先程まで自身に負わされた傷で負傷し動けないと思っていた乱入者に恋次は不快そうに顔を歪めた。
その恋次の心情を知ってか知らずかそのまま言葉を続ける。
「私も居るの、お忘れですか?」
「チっ何度も何度もメンドクセぇやつだなァ…!」
油断により一護に傷をつけられた恋次を見かね無言を貫いていた白哉が苦言を呈した。
「…気を抜き過ぎだ 恋次」
「…朽木隊長何がスか⁉︎こんな奴らにはこんくらいで…」
「…その黒崎一護とかいう子供…見た顔だと思ったら…33時間前に隠密機動から映像のみで報告が入っていた──大虚《メノス・グランデ》に太刀傷を負わせ虚圏《ウェコムンド》へ帰らせた… …と…」
「ぶっ!!」
「ぶははははっ!!はははは ははははっ‼︎!」
神妙な顔をしたと思ったら次の瞬間恋次はその馬鹿馬鹿しい話に思わず吹き出してしまった。
「やってらんねーな!最近は隠密機動の質も落ちたもんだ!!こんな奴が大虚に傷を負わせた⁉︎そんな話信じられるワケがねェ!!」
「こんな奴⁉︎」
「…恋次。」
白哉は一護を過小評価する恋次を窘めた。
しかし恋次は続けて一護を貶なし、一護の大振りの大太刀に注目した。
「だって見ろよ隊長こいつの斬魄刀!!デカいばっかでみっともねぇったら無ぇ!!霊気を御しきれてねェのが丸見えだ!!」
「へぇ…では貴方が一護に負けた場合は貴方の言う所の…〝こんな奴〟に倒された死神ということになるのですね」
「あァ?」
これから始まるであろう恋次との再戦に璃鷹は地面に倒れ荒い呼吸を吐いている石田に目を向けた。
本来であれば安全な場所に避難させてから援護に向かった方がいいのだが、
璃鷹は当初から傍観している黒髪の死神の存在が気がかりだった。
──もし離れた場所に避難させても1人自由に動ける死神が居る…移動させたとしても安全とは言い切れない状況ならば目に見える位置に居た方が守りやすい…。
──それに竜ちゃんがこの程度の傷で死ぬわけないし……今は一護の援護に回ろう。
そう考えた結果、石田を放置することに決めた璃鷹は「私も手伝うよ」と一護に璃鷹に参戦を表明する。
一護は少し慌てながら心配そうに声を上げる。
「璃鷹…!…でもおまえそのケガ…だ、大丈夫なのか…?」
「この程度ならケガの内に入らないから大丈夫、私より目の前の敵に集中して」
「いやけど」
「〝一護〟」
聞き慣れたソプラノ声──すんなりと入る少女の声はこの瞬間、やけに一護の耳に焼きついた。
「…私のことは守らなくていいから好きに動いていいよ。ついていくから」
「………私のこと…信じてくれる…?」
差し出された手──黒崎一護は璃鷹の手を迷う事なくしっかりと握るとはっきりした声で告げる。
「むしろ俺がおまえのこと信用してねェとかそれこそねぇだろ…おまえもそうだろ」
疑問符は無い純粋な信頼から来たであろう言葉、一護は続けて璃鷹に言った。
「…まずは一緒にあいつに勝つぞ」
「…そうだね、一緒に勝って朽木さんを助けよう」
その声には璃鷹に対する信頼が滲んでいる。
その茶番に恋次が笑う。
「さっきまで手も足も出なかったやつが良く言うぜ」
「やってみなければ…分からないこともあるでしょう?」