苦手な人

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スレ主

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午後からの休診のため人がいないクロサキ医院の前に学生服を着た1人の少女が立っていた。少女がガラス越しの扉の近くの壁に取り付けられているインターホンを鳴らすと奥から「はーい」と一護の妹である夏梨が此方に向かって歩いて来ると扉の前で止まり施錠してある鍵を開けた。


「すいませんけど木曜は午後から休し‥」


兄である一護に対応して貰おうとも考えたがなぜか家に帰ってきてから神妙な面持ちで自室に籠ったかと思えば変な物音がしたりと独り言が尋常ではなく、また父親である一心や遊子も今は出ていた為夏梨恐らく張り紙を見ずに間違えて受診に来た人だろうと仕方なく対応をしようと声を出した。

しかしその姿を見た時にやはり一護に変わって貰うべきだったと後悔し、夏梨はその来客の姿を見てギョッと固まってしまった。


「こんにちは夏梨ちゃん、最近暑いけど元気だった?」


その人物、兄の学校の友達である鳶栖璃鷹は人好きのする笑を浮かべながら優しくこちらを気遣うようにして言った。

いつもは遊びに来る日は璃鷹に懐いている遊子が此方に寄ってくるのに今日はそれがないからか不思議そうな顔をして「今日は遊子ちゃんは居ないんだね。お外かな」と当たりをつけていた。

夏梨は極めて冷静を装いながらその琥珀色から目を逸らし家に来た要件を尋ねた。



「‥何か用ですか」

「夏梨ちゃんのお兄さんに呼ばれて来たんだけど‥もしかして今出掛けてるかな?」


自身の兄である黒崎一護に呼ばれたと言われ少し息をついてから一護の現在地を答えた。


「一兄なら2階にいますけど、」

「そう?なら良かった」


璃鷹はそれを聞いてから顔を明るくしたがその後申し訳なさそうに眉毛を下げながら夏梨に告げた。


「ごめんね、いつもは電話かメールで呼ぶんだけど今日は携帯忘れちゃって、申し訳ないんだけど呼んできて欲しいな」

「…呼んでくるので中に入って待ってて下さい」


それを聞いた夏梨は呼ぶだけならそれほど時間もかからないしと思いながら扉を全開にして璃鷹を招き入れた。

夏梨はそのままリビングを抜けて廊下に出て15と書かれたプレートの部屋の前に行くとガチャリとドアを開けた。


「一兄入るよ」

「うぉ!!な、なんだよ夏梨‥ノックくらいしろよ」


慌てた様子で押し入れに何かを突っ込んでいる様子だったが気にせずに「何思春期みたいなこと言ってるのさ」と切り返す。


「いや、実際そうだろ」


そう言い返した一護に夏梨が「…鳶栖さん下来てるよ」と言うとそれを聞いた一護はビクリと体を震わせていた。


「そ、そうか」


緊張を誤魔化そうとする一護を見て何かを感じたのか夏梨は「一応中入れたから後よろしく」と一護に答えた。


「じゃあ、あたしは外でサッカーしてくるから2人でゆっくりしてなよ」

「‥お前なんか勘違いしてねぇか?」

「別にぃ、まぁ一応襲われないように気をつけなね」


それを聞いた夏梨はとぼけたように一護に言ったのを聞いた一護がジト目で夏梨を見た。


「やっぱりお前勘違いしてるだろ」


夏梨と2人で下に降りるといつもの制服姿の璃鷹の姿が見えて医院に貼ってあるチラシのような物を暇つぶしに見ていたのだろう。

足音が近づくいて行くと振り向いて一護達へ駆け寄ってきた。


「あ、一護やっと来た」


「悪りぃ」と答えると一護は璃鷹のいつもとは違う呼び出し方に少し疑問を覚えて問いを投げかけた。


「お前携帯どうしたんだよ」

「あはは、今日はちょっと忘れちゃってさぁ‥ほらさっき私何も持って無かったでしょ?だから夏梨ちゃんに一護呼んでもらったんだ」


「ね?」と言って夏梨の方に同意を求めた後璃鷹は夏梨に目線を合わせるて屈んでにっこりと微笑みながらお礼を言った。


「ありがとうね夏梨ちゃん」

「‥いえ別に」


夏梨は目を合わせることなくそれだけを言って先程施錠を外した扉を開けて手を振りながら帽子を頭に被せた。


「じゃああたしもう行くね。ユズにも帰ってきたら外でてるって言っといて」



それだけ言って出て行った夏梨に心配そうに璃鷹が一護に言った。


「もしかして出かけようとしてたのに私が引き止めちゃったかな」

「そんなことねえよ」


そんな璃鷹に一護は他の友達を連れてきた時とは違う夏梨の態度に少し気まずそうに言った。


「悪りいな何かアイツ感じ悪くて」

「気にしないで、あのくらいの年頃の子はそういうものだよ」


一護の部屋へ向かう途中璃鷹は物音を気にしながら一護に尋ねた。


「──今朽木さんは2階?」


それを聞いた一護は足は止めずにいつもの雑談の様に「あぁ上でそわそわしてるぜ」と璃鷹に答えた。


「ふーん、それって一護も?」

「な、な訳ねぇだろ」


それを聞いた璃鷹は一護の顔を覗き込みながら言うと一護は少し体を震わせた。顔を背けて誤魔化す一護に璃鷹目を細めながら「一護って本当に分かりやすいよね」と笑った。

そうして短い会話を切り上げて一護の部屋の扉を開けた。


「おーいルキア璃鷹ぎ来た…ぞ、」


ルキアの名前を呼びながら扉を開けると一護は目の前のルキアを見て絶句していた。


「あら鳶栖さんごきげんよう」


そこには──行儀よく正座をして上品そうに此方に手を振っているいつも学校で見る朽木ルキアだった。


「お前、河川敷の方じゃ普通に話してたのに今更意味ねぇだろ」


一護はその姿に呆れながらツッコミを入れるとルキアは一護の口を抑えて「あら、少し口に塵がついてるわ黒崎くん」と言いながら息を止めさせていた。

それを見ていた璃鷹は芝居がかかった漫才の様な2人のやり取りをじっと見ているだけだったが〝もうバレてるのだからやっても無駄だろうに〟と思いつつルキアに言った。


「大丈夫だよ朽木さんもう知ってるし演技する必要ないよ」

「む、」


それを聞いたルキアは少し微妙そうな顔をすると「う、うむ勿論分かっていたぞ。今のはあれだ、お前達を緊張させない為にだないつもの学校での私を…」と手を組見ながら答えて一護が「だから意味ねぇって言ったのによ」と小さく呟いていた。



「それで一護から話してくれるよね?」


璃鷹は一護にこれまでの経緯と説明を要求した。

ある程度は観察しているので知ってるがその答え合わせのために、そして先程の河川敷で約束通りの一護から話させる事を守らせるためにだ。


「あ、ぁ…実は」


一護はそのままこれまでの経緯を璃鷹に話し始めた。

あの日、自身が遊んでいた間にその様な面白いことが起こっていたとは露知らず少し惜しい事をしたなと思いながら一護の話を聞いていた。

全部とは行かずとも少なくとも自身が観察していた事も語っているので恐らく虚偽はないだろうと璃鷹は思った。


(やはり朽木さんが死神…命の危機に瀕し一護に力の譲渡を行ったのか──)


〝その様な力の譲渡方法もあるのだな〟と感心していると漸く話を終えた様で一護が璃鷹の言葉を待っていることが分かった。


「──うん事情は大体分かった」


「大変だったんだね一護」


「ちっとも気づかなかったなぁ」と笑いながら少し気まずそうにしている璃鷹のその反応にホッとしたのか座っていた足の向きを変えると真剣な面持ちで答えた。


「次はお前も話してくれるんだよな?」

「それは全然良いけど」


「約束だしね」と答えたもののここからは賭けだ。制服の内側に仕込んである鉄串の位置を改めて確認すると璃鷹はルキアの居る方向へまっすぐ向いてルキアの目を見た。


「朽木さんは〝滅却師〟って知ってる?」


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