もしもの為の
スレ主目次
璃鷹は一護達と別れた後、そのままズンズンと道を突き進み高校に入ってから慣れ親しんだ道路を通る。
すると真新しいアパートが見えてくる。璃鷹はそのまたそのアパートの2階へ上がって行き施錠された玄関の扉を開けると誰も居ない部屋に向かって一言「ただいま」と声を出した。
そして靴を脱いで奥の自身が就寝している自室へと歩みを進めた。
「これくらいで十分かな」
そして璃鷹は殺風景な部屋の中にポツンと置かれている木箱の中に隠された鉄串を数十本制服の内側に仕込んでそれが違和感なく作用しているかを確かめるとスカートを翻した。
準備が整いいざ一護の家に行こうとしたが先程虚を滅却した時に付着したであろう土埃が気になり璃鷹は顔を洗いに洗面台に向かった。
蛇口を捻り水を洗面器に溜めるとその中に手を突っ込んで顔を水に浸す。
それに伴い前髪や横髪が濡れてしまい気持ち悪かったがピンで止めなかった私が悪いと気にせずに顔を洗った。
顔を洗い終わると璃鷹は水に濡れた鏡に映る自分を見ながら考えた。
────もし仮に朽木ルキアが自身をソウルソサイティへ報告する素振りが少しでもあれば〟
そうなればもう自身の自由はない。監視の目は恐らく此方が何を言おうが辞めてはくれないだろう。
鳶栖璃鷹は石田雨竜と同じまだソウルソサイティ側に認知されて居ない滅却師、例え多少目が届いて居ない時間があったとしてもその間すら監視を気にしなければならず、そうして死ぬまで死神側に縛られるのは面倒だと璃鷹はため息をつく。
ならばそうなる前に朽木ルキアを殺して、そしてもしルキアが一護に何らかのソウルソサイティへの連絡手段を渡して居た場合に備えて今のターゲットである黒崎一護も殺害すればより確実性を得られ、自身は今まで通り趣味に没頭できる。
勘づかれては面倒だしそれが良い思ったのだがふと璃鷹は少し考え込んだ。
もし自身が一護を生かしてルキアのみを殺害した場合、ルキアの黒檀の様な黒髪を自身の血で真っ赤に染め上げ、惨たらしく身体中穴だらけになった肉塊を見た後の一護の顔を想像した。
そしてそれを一護に明かした時の表情、感情、なんと甘美な空想だろうか。
その絶叫、恐怖や絶望で外面を脱ぎ捨て内側の純粋で、そして〝人間〟の醜いハラワタを暴くその瞬間こそが最も美しく美味に仕上がるのだ。
「…なら一護は殺さなくていいか」
───あの生真面目な性格では恐らくある程度時間をかけて決めるだろう。ならば明日か、早ければ今日の夜に、今日のルキアの反応を見てから決めようと濡れた顔をタオルで拭くと約束通り璃鷹は一護の家へ向かおうとしたがパッと自身の格好を見た。
「一応予備の制服で行こうかな」
「土埃付いたまま人の家に上がるのは良くないし」そう言ってまた自室へと戻ると璃鷹は上機嫌のままクローゼットから予備の制服に手を掛けた。