ウタとガープの語らいinW7

ウタとガープの語らいinW7



※本SSは下記2作品の出来事を前提としています。

ロリウタvsガープ

ガープの帰路(ロリウタvsガープのおまけ)


ロビンを取り返した激闘の末に滞在していたウォーターセブン。

そこに突然やってきたのはルフィのお爺さんでもある海軍中将ガープさんだった。

 

ガープさんが「“赤髪”に毒されおってくだらん!」と言った上に口答えしたルフィを殴ったり、それに反論しようとした私にデコピンを食らわせたり、ルフィのお父さんのことや私がシャンクスの娘なことを皆が知ったり、コビー君とヘ…ヘロ……ヘルメッポさんと再会したりと、まあ色々あった。

 

そのガープさんは用事は終わったとばかりに帰ろうとしているところだ。

そもそも目的はコビー君とヘルメッポさんの付き添いだったようだ。

それに海軍には上手く言い訳しておいてくれるらしく、これ以上の追手の心配も無くなって一安心。

 

「わし帰る」

「うんじゃあな」

「軽すぎるわァー!!」

「ぶへー!!!」

 

ルフィの軽口にまたガープさんの鉄拳が飛んだ。

「惜しめバカ者!」と理不尽な怒りをぶつけるガープさんに文句を言うルフィ、その姿に隣にいたナミが「あの身勝手さ、すごく血の繋がりを感じる」と呟いた。

私もそう思う。

 

ルフィへの理不尽な怒りが静まったのか、ガープさんはそのまま海兵達と一緒に帰っていく。

その姿を見てふとガープさんに会ったら話そうとしてたことを思い出した。

色々ありすぎてすっかり忘れてしまっていたこと。

私は声を上げながらガープさんの背中を追いかけた。

 

「待ってガープさーん!ちょっと話したい事があるのー!」

「ん?どうしたんじゃ」

「やめろウタ!爺ちゃんにぶん殴られるぞ!!」

 

ルフィの心底怯えた叫びにガープさんが「そんなことせんわい!」と言い返す。

なんだかんだ私には甘いらしい。比較的。

 

ガープさんの背中に追いつくと、そのガープさんは部下達に「先に行っとれ」と指示を出す。

個人的な話なのは察してくれたらしい。

そのまま二人並んで歩き始めて、ガープさんが口を開いた。

 

「で、どうしたんじゃ?」

「いや、あの…これだけは伝えたくて」

「?」

「その…ガープさんと初めて会った時、ウタワールドで戦ったでしょ?」

「ああ、そんなこともあったのう」

「あの時、ちゃんと叱ってくれてありがとう」

 

ガープさんの目をしっかりと見て感謝を伝える。

 

私が9歳の時、ガープさんに腕っぷしで負けたのが悔しくてウタワールドに引きずり込んで戦おうとした。

あの時は今と違って自分の力で何ができるかなんてろくに分かっておらず、相手を直接ウタウタの力で傷つけるような戦い方をしようとしていた。

結局私の体力不足で何事もなかったが、その時ガープさんに言われたのだ。

『皆が素晴らしいと思ってくれとるその歌を誰かを傷つけるためには使わんで欲しい』と

 

「色んなところをルフィ達と冒険して、色んな海賊を見てきたんだ。中には人を傷つけて笑ってる海賊もたくさんいて…あの時、ウタワールドの使い方をちゃんと叱ってもらえなくてあの使い方を続けてたら、私もそういう楽しそうに人を傷つける酷い海賊になってたかもなーって」

「それはないじゃろう。ワシが怒らんでも、自分で気付くか、ルフィ達が止めたじゃろて」

「でも、ガープさんが止めてくれたのは事実だから、お礼言いたかったんだ。それにあれがあったから色々使い方を考えるようになったんだから!」

 

実際、あの時のことが無くてもルフィ達か誰かが止めてくれたかもしれない。

それでも、実際に止めてくれたのはガープさんなのだ。その感謝は伝えたかった。

そして、冒険の末、私がどれだけ成長したかも自慢したかった。

 

「例えばね、ウタワールドの中だと相手の攻撃防いで拘束するだけにして、大怪我負わないようにしてるんだ!それに現実の世界でも頑張れるようにたくさん鍛えたし、ウタウタの力をこっちの攻撃にちょっとだけ乗せれるようにもなったの!あとはウタウタの力で眠らせた海賊を操ったり…」

 

言いながらふと気になって言葉が止まる。

 

「最後の2つって…もしかして歌を武器にしてることになるのかな…?」

 

今さらながら、グレーゾーンな気がする。

いや、操ってると言っても普通に戦わせてるだけだし、攻撃に乗せるのも悪魔の実を使って戦うなんて能力者なら誰でもやってる。

そもそも海賊の戦いに卑怯もないし…

そう考えているとガープさんが一言聞いてきた

 

「ウタはルフィや赤髪に言えないような使い方をしてると思っておるのか?」

「そんなわけないじゃん!」

 

私は即答する。

二人に言えないような恥ずかしいと思う使い方はしていない。それは断言できた。

 

「じゃあ大丈夫じゃろう。自分の力の危うさが分かっている今のお前さんなら間違うことはないわい!」

 

ガープさんはそう言って笑っていた。

ただその言い方とこれまでのことでふと気になったことがあった。

せっかくだから聞いてみよう。

 

「ねえ、やっぱりウタウタの実って悪魔の実の中でも結構強かったり危ないものなの?」

「なんじゃ急に」

「色々な海賊に会ったって言ったでしょ?能力者も結構いて…もしかしてウタウタの実って凄い方なのかなーって」

 

バロック・ワークスやCP9のような組織、その他にもバギーやフォクシーの海賊、海軍、色々な能力者と出会ってきた。

その中でも超人系(パラミシア)の人達の能力と比べると、ウタウタの歌を僅かでも聞かせるだけで精神を自分の世界に引きずり込んで体も乗っ取るなんて能力、なかなかに強い方なんじゃないだろうか。

 

「CP9の奴らも私のことは殺さず捕まえようとしてたし、強いから味方にしたかったのかなって」

 

そう言った瞬間、驚いた顔でガープさんは私の方を見た。

 

「それは…本当か!?」

「え…うん。私には捕獲命令が出てるって言ってたけど?」

 

一瞬ガープさんは険しい顔で何かを考えていたが、すぐにいつもの明るい雰囲気に戻った。

 

「なるほど……まあ今までも散々暴れてたんじゃ。いい加減海軍や政府側もお前さんがウタウタの実の能力者だと気付いたんじゃろうな。

確かにウタウタの実は強力な実じゃ。今回しでかしたことを考えれば一味全員が賞金首になってもおかしくないが…ウタにはなかなかの金額が付くかもしれん。」

「え!?私も賞金首!?ついに!?」

「喜ぶんじゃないわい…」

 

テンションが上がってる私にガープさんが呆れているが、やはり海賊としては賞金首になるのは嬉しい。

海軍が自分の実力を認めたということなんだから。

どれぐらいの金額になるんだろう?さすがにルフィは超えないと思うが…ゾロやサンジと同じぐらいだといいいな。

そう考えていると呆れていたガープさんが真剣な口調で口を開いた。

 

「ウタ」

「ん?なに?」

「ワシはお前さんは絶対にその歌を誰かを傷つけ支配するためには使わんと信頼しておる」

「きゅ、急に改まってどうしたの?」

「これからも海賊を続けるなら危険なこともあるじゃろう。どうしようもなく誰かを恨むこともあるかもしれん。何かの拍子にその悪魔の実の力がより強い力を持つこともあるかもしれん。例えそういうことがあっても、絶対にその力を誰かを傷つけ苦しめるためには使わんとワシは信じとる。きっとルフィ達もそうじゃ。それだけは忘れんでほしい」

 

真剣な表情のままでガープさんはそう言った。

悪魔の実の力が強く…と言われて思い出すのは巨大化したチョッパー、まだ詳しくは本人に聞いていないが新しい能力の使い方を見つけたらしいルフィ、そして私自身の攻撃にウタウタの力を上乗せする使い方だったりだ。

きっとまた新しい使い方を思いついて、それを悪用しないかと心配しているのだろう。

なんでガープさんが急にそんなことを言い出したのかは分からない。けど私を信じてくれてることだけは分かった。

その言葉に私は笑顔で答える。

 

「大丈夫だよ!私の歌は世界を平和にする歌だからね!ガープさんがあの時言ってくれたことも絶対忘れないから!」

「そうかそうか…海兵になってほしいという頼みの方も忘れないで欲しかったがのう」

「それは駄目だよ、だって私は——赤髪海賊団の音楽家だから!」

「ぶはは!そうじゃったのう!」

 

気が付くと港に近づいてた。

さすがにこれ以上談笑しながら海賊が海軍の船に近づくわけにもいかない。

歌も久しぶりに聞かせたかったが、今回は諦めよう。

私は歩みを止め、ガープさんに手を振る。

 

「さすがにこれ以上はね…バイバイ、ガープさん!」

「おう、元気でおるんじゃぞー!」

 

海兵が海賊に言う言葉とは思えないことを言って、ガープさんは船へ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

『だって私は——赤髪海賊団の音楽家だから!』

 

詰まってしまった。

今までだったらすんなり言えたことのはずなのに。

一人になった途端、先ほどガープさんに言った言葉を思い出していた。

デービーバックファイトには“麦わらの一味じゃない”ため参加できなかった。

ここウォーターセブンでウソップが一味を抜けると言い出した時には自分の立場故に口を出していいか悩んでしまった。

それでも、ロビンまで離れようとした時に強く思った。

『立場なんて関係なく皆と一緒にいたい』と。

だからこそ、自分が麦わらの一味じゃなくて赤髪海賊団だと名乗ろうとして、一瞬悩んでしまった。

 

私が赤髪海賊団なのは変わらない。

ルフィもそのつもりだし、いつかシャンクス達と出会った時、私が赤髪海賊団に帰るものと思ってるんだろう。

これまでも決まっていたことなのに、今実感するとふと寂しさを感じて

 

——————————————ᚷᚨᚺ


「ッ…うぅ…」

 

突然頭の中にノイズのように何かが走り、刺すような頭痛と、何かに引きずり込まれそうな感覚が襲ってきた。

思わず右手で頭を押さえるが、それらの感覚はすぐに消えていった。

 

「なんだったんだろ…今の…」

 

何かに引きずり込まれそうな感覚、CP9の二人と戦った時にも感じたものだった。

あの時何が起こったのかはよく分からないし、今その感覚が突然襲ってきた理由も分からない。

 

「疲れてるのかな…」

 

ウォーターセブンに帰ってきてから十分に休んだはずなのに、もし酷くなったらチョッパーに診てもらおう。

そう考えながら、皆の待つ今の宿、アイスバーグさんが用意してくれた特別海賊ルームへと帰っていった。

 

Report Page