ガープの帰路(ロリウタvsガープのおまけ)
夜、ガープはフーシャ村の港へ、停泊している海軍の船へ向かっていた。
歩きながら久しぶりに見た孫の姿、そしてその友達を思い出す。
やはり同じ年ごろの友達がいると随分違うのだろう、いつもより元気そうだった。
少々問題も起こったが、楽しい里帰りだった。
…のだが
「はぁ~…どうするかのう…」
ガープ本人はため息を吐きながら悩んでいた。
今回フーシャ村へ来た目的はルフィの顔を見に来ただけでない、赤髪海賊団の動向について調べるためでもある。
赤髪海賊団はエレジアを滅ぼしたのちにこのフーシャ村に訪れ、受け入れられている。
その件について村民や村長に話を聞きに来たのだ。
村長によると、赤髪海賊団からは別の海賊によりエレジアが滅んだこと、要はウタがした説明と同じ説明をされたらしい。
そして赤髪海賊団全員が頭を下げ、ウタをこの村に住まわせてほしいと頼んだそうだ。
村長は元々ウタが村に受け入れられていたこと、前々から海賊船にあんな小さな子供を乗せ続けるのは反対だったこと、そしてエレジアでのニュース内容があまりに赤髪海賊団らしくないことから赤髪達の言葉を信じ、村への滞在とウタが住むことを認めたらしい。
そう、“あまりに赤髪海賊団らしくない”のだ。
赤髪海賊団は元々一般市民からの略奪や侵攻をほとんどしない海賊団だったのだ。
それが突然エレジアを滅ぼし、国王以外の人間を皆殺しにし、財宝を奪って行った。
近年不穏な動きをしていたがこの件は明らかに様子がおかしい。まあ、ルフィを海軍に勧誘する口実には都合が良いので利用したが。
海軍内でも「ついに本性を現したか」「何か裏があるのではないか」と意見が割れている。
そしてゴードン元国王の証言も妙だ。
ウタやシャンクス達がしていた『別の凶悪な海賊』の話を聴取でしたのだ。
近海にいた海軍は赤髪以外の海賊を確認しておらず、船の残骸なども全く発見されていない。
『別の凶悪な海賊』など存在しないはずなのだ。つまり、何か口裏を合わせて隠しているとしか思えない。
その調査結果を元に赤髪達が犯人と断定され、新聞でもそう伝えられた。
しかし、エレジアが滅んだ要因としてもう一つ候補がいる。
エレジアに伝わる魔王“トットムジカ”だ。
しかし、その魔王が現れたとは考え辛かった。
赤髪海賊団側に魔王を呼ぶ手段あるとは思えない。そしてエレジア側がわざわざ魔王を呼び覚ます理由もない。自衛のため、赤髪達とぶつけるため呼び出したという説も、ゴードン元国王がシャンクス達を庇うような口裏合わせをしているため考えにくい。
そのためガープ自身、今回の件に“トットムジカ”は関係ないと考えていた。
今日までは。
赤髪海賊団の音楽家、シャンクスの娘、ウタ。
ウタウタの実の能力者である彼女がエレジアにいた可能性が高い。
そうなると話が変わる。
これまでの情報をまとめ、ガープは一つの推測を立てていた。
“ウタがトットムジカを呼び起こしエレジアを滅ぼした”
もちろん彼女が悪意を持って呼び起こしたとは思っていない。
今日関わっただけでも、そのような悪意を持った子には思えなかった。
多少能力の使い方を誤りはしたが、泣いていた様子からしてもしエレジアを意思を持って滅ぼしていたなら出会った時のような元気さを残していると思えない、そういう印象の子だった。
おそらく、事故。
何かしらの不測の事態が起き、ウタの力により“トットムジカ”が顕現し、エレジアを襲った。
そして彼女にはその記憶は残っていないのだろう。
ゴードン元国王と赤髪は口裏を合わせ、彼女から真実を隠した。
彼女の心を守るために。
そしてウタ本人はエレジア及びトットムジカから遠く離れたこのフーシャ村へ避難させ、穏やかな生活をさせている。
推測が多いがそう考えると辻褄は合う。
「どう報告するかのう…」
再び独り言。
もしウタウタの実の能力者、つまりトットムジカを呼び起こせる者がいると海軍の上層部や世界政府が知ったらどうなるか。
そんな危険な力は排除すべきだと言う者もいるだろう。
その力を手中に収め、政府のために使うべきと言う者もいるだろう。
どちらであっても、ウタにとっては不幸になるとしか思えない。
出来る限り知られない方が良い。
そして自分の予想が当たっていた場合、ウタ自身がエレジアのことを知ることは絶対に避けなければいけない。
今日、人を傷つけうる自分の歌に泣いていた子供が、既に一国を滅ぼしていると知って、心が耐えられるわけがないのだ。
知るとしても、もっと心が成長してから…少なくとも大人になるまでは待つべきだ。
とりあえずセンゴク個人には報告はしておくべき。
万が一のトットムジカの件を考慮しフーシャ村へ戻る頻度を増やすか?
部下に定期巡回させるか?
様々な対応を考えながらガープは船へ向かった。