戦いを終えて(後)
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……足音が聞こえなくなった頃、草原にあったのは二つの泣き声と二つの鳴き声。
『……クソ。くそ、くっそぉ……ッ』
『……ごめん、なさい……ごめんね……』
男はオンバーンの前足に手を添え、何度ももう片方の手で地を殴りつけながら。
女はチルタリスの首に手を回して、さめざめと涙を流して繰り返し謝りながら。
オンバーンとチルタリスはトレーナーを慰めるように、そっと寄り添いながら。
それぞれに違う反応をしながらも、彼らの胸中にあったのは、脅威が去った安堵。
それを覚えた自身への悔しさと、自身を信じて戦ってくれた相棒への申し訳なさ。
そして何よりも、『もっと強くなりたい』という、眩しいほど純粋な願いだった。
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「お疲れ様、二人とも。ゆっくり休んでね」
傍を歩くガチゴラスとクリムガンへ、マドカはそれぞれのボールを差し出す。
クリムガンは素直に前足で中心のスイッチを押し、開いたボールの中へ入っていった。
一方のガチゴラスはと言えば、
「……何、疲れてないって? なにおう、意地張っちゃってさ」
自分はあれしきで疲れたりなどしていない、などと言いたげにジトッとマドカの方を見ていた。
「"ドラゴンテール"で攻撃を掻き消して、
最後は"もろはのずつき"を二回。疲れは無いかもだけど」
「……やっぱり、多少なりと疲れてるでしょキミ。
普段ならワタシの指摘、吼えて否定するもんね」
そう言ってニヤリと口角を上げるマドカを、よりジトッとした目で見つめて。
そのまま暫く無言のまま進み、やがて観念したようにボールのスイッチを鼻先で押した。
「うん、それで良いのさ……本当、お疲れ様」
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