交わされる視線、そして
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三つの人影、六つの足音が、夜の町から町外れの草原へと進んでいく。
「夜風に当たって考えてみると、ワタシは今の里の状況を知らないね。それじゃ判断が出来かねる」
「遠くからでもいいから、里を見てから返事したい」。その発言に頷いた二人と共に、マドカは歩いていた。
『……ふむ。ここで良いだろう、少し遠いが……あの灯りがそうだ』
「ああ、アレがそうなんだね……なるほど、概ねワタシの想像通りだったよ」
『……では、そろそろ答えを聞かせて頂こうかしら』
「……そうだね。ワタシの答えは……ふふふ」
「——聞かなくても、分かるよね?」
呟かれたその言葉は、夜風に紛れてしまいそうな大きさで。
しかしその響きは、本能が警鐘を鳴らすような冷たさを帯びて、確かに二人組の耳に届いた。
『……ッ!』『くっ……』
咄嗟に、彼らの身体が動く。
マドカを正面に見ながら、素早く距離をとって……顔を上げた彼らの目に、微笑みが映った。
「あれ、どうかした? そんな怖い物を見たような顔をして」
『……あなた、一体……!』
「ふふふ。ごめんね、怖がらせちゃったかな」
『……交渉は、決裂か』
「そうなるね。どうする?」
『……は、決まっているさ』
余裕を崩さないマドカに対し、男と女はボールを構える。
「力尽くかい? いいね、野性的で」
『その余裕、すぐに消し飛ばしてやる……! 行け、オンバーン!』
『行きなさい、チルタリス! 二対一よ、負けないわ……!』
構えたボールを前方に投げ、男はオンバーンを、女はチルタリスを繰り出す。
目の前の人物を敵と定めた二匹が鋭い眼光を送るなか、当のマドカはボールに手を当てて何事か呟いていた。
「……うん。そっか、そうだね……それじゃ、お願いするよ」
「宜しくね。ガチゴラス、クリムガン」
そして静かに、二つのボールを放る。コロコロと転がったボールが開くと、中から二匹のドラゴンが現れた。
古き大地を統べた竜、ガチゴラス。暗き地底を駆ける竜、クリムガン。
星明かりだけが照らす草原で、空を舞う竜たちと地に踊る竜たちの戦いが、始まろうとしていた。
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