響き渡る往生の唄:2

響き渡る往生の唄:2

過激派がミレニアム自治区を掌握

【響き渡る往生の唄:1】

【響き渡る往生の唄:3】

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チヒロ、ヒマリ、エイミ、コタマ、マキが密談している特別校舎の空き部屋

ジャミングの発生源を探すために部屋を出ようと扉を開けたエイミだが、その前にはノアが待ち受けていた…


ノア「皆さん、ここは特別授業等で使う校舎ですよ?勝手な占領は困ります」

ニコニコしながら一応真っ当な事を言うノアに、エイミはマルチタクティカルを至近距離で向ける

エイミ「ノア先輩、どうやってこの部屋を突き止めたの?答え次第では悪いけど制圧する」

後ろにいるヒマリやチヒロ達も警戒心を含んだ目でノアと対峙している

「私の事をそんな目で見てくるだなんて悲しいですね…皆さん私が記憶保持者だと知っているはずなのに…」

ヒマリ「それは悪かったですね。しかし今の貴女を警戒するには十分すぎます」

「早く答えて。私自身はノア先輩を撃ちたくない。でも部長達が撃てと言ったら躊躇しないからね」

忠告するように告げるエイミに対しノアの返答は…


「簡単ですよ♪ジャミングの影響を受けた部屋を特定しただけです♪」

5人がそれを聞いたのと同時に、突然廊下の端から缶のようなモノが飛んでくる

「っ!?」

エイミは即座にその缶を撃ち抜くが…


(バシューッ!)

マキ「うわっ!?なんか煙が!」

「エイミ!扉を閉めなさい!」

「くっ…!」

「おっと、追加もどうぞ♪」

急いで閉めるエイミだが、いつの間にかガスマスクを着けていたノアは同じ缶を部屋の中に複数個投げ入れた

あっという間に煙が充満してしまい視界が奪われてしまう5人

しかも、この煙はただの煙ではなかった

コタマ「う…身体が、痺れ…」

「まさかこれ、麻痺ガス…!?」

その場で崩れ落ち、床に倒れ伏す5人

「ノア…貴女って人は…!ぁ……」

ヒマリはノアを非難しようとするもすぐに意識を失ってしまう


全員の身体が動かなくなり、意識が飛ぶまでに数分もかからなかった──



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ノア「無事全員確保できましたねウタハ部長」

同じガスマスクを着けたウタハが近づく

ウタハ「よく効いたみたいだね。ノアが保管庫から持ち出した特殊麻痺性ガスの効果が覿面で何よりだ」

「ではAMAS-NEOに運ばせますね」

「そうしようか。この建物の地下施設に監禁すれば、外部に助けを求めるなんて真似は間違っても出来ないだろう」

「では服と銃も取り上げましょう。念の為、こちらで用意した制服を着せておきます」

「あの地下施設は既に改造済みだ。栄養失調で死ぬような事は無いだろう」

「流石はエンジニア部、抜かりないですね?」

「穏健勢力だとしても殺すのは忍びないからね。コトリも同じようにしている」

「あら、コトリさんも監禁中ですか?」

「彼女は同志になる事を拒んだからね。特別な椅子に拘束して強制的に作業従事させているんだ。こうすれば口より手を動かすようになるかもしれないしね」

「ふふっ、そうなると私も助かります」


そう楽しそうに会話した2人は、ウタハ達が製造したAMASの新型、“AMAS-NEO”に5人を地下施設へ連れて行かせる

連行された5人は身包み剥がされ、ただの制服のみを着用させられた状態で牢獄と言える地下施設に監禁されてしまった…

ヒマリは椅子に座りながら頭を抱え

チヒロは監禁されたメンバーを気遣い

コタマは自分達の声しか聞こえない牢獄に絶望し

マキは「私達どうなるの…!?」と泣きながらチヒロに縋り付き

エイミは空調がロクに無い牢獄の暑さで体力が削れていく


そして、監禁される生徒は彼女達だけに留まらずこの先も増えていく

その生徒達に共通するのは、ミレニアムの過激派に疑問を呈したり怪しんだ者であった

ミレニアムの生徒会長までもが仲間入りするのは近い話で…



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ノア「さて、監視体制は整いましたし、あとは最後の憂いを取り除くだけです」

ウタハ「リオ会長の事だね?」

「はい。あの方が異変に気づいてこちらに来られると非常に拙いです」

「確かに会長は最も懸念すべき因子だ。しかし彼女は行方不明…さてどうすべきかな」

ヒビキ「…ねえノア先輩、ヒマリ先輩が持ってた物の中に、リオ会長のAMASと通信できる装置とか無かった?」

「ええ確かにありましたが…生憎ヒマリ部長しかパスワードを知らないみたいでして…恐らく尋ねたとしても答えて頂けないでしょう。」

「うーんそっか。通信を繋げられるなら誘き出せるかもしれないと思ったけど」

「…待ってください、解除するだけなら可能です!」

「え?」

「うちには“コード解読の天才”がいますので♪」


ノアはアナログ形式の反省室に向かった



「…というわけで、コユキちゃん?パスワードの解除をお願いします♪」

コユキ「の、ノア先輩…いくらなんでもそのお願いは…ていうか、これ以上行くと取り返しつかなくなるんじゃ…」

「いいから早く解除してください」

「っ…!ノア先輩!貴女本当にイカれたんですか!?ウタハ先輩とヒビキさんもこんなのおかしいって分かってるはずでしょ!目を覚ましてくださいよっ!」

コユキは恐怖を押し殺して訴える


「…コユキちゃん、これ以上煩わせないで下さい」

ノアは威圧を込めた目で見下ろしながら桃色の髪を引っ掴み、携行している拳銃[書記の決裁]の銃口を彼女の口に捩じ込んだ

「ぐむ゛ぅ゛ぅっ!?」

「痛い思いをしたくはありませんよね?このまま撃たれたらとても痛いですよ?まだ躊躇うと言うのなら全弾をこの口の中に撃ち込みます」

「ぉ゛ぐ…!?ぅ゛…っ…」

コユキは絶望と恐怖に満ちた目から涙を流しながらこくこくと頷いた

それを見たノアは威圧の目からにこっと笑顔になり

「ではお願いしますね♪」

口に銃を咥えさせながら解除させた



「お疲れ様でした、ではこれからも反省を絶やさずに過ごして下さいね?」

(ガタガタガタガタガタガタ…)

ノアは、恐怖のあまり震えて声が出ないコユキに対して背筋が凍るような笑顔を見せながら反省室を出た




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ノア「はい、これでいつでも通信可能になりました♪コユキちゃんはやっぱり凄い子ですね♪」

ウタハ「よし、ノアが今行っている間にヒビキと計画を練っていたんだが、砂糖についての情報を共有したいと騙すのはどうかな?」

「なるほど…ですがヒマリ先輩ではなく私達がこの装置を使ってしまうと会長に怪しまれるのでは?」

ヒビキ「その時はヒマリ先輩が砂糖中毒者に襲われたって事にして、無事だったノア先輩と私達に託したって事にする」

「リオ会長が来てくれるかどうか次第ではありますが…ユウカちゃん達に聞いた限り会長は突き詰めた合理主義が揺らいでいるそうなので、有効だと思います。試してみる価値はあるでしょう」

「ではセミナー室から逃げられないよう封鎖する準備をしておこうか」

「分かった。じゃあ会長がこっち来たら絶対逃げられないようにアナログな方法で閉じ込めよう」



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──3人はたった数日で準備を整えた

ノア「こんなに早く終わるだなんて思いませんでした」

ウタハ「私達は“ロマンや面白さなど重視しない効率的で完璧”な物を作る事にしたからね。これから効率的かつ完璧にこなしてみせるさ」

「ユウカちゃんが言いそうな事ですね?頼りにしてます♪」

ヒビキ「会長の返事は?」

「砂糖については個人でもう色々と調べていたそうなので、資料を此方に持って来ると言っていました。会長自身が此方に来るとも言ってくれましたし、これで閉じ込められれば上手くいくはずです」

「よし、では会長をお迎えする準備だ」



数時間後

ミレニアム自治区内にある監視カメラに調月リオの姿が映った

「ウタハ先輩、会長が来たよ」

「本当に本人が来てくれた。ここまでは計画通りだ…ノア、ヒビキ、準備はいいかい?」

「ええ」

「うん」

「さあ、アブズ作戦第一段階最後の一手を決めよう」

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リオ「ノア!大丈夫!?」

ノア「会長!来てくれて助かりました…私とウタハ部長、ヒビキさんは無事ですが…ユウカちゃんやヒマリ部長達は…」

「そ、そう…ごめんなさい、砂糖の研究に没頭してミレニアムへの注意が疎かになってしまったわ…私の落ち度ね…」

ウタハ「いいや、寧ろ会長は自力で砂糖の謎を調べてくれた。私達にとって大変助かる。資料はそれかな?」

「ええ、これが私が今日まで調べた成果よ。あの砂糖には依存効果の他にも危険な要素が──」

(ガラガラガラガラ)

「っ、今の音は…?」

「ああ気にしないでくれ、新しく作った運搬ロボがこっちまで来ただけだよ」

「そ、そう…」

ヒビキ「ありがとう会長。これで作戦をより順調に進められるよ」

「…え?それはどういう…」

突然、3人は席から立ち上がった

ノアの手には目隠し

ウタハの手には手錠

ヒビキの手には猿轡

それらを見たリオは思わず立ち上がって後退る

「あ、貴女達…それは何!?」

「騙してごめんなさい会長、私達の作戦のために拘束させていただきますね」

「っ…!AMAS!アヴァンギャルド君!早く来なさいっ!」

腕の装置から命令を飛ばしながら扉の方へ駆けるリオ

しかし扉は開かない

「なっ…なんで!?」

「おっと、運搬ロボが偶然部屋の前に棚を置いてしまったかな?ははははっ」

わざとらしい声で告げるウタハ

「AMAS!アヴァンギャルド君!早く!早く部屋の前の棚を破壊しなさい!」

必死に呼びかけるリオ

しかし、AMASやアヴァンギャルド君がこちらに近付く駆動音は一切聞こえない

「ど、どうして…」

「ここだけ電波や通信が飛ばないようにしたんだ。外からも内からもね」

「な、何を計画していると言うの!」

振り向いて問いかけるリオに対し、ノア達は答え始めた


「私達が計画しているのは、アビドスの殲滅。ただそれだけです」

「殲滅…!?」

「そう、砂漠の気違い共を皆殺しにするだけ。簡単な話だよ」

「待ちなさい!アビドスの生徒達も同じ人間なのよ!?それに集まっている人々は、砂糖によって狂わされた“被害者”!皆殺しだなんて到底許されないわ!」

「会長は随分変わったね。あの時アリスのヘイローを躍起になって壊そうとしていた人と同じ人?」

「っ…そ、それは…」

「リオ会長、合理を重んじる貴女ならば分かる話でしょう?砂糖がアビドスから流出しているのなら、流出している輩を全員始末すれば万事解決。違いますか?私達の言っている事は間違いですか?」

「…お、大間違いよ…!罪の無い人々が何人犠牲になると思っているの!?」

「罪の無い?はぁ…会長は研究中に見てなかったのかな?アビドスの連中が如何に罪深いか…ミレニアムだけでなく、他の自治区までも砂糖で蝕んだあいつらに罪が無いとでも?

…節穴にも程があるだろうっ!貴女は本当にビッグシスターと謳われし天才かっ!?」

「なっ…」

ウタハが声を荒げた事に驚愕を隠せないリオ

ノアもヒビキも、ウタハと同じく憎悪と復讐に満ちた目をしていた

「あ、貴女達…は…」

「会長、暫くの間幽閉生活を送って頂きます。そして、貴女の技術を悪用する事をお許しください」



ビッグシスターと謳われたミレニアムの生徒会長調月リオは、こうして幽閉されてしまった

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リオを幽閉した後、エンジニア部室にて


ヒビキ「これで第一段階完了だね」

ウタハ「一番の憂いが無くなった。この学園は私達の管理下同然だ」

ノア「これもお2人と同志の皆さんのお陰ですね♪ありがとうございます♪」

「さて、会長の研究資料も手に入った事だし、これからは第二段階だ」

「砂糖中毒者をどれくらい苦しめながら殺せるかの研究と、兵器開発だね」

「…すみません、ちょっと失礼…」

ノアは連絡に応対する

「はい…本当ですか!?分かりました…今から向かいます」(ピッ)

「ノア、今のは?」

「ユウカちゃんの禁断症状が鎮静化したとの連絡が来ました。今から様子を見に行こうと思います」

「そっか…それなら早く行ってあげて。ユウカも喜ぶよ」

「言うまでもない事だろうけれど、計画については…」

「分かっています。絶対に言いません。では、失礼しますね」


ノアは連合の治療施設へ向かった

だが、ウタハに釘を刺されたというのにユウカへ打ち明けてしまったのは、彼女の中にある罪悪感が故か

この行為がアブズ作戦失敗に繋がるかもしれないと分かった上で、ノアはユウカに教えたのだ



しかし…

ユウカは恐怖のあまりノアの言葉を他者へ伝えられなかった

彼女を止められる気もしなかった

作戦の阻止に対し意欲的にならなかった事が結果的にアブズ作戦成功に繋がってしまうだなんて、今のユウカには知る由もなかった…

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