第五章
中央四十六室襲撃中央地下議事堂
中央四十六室を襲撃し、騒ぎを起こそうと思い立ったカワキは、中央地下議事堂への侵入を試みた。
長い階段を下り、幾重にも閉ざされた扉を開けた先に中央地下議事堂はある。すらりとした指が扉に触れた。
『――鍵が開いてる……?』
無抵抗に開いていく扉にカワキが眉を寄せた。厳戒態勢が敷かれた今、中央四十六室が座す地下議事堂――尸魂界の政治の中枢とも言うべきこの場所の鍵が、無警戒に開け放たれている事などある筈がない。
⦅罠か――…? いや……たかが旅禍数名を嵌めるためにこんな大掛かりなことをするとは考え難い⦆
カワキは張り詰めた空気で銃を構えたまま、ゆっくりと扉の先へ進んだ。最後の扉の先――中央の窪みをむいて、向かい合う形で席が並べられた議会に辿り着く。
扉から階段を下り、カワキは眼前の光景に目を瞠った。
『これは……!』
椅子に座る者の中に生きている者は一人もいない。黒くひび割れた血痕を白い指がなぞる。変色して乾いた血はザリと音を立て、指先から粉のように舞い散った。
『やられたのは相当前か……』
残された血痕から推察するに、彼らは皆 生命活動を停止して久しいようだ。
カワキは『…何が起きてる……』と険しい顔で一通り室内を調べようとする。そこに別の扉の先から訝しげな声がかけられた。
「旅禍がなぜここに居る? 君が四十六室をこんなにした犯人か?」
『――! 君は……。…未遂さ…確かに似たような企てはしたけど誰かに先を越されたんだ』
思わぬ人影にカワキがきょとんと目を丸くする。すぐに平静を取り戻すと声を掛けてきた男に訊き返した。
『随分と芝居がかった物言いだね。君こそ、この事態を引き起こした犯人じゃないのか?』
「さあ? でもこの状況で副隊長である僕と旅禍の君――…どちらの言葉が信用に足るものかなんて明白だろう」
陰鬱そうな吉良の顔に動揺の色はない。カワキはルキア処刑の裏で、何か別の事件が起こっていると確信した。裏があると判断し、詳細を探るべく周囲の捜索を試みる。
『おっしゃる通りだ。話はそれだけかな? なら私は周囲を捜索したいんだけど――…』
「させると思うのか?」
こちらを睥睨する目は冷たく鋭い。当然と言えば当然だが交渉は決裂したようだ。
理詰めで物を言うその態度に、己の上官であり、剣の師でもある男が自分を叱る時の姿が脳裏を掠め、うんざりする。
『思わないね。正論しか言わないな君は』
カワキの言葉に吉良は鯉口を切る音で答えた。
***
カワキ…上手いこと吉良が入るタイミングで地下議事堂に来たのでスルッと入れた。吉良にハッシュヴァルトの面影を感じる。
吉良…「何でこんなところに旅禍が?」と思ったけど、この時は覚悟ガンギマリ状態なので気にしない。
藍染…オリチャー発動「様子を見よう」の精神で突然湧いて出たカワキを見てる。