白哉VS一護

白哉VS一護

スレ主

目次


(格段に強くなってる…)


 双極の丘、そこで戦闘を繰り広げる2人の死神の様子を観察し、水色の髪の少女は真剣に…そして極めて冷静に事の顛末を見守っていた。


 何もサボっている訳ではなく、皆より先に合流した時に一度〝手伝おうか〟と一護に対して声をかけたが『そこで見ててくれ』と断られてしまったため、璃鷹は大人しくここで観戦していることにした。

 その目線の先では朽木白哉とオレンジ髪の少年黒崎一護が戦闘を繰り広げているのだが、以前は手も足も出せなかった朽木白哉相手に善戦している一護の異常な成長速度にある〝考え〟の信憑性を深めていく。

 朽木白哉との戦闘により、一護の中の虚が好戦的に笑いながら白哉を追い詰めて行く。


(虚化の時の仮面…)


 互角の戦いを見せていたが、虚化の影響によるものなのか一護は朽木白哉を圧倒していた。

 そのまま勝敗が決まるかに思えたが一護は虚の力に抵抗し、自らの手で自身の顔にある仮面を剥がしていく。どうやら一護の意思が介入したことにより、虚の人格らしき者は一護に何かを叫んでいる。


「邪魔はてめぇだ放せ‼︎!このまま俺にやらせりゃ…勝てるってのが判んねぇのか‼︎!」


 何も知らない他者から見ればただ1人の男が自問自答を繰り返している奇妙な光景に見えただろう。


(どうせ倒すんだからそのまま任せておけば楽なのに)


 璃鷹はそう思いながら戦闘を再開した一護達に目を配りながら、何か内輪揉めを起こしている隊長達の方にも意識を集中させる。

 白と黒の2人の力がぶつかる──力のぶつかりあいの末、両者から自身の体に血しぶきが飛ぶ。

 引き分けのように思われたが、問答の後、砕かれない一護の奔放さに白哉は引き下がる。


「終わった…みたいだね」


 勝敗が決っしたと同時に一護は高らかに自身の勝利を宣言する。


「俺の勝ちだ‼︎‼︎」


 そう言い終わると体力を使い果たしてそのまま後ろへと倒れた。


「あいた!」


 倒れそうになっている一護の近くに近寄ろうとしたが、後ろで一護を受け止めようとしていた織姫と一護の頭が激突し、その衝撃に頭を抱えて片方だけが悶絶する。



「ご…ごめんね黒崎君大丈夫!?あたし石頭でごめんね‼︎受け止めようとしたんだけど…」

「井上!?」

「ふ、2人とも大丈夫…?」


 璃鷹は呆気に取られながらも、2人に駆け寄りながらケガの心配をした。


「た、多分な…」

「うん!あたしは全然平気だよ!」


 一護は頭を抑えながら答えると、織姫は少し額が赤くなっているだけであり、ニコニコと笑っている。

 複数の気配がした後、背後から「随分派手にケガしたね」と見知った声が聞こえた。

 声のした方を見ると、死神の格好をした石田達が立っている。



「…何だ血まみれの割に意外と元気そうじゃないか 黒崎」

「石田!チャド!岩鷲‼︎」

「みんなも無事みたいだね!」

「あぁ…そうみてぇだな…良かった…」

「無事では無いけどね 君のやられっぷりに比べればみんな無傷みたいなもんさ」


 璃鷹の言葉に同意して安心したように声を出した一護に、石田は皮肉のような言葉を吐くが、その顔は眉を下げて柔らかな表情だった。

 一護は織姫の方に顔を向けると心配そうに問いかけた。


「…井上は?ケガ無ぇか…?」


「え?あ…あたし⁉︎あたしなんて全然‼︎あたしなんて全然役に立ってないのに石田くんや鳶栖さんが守ってくれたり他の死神さんが守ってくれたりして!更木さんとかおんぶしてくれたりして!だから全然危なくなんかなくて…ただ……ただ…」


「ただ黒崎くんのことが…ずっと心配だっただけで…」


 目から涙をこぼして「守れなくてごめん…」と謝っている織姫に一護は柔らかく笑いながらお礼を言った。


「…ありがとう……井上……」


 それを見た璃鷹はチャドにボソリと呟くように言った。


「一護って鈍感だよね」

「そう言ってやるな…気持ちはわかるが…」


 あれほど好かれておいて好意に気づかない一護にチャドも、璃鷹の言葉を否定できないようだった。

 璃鷹がチャドと話していると、予想外に璃鷹の方にも一護から言葉が飛んできた。


「璃鷹も今回はありがとうな」

「…?私は今回何もしてないけど……一護が戦ってるのを見てただけだし」

「俺の言葉を信じて何もせずにいてくれただろ?」


 何故お礼を言われたのか分からなかった璃鷹だったがその一護の言葉を理解して「…あぁ…そうだね…」と納得したように声を漏らした。


「その…悪かった…心配させて…」

「…一護」


 そう言い淀みながら言った一護の名前を呟いた。

 一護がボロボロになりながら白哉と戦っているのをただジッと見ていたに過ぎないが、一護からすれば信じて見守ってくれていた、という解釈なのだろう。

 璃鷹は補足するように虚化の事に関して苦言を呈した。


「虚化した時はびっくりした」

「そ、それは悪かったよ…」

「だめ、心配させた自覚があるならもっと反省して」


 少し厳しい口調で一護に言葉を放つが、その後すぐに璃鷹は「だけど…」と間を置くと一言、言った。


「かっこよかったよ一護」

「お、おう…」


 これでルキアは助かり後は現世へ帰還するのみと思われたが、璃鷹は何か嫌な予感を感じ取り織姫に問いかける。


「──井上さん一護の傷はあとどれぐらいで治る?」


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