加筆まとめ①
幕間・石田親子の会話空座町・公園
「…どういう…ことだよ…どうしてあんたが…滅却師の能力を…!?」
自身が苦戦した虚をいとも容易く倒してみせた竜弦に石田が目を瞠った。
「あんた…あんなに滅却師を毛嫌いしてたじゃないか…。だから滅却師の能力なんて…とっくに捨てたものだと…」
「…だからお前は馬鹿だと言うんだ。言ったろう、“私には興味が無い”。“お前には才能が無い”」
石田の脳裏を幼い頃に父と交わした会話が掠めた。何かを見極めるような目をした竜弦が石田に訊ね返した。
「――お前が滅却師最終形態の修行をした時に共にいた……あの少女は、お前に何も言わなかったのか?」
「…は…? …カワキさんの事か? ……なぜ彼女の話が出てくる? たとえカワキさんに止められたって僕はやってたさ!」
気色ばむ石田に竜弦は態度を崩さない。返された答えに納得いかない様子で質問を重ねた。
「そうじゃない。他の修行方法を提示する事もしなかったのかと聞いているんだ」
「だから何が言いたいんだ! あの状況で他に一体どんなやり方がある…!? 勝手な憶測で僕の友達を悪く言うな!」
竜弦の言葉に、石田が噛み付くかのように吼える。突然、友人を悪く言われて気分が悪かった。竜弦は解せないと言うような顔で不服そうに目を細めて鼻を鳴らした。
「――…まあいい」
そう呟くと、先程の質問に答えるように口を開く。
「生憎と、私の能力はお前のように簡単に消え去るような代物じゃあないんだ」
竜弦は淡々と告げながら、スーツの懐に手をやった。
「石田竜弦。好むと好まざるとに関わらずそれが先代 石田宗弦からすべての能力と技術を継承し、“最後の滅却師”を名乗ることを許された――」
告げられた言葉に、その手にじゃらりと揺れる十字に――石田の顔がみるみる驚愕に染まっていく。
「ただ一人の男の名だ」
「――滅却十字――…!」
見せつけるように取り出された滅却十字に気を取られた石田の背後に、もう一体の虚が近付く。竜弦は顔色ひとつ変えずに、矢の一撃で虚を射落としてみせた。
「…雨竜。お前は未熟だ。未熟なまま尸魂界へと向かい、そしてその未熟な力すらも失って帰ってきた愚か者だ」
何も言い返せず、石田が黙り込む。竜弦は「だが…」と言葉を続けた。
「私ならお前のその失った能力を元に戻してやることができる」
続く言葉に石田が顔色を変える。
「…信じられないか? だが事実だ。ただし、それには一つ条件が在る」
“条件”という言葉に、石田が眉を寄せて恐る恐る口を開いた。
「――…何だ」
対峙する竜弦の表情は険しい。その眉間には深いしわが刻まれている。告げられた条件に石田の顔が凍りついた。
「今後一切、死神には関わらんと誓え」
***
石田…竜弦が突然僕の友達の事をディスってきた! なんなんだよ一体! してる。
「お前の友達の滅却師は、お前を止めてくれなかったのか?」
「他の方法も教えてくれなかったんだな。薄情な友達だ」
と言われたと思って父親になんだコイツ…してる。父も祖父も、見えざる帝国の事を全然話してくれないので、カワキがスパイだなんて全く疑ってない。
竜弦…カワキがあまりにも怪しくて、どう考えても見えざる帝国の滅却師だろ……と思っているので
「滅却師最終形態について、何か言ってなかった?」
「血装の修行をするようにと言われなかったか?」
という内容を訊ねたかった。言葉足らずとツンデレは遺伝か?