元凶と魔獣:激闘編

元凶と魔獣:激闘編

ホシノ搬送までの激闘

【元凶と魔獣:苦狂編】

【元凶と魔獣:熾烈編】

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雨が降りしきる広場の中

【怒り狂う魔獣「カズサ」】と
【光の勇者「アリス」】は

遂に激突する

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アリスの目の前にいたのは、圧倒されるほどの殺意を向けてくるカズサ…

しかしその殺意に怯むことなく、アリスは魔獣の如きオーラを纏うカズサと対峙しました。



遂に戦闘開始です!

まずは、家屋内にて倒れているホシノを守りながらの戦いになります!

セナ先輩が救急搬送するまでホシノにも注意を払いながら、カズサが家屋へ到達しないよう足止めしなければ!




カズサ「邪魔するんじゃねえよ…!このエセ勇者がぁっ!」

アリス「ヒーラー系勇者として!カズサもホシノも絶対に救ってみせますっ!」


エセ勇者と蔑まれても怯まず、「アリスはヒーラー系勇者だ」と宣言して光の剣を構えます…

ホシノの命を奪おうとするカズサに対して、「殺されるべき存在なんてこの世に存在しない」と理解してもらうために!



「そこを、どけっ…!小鳥遊ホシノを、殺させろぉ゛ッ!」

(ガガガガガガガガッ!)

そう叫んだカズサは遂に引き金を引き、アリスを銃撃してきました

「いいえ!殺させはしませんっ!」

光の剣を前方に構えて銃弾を防ぎつつ、魔力充填して発射準備を整えます…!


50%…65%…80%…

「いつまでも防ぎ切れると思ってんじゃねぇぞッ!」

100%!

「はい…!なので、次はアリスのターンです!出力臨界点突破…光よっ!」

(チュドォォォォォンッ!!!)

「くっ!?」

出力100%の光線に驚いたカズサは左方向へ回避し、着弾地周辺の石畳は吹き飛んで大きく抉れます


「滅茶苦茶な威力っ…それなら!」

カズサは飛び退きながら懐から手榴弾を取り出すと、口でピンを抜いてアリスに向かって投げつけてきました!

「っ…!?こんな時はっ!」

再度充填中だった光の剣を下へ向けて、出力が37%ほどの状態で発射し後方へと吹き飛んで回避します…!

(ドガアアアアンッ!!)

アリスの目の前で手榴弾が爆発したのを確認し、光の剣ごと飛んだアリスは後方にあった家屋の2階あたりの壁へ足をつきそのまま近くの石畳へ着地しました


「…そんなデカブツ持ってんのに、随分身軽なんだ」

少し関心したような様子でアリスを睨むカズサに対し、アリスは説得コマンドを試みてみます

「カズサ!目を覚まして下さい!そんな貴女を、アリスは見たくありませんっ!どうか間違えた選択肢を選ばないで…」

「…目を覚ませ?目ェ覚ますべきなのはテメェの方だろうが!私は小鳥遊ホシノを…そしてホシノを庇おうとするお前を許さない…!例え私が死んだとしても、必ず小鳥遊ホシノを地獄へ叩き堕として殺し続けてやるッ!」

「っ…カズサ…」


憎しみに満ちた目でそんな事を言い放つ姿に悲しみを隠せません…

やはり、現段階での説得コマンドは通用しないみたいです

であれば、カズサがアリスの説得を聞き入れる時まで…少しだけ荒療治になってでも怒りを鎮めさせるしかありません!




「いいえ、アリスは絶対に…絶対にそのような行為には手を染めさせませんっ!カズサがどす黒い殺意を収める時まで…この身を盾にしてでもホシノを守って、カズサの暴走を止めてみせます!」



「………天童、アリスゥゥゥッ゛!」





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低く轟く咆哮のような怒りの声をあげたカズサは、マビノギオンの弾を再装填しアリスを容赦無く撃ち始める


アリス「っ!これしき…!」

先程と同様に無数の銃弾を光の剣で受け流すが、自分からは攻めずあえてカズサの攻撃を受け止める体勢を整えた


現在ヒーラー系勇者として活動しているアリスは、ミレニアム制服ではなく動きやすい専用衣装を着用している…

なので現在アリスのスピードステータスは、メイド服に身を包んだ時以上の俊敏さを得ているのだ

もしもカズサが自分を無視してホシノを攻撃しようとしても、その目の前に立ち塞がるなり光の剣を放って妨害するなりすれば自身へターゲット集中させる事は可能なはず…

そしてアリスは、カズサが弾切れする事も狙いひたすら銃弾を受け止め続けた



カズサ「チッ…埒があかない!」

だが中距離以上でアリスを撃っても受け流されるだけで銃弾の無駄だと気づいたカズサは、引き金から指を離すと一気に距離を詰め始めた

アリスが打たれ強いのは、撃ち続けても身体がよろけずに立っていられる姿を見ればよく分かる

持久戦はこちらの不利…であれば早期に決着をつけるしかない


「そこ、ガラ空きなんだよっ゛!」


まるで大盾みたいなレールガンだが、持ち上げている以上完全にアリスの全身を覆い隠せた訳ではない

カズサは怒りでぼやけそうな視界を無理やり矯正しながら、的確にアリスの足を狙って攻撃する


(ガガガガガッ!)

「ぅあっ!?」

足に痛みが走ったアリスが少し怯んだ隙を逃さず、スライディングしながら防御が手薄になった右側面を撃つ

(ダラララララッ!)

「くっ…!まだ、この程度では…!」

身体の右側面を撃たれたアリスは、すぐさま防ぐよう光の剣を傾けて、そのままカズサに向かって突進する


「なっ!?」

まさか自分からも距離を詰めてくるとは思わず意表を突かれたものの、カズサは近くにあった家の窓ガラスを割って中に飛び込み回避した

「はぁっ…!今だっ!」

そして、アリスがホシノのいる家屋から離れたのを好機と判断し、再度窓から飛び出してトドメを刺すために走り出す。しかし…



「そうはいきません!光よっ!」

「くっ!?」

アリスは突進の姿勢から一転し、光の剣から光線を発射した

当然カズサには当たらない弾道ではあるものの、ホシノが倒れる家屋に到着するのを阻止するには十分な妨害…アリスも走り出しカズサに追いつこうとする

「しつっ…こい゛ッ!」

咄嗟に飛び退いて光線は避けたが、またホシノから遠ざけられたことで苛立ちが加速していくカズサは、負けじとアリスに銃弾の雨を降らせる…しかしさっきと同じく光の剣を盾代わりに防がれるだけであった。そして…


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(ガガガガガッ!)

(カチッカチッ)

カズサ「クソッ!弾切れかよ!」

ホシノを撃った時に加えて、今アリスに対しても無駄弾を撃ちすぎた

漆黒に染まったパーカーのポケットから残った全弾薬を取り出そうとするが…

アリス「させませんっ!」


アリスはカズサの手が当たらない位置を狙って光線を放ち、再度咄嗟の回避行動を取った際銃弾を落としてしまった


「あ゛ぁッ!?ざけやがってェッ!!」

カズサは装填が出来ず怒りに満ちた怒号をあげる

手から落とした分が最後の弾薬だった

どこかの家に入れば補充出来るかもしれないが、マビノギオンの規格にピッタリな弾薬が都合良く置いてあるかどうかも分からない

そんな事をしている間にアリスはホシノを救護してしまうだろう

魔獣の苛立ちは頂点に達していた



「…カズサ、弾が尽きたのであれば銃を置いてください。もう撃たないのなら、アリスもカズサへ光の剣を向けません」

そう告げて引き金から手を離したアリスは、落とした弾薬を拾って噴水へと投げ入れると、殺意が燻る目で睨むカズサに手を差し伸べようとする

「お願いします…人殺しになってはいけません。アリスは、そんな結末を迎えるエンドなんて嫌です…それに、カズサの大事な人だってそのような結末は──」



 「お前に何が分かるんだよッ!」



「っ!?」

カズサは雨に紛れて涙を流しつつ、感情を大爆発させた怒号をぶつけ始める



「私は…何もかも壊されたんだっ!大切なスイーツ部の友達も!付き合いの長い腐れ縁の友達も!願っていた平穏もっ!今の私を形作った全てが、あの忌々しい砂糖のせいで全部!全部失ったんだっ!

友達だったみんな…あいつらの事は全員嫌いになった!その結果ヤク中と蔑んで撃って!殺そうとさえしたっ!

例えあいつらの中毒が治ったとしても、そこに私の居場所はあると思うか!?」


「そ、れは…」

捲し立てられた悲痛な言葉に、アリスは何も返せず聞くことしか出来なかった



「お前はどうだ!?大事な人達はどうせミレニアムとかいう特効薬開発の第一線で、いの一番に安全な治療を施されてんだろ!?

多くの人を救いたいとか宣ってたけど!そんな事が、真っ当なやり方でこなせるわけねえだろうがっ!

私の事を分かった気になって、『人殺しはダメだ』とか!『私もホシノも救う』とかほざくんじゃねえよっ!

私だけじゃない!キヴォトス中が砂糖で壊され、狂わされた元凶はあの女の仕業だってお前も知ってんだろ!?

あの女…小鳥遊ホシノが全ての元凶で、責任を取るべき巨悪だって言うならっ!命を以て償わせるべきだろうがっ!」


「──」

光の剣を持つアリスの握力が少し強まる


「お前がホシノを庇う理由はなんだ!?お前も砂糖の被害者なんだったら、目の前に元凶が現れた時殺したいと思うはずだろ!?なのに救世主気取りでホシノも救うとか全っ然意味分かんないっ!

だからお前はエセ勇者…いいや、偽善に塗れたキヴォトスの裏切り者だ…!砂糖で人生を狂わされた人達の敵!アビドスの連中と同じ大罪人だぁっ!」


喉から血を吐きそうな程の勢いで叫び、はぁはぁと息を荒げながら涙と顔を伝う雨を袖で拭う

「だから私はこれから、何もかもを殺し尽くしてや…」


「いい加減にしてくださいっ!」


アリスは、もう我慢できなかった

「カズサっ!それ以上暴言を口に出す事は許しません!

ユウカは…アリスの面倒を見てくれる、優しくて大事な先輩は!安全な特効薬をキヴォトス中の人達に届けるために、今この瞬間も身の危険を顧みず治験実験に協力しています!

モモイとミドリとユズは…アリスの大切な友達は!カズサのお友達と同様に治療されるまで禁断症状デバフに苦しみつつも必死に耐え続けています!

大切な人達が砂糖を摂取する事を止められなかった事や、砂糖の呪縛から助けられなかった事も…アリスとカズサは同じなんですっ!

とても絶望し、自分自身が嫌いになる事だって何度もありました!それでも勇者として、この事件を解決したいと願ったからこそパーティを組んだのです!

アビドスの人達が…ホシノが悪行に手を染めていたのは理解しています。しかし彼女達が公的に罪を償えるよう戦うのも勇者の役目ですっ!

カズサがホシノに私刑を与えて殺してしまった場合…ホシノが罪を償いやり直す機会は永遠に失われ、カズサは人殺しとして罪を背負うことになります…!

アリスは、そんな最悪のバッドエンドを望みません!それでも殺意を抑えないのならば…この拳で貴女を殴ってでも殺意を失くさせますっ!」





しばらくの間雨の音だけが響き続けた


アリスの言葉を聞いたカズサは、蔑んだ目で勇者を見つめた。すると口だけ笑みを浮かべ…


  「だからなんだよ」


そう、嘲笑するように呟いた


「ああ、いいよもう。そんなに私を止めたいって言うなら力づくでやってみな。御託なんかもう聞きたくない。私はもうお前もホシノもアビドスも、全員“殺す”と決めたんだよ。

死んだって全員殺してやる。砂糖の蔓延を手伝うクズ共と、それを庇う裏切り者は皆殺しだ…!この命を犠牲にしてでも必ず抹殺してやる!必ずだっ!」


そう言い放つと、カズサは弾切れで弾倉が空になったマビノギオンをアリス目掛けて投げつける

「っ…!?」

酷使されて表面や銃口が傷だらけの銃を咄嗟にキャッチし、カズサの方へと再度視線を戻し見上げたアリス

彼女はそこで目を疑うような光景を目にする


「アリス…今からお前を、本気で殺してやる。銃なんか重くて邪魔だ。それに、銃で撃たなくても人間は殺せるし」



あまりにも強く恐ろしい【殺意の意思】を伝えるカズサのヘイローが、突如強く光り輝いた

その輝きはすぐに収まったが、アリスの目から見たカズサは、身体から悍ましい負のオーラが溢れ出ているようだった


魔獣【キャスパリーグ】の異名は、彼女が過去に猛威を振るったスケバンだったのが由来である

だが…精神を徹底的に追い詰められた末に、ホシノやアビドスへ向ける強い殺意とアリスの言葉によって悪い方向へ神秘が覚醒した結果、彼女は文字通り“魔獣”の如き身体能力を得たのだった


「あはははは…今なら誰だろうと素手で殺せる気がしてくるよ」

狂気を孕んだ声で呟いたカズサは近くの瓦礫を手に取ると、握っただけで容易く粉々に粉砕した

「なっ!?パワーステータスが上限突破しているのですか!?」

「…パワーだけだと思ってんの?」


その声が聞こえた次の瞬間、カズサの姿が突如消えた

「…っ、上っ!?」

背筋が凍るような気配を察知して、即座に上を見上げたアリスの視界には蹴りを放つカズサの足が映った

咄嗟に持っていたマビノギオンを投げ、両手でガードしようとするアリスだったが…


「トロいんだよ」

(ドガァァァッ!)

「うあぁぁぁっ!!!」

ガードは間に合ったものの、両腕に激痛が走ったと同時に数メートルも吹き飛ばされてしまった


「こ、このスピードとパワー、先程までのカズサとは、全然違います…!」

痛みに耐えながら立ち上がるアリス

「へぇ…頑丈なんだねアリスって。まあいいや、先にホシノを…っ!?」


カズサがホシノに狙いを定めようとしたその時、遠くから車が近づく音が聞こえてきた事で其方に注目する

(ギュルルルルーンッ!)

「あ、あれはセナ先輩の…!」

広場に現れたのは、暴走車両なのではと錯覚するほどの勢いで駆けつけたセナの救急車だった

「セナ先輩ーッ!右側の一階部分が崩壊した民家の奥にホシノが倒れてますッ!どうか早急に搬送をーッ!!!」

アリスはありったけの大声でセナに呼びかけた

「させるかァ゛ッ!」

当然カズサは見過ごすはずもなく救急車へ襲い掛かろうとする…しかし

「光、よっ…!」

アリスはその背後から、光の剣の100%砲を発射して魔獣の行手を遮る

「チッ…テメェ゛…!!」


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アリスの声に従って右側を見ると、確かに崩壊している民家があった

セナ「した…小鳥遊ホシノはあそこですか…こうなったら、このままあの家屋へ突っ込みます!」

モブ救護騎士団員「えぇっ!?」

「突っ込んだら運転を交代して下さい!私がすぐさまホシノを車内へ入れて応急処置を施しますっ!」

「うぅ…わ、分かりました…!」

私はその民家へ突っ込むと、すぐに運転を交代して後方のドアを開く

…いた。ピンク色の髪をした少女

彼女を抱き上げ車内へ搬送しつつ状態を確認する

ヘイローは浮かんでいない…しかし肌色を見る限り死んではいないようだ。とはいえあちこちから出血している上に左腕が折れているので瀕死ではある

「出して下さいっ!早く!全速力で!」

ホシノを搬送しドアを閉めた私は急いで車を出させる

「は、はいぃっ!」


ここまでの間、アリスのスーパーノヴァが何度も放たれる音と光を感じていた

アリス…ホシノの搬送を終えたら今度は貴女を救護しに向かいます…!

どうかその時まで、耐えて下さい!


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アリス「はぁ、はぁ…」

何度も救急車を襲撃しようとしたカズサに光の剣を向けて行動を阻害した結果、セナ先輩は無事ホシノを連れて逃げられました


走り去る救急車を見送る事しか出来なくなったカズサは

カズサ「………テメェが、テメェが邪魔さえしなければ…ッ゛!」



今まで見た中で一番の怒りを携えた声と瞳をアリスに向けながらゆっくりと振り返ってきました

正直に言うと、アリスはそんなカズサの姿に恐怖を覚えたのですが…


「第一ミッション、クリアです…!次はカズサ、貴女を魔獣から戻すミッションを開始しますっ!」


勇気を出してそう言い放ち、急な連発によってオーバーヒートを起こした光の剣を外すと、師匠から教わったCQCの構えを取りました!



「ここからは…ミネ師匠直伝の、接近戦モードで立ち向かいますっ!!!」

「あぁぁ…アァァァァァッ゛!!!」





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未だ止む気配がない雨の中

【覚醒した魔獣「キャスパリーグ」】
【救護の意思を継ぎし勇者「アリス」】

両者が本気でぶつかり合う熾烈な接近戦が始まろうとしていた

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