元凶と魔獣:苦狂編

元凶と魔獣:苦狂編

元凶と魔獣の相対

【元凶と魔獣:遭遇編】

【元凶と魔獣:激闘編】

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[パンパカパーン!]

[アリスvsカズサに新たな難易度が追加されました!]

《vs魔獣カズサ TORMENT》←


[挑戦しますか?]

〈はい〉← 〈いいえ〉




【成功条件】

カズサのHPを70%以上減らさずに説得

【失敗条件】

アリスのHPが0になる

カズサのHPが70%未満になる

ホシノの救護失敗



[Ready…]

〈GO!〉←

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辿り着いたのはトリニティ南部の広場

そこまで広くはないけど、中央に噴水が設置してある

かつてのここは、きっと行き交う人々で賑わっていたんだろうな…と思いつつ、その賑わいを奪ったのは私なんだと自分を責める


ここなら誰にも気づかれないだろうし、さっきの子は重傷の子をほっとくなんて真似しないだろう


これで誰にも邪魔されず

カズサちゃんに殺してもらえる




噴水の前で足を止め振り返った

カズサちゃんはさっきと同じ…いやそれ以上の殺意を私に向けながら追ってくる


カズサ「フーッ゛…!フーッ…!」

呼吸を荒げながら私を睨むその姿は…

なんだか本に出てくる魔獣みたいだった



ホシノ「ごめんね、カズサちゃん」

「はぁ…はぁ゛っ…!なんで私の名前、知ってんだよ…テメェ…!」

「さっき、君を呼び止める救護騎士団の子の声が聞こえちゃって。もうおじさんは足腰弱くなっちゃってるし、これ以上の全力疾走はちょっと無理そうだから…いいよ、好きにして」

「…は?」

「好きにして良いって言ってるんだよ。私はカズサちゃんの大事な人達を不幸にして、日常を崩壊させた元凶だからさ」

「……なんだよその言い草」

「殺したいなら殺して良い。苦しめたいなら苦しめて良い。カズサちゃんは私を好きなように断罪する権利があるから」

「………」

「土下座しろとか、地獄で詫びろとか、それ以外でも構わない。カズサちゃんの日常を…キヴォトス中をメチャクチャにした全ての原因は私なんだから…」




ごめん先生

やっぱり私、生きてく自信が無いんだ


そしてカズサちゃんもごめん

君の手を汚して楽になろうとする…

そんな酷いおじさんでごめん






シロコちゃん

ノノミちゃん

セリカちゃん

アヤネちゃん

便利屋68の子達

ヒフミちゃん

柴大将

ヒナちゃん

ハナコちゃん

アビドスに来たみんな

ユメ先輩


親しい人達の顔が

走馬灯のように思い浮かぶ

後悔ばっかの人生だったなぁ…


──結局どこまでも卑怯で

ゴミクズみたいな人間だったかもね

私って



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ホシノ「カズサちゃん。私を殺して」




その言葉が聞こえた瞬間

私の意思は殺意に満たされた


殺す

本気でブチ殺す

こいつを殺す

小鳥遊ホシノを殺す

この世に生まれた事を後悔させてやる

あらゆる苦痛を以って地獄に送る

肉の一片残さず消し去る

必ず息の根を止めてやる

殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺


「あああ゛ァァァァァァ゛ッ!!!」


衝動と共に出される、殺意を込めた声

私は絶対目の前の元凶を殺す

相手が願ったからとかじゃない

この心がこいつを殺したいと思ったから

その圧倒的な殺意の赴くまま

小鳥遊ホシノの殺害を開始した

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カズサが殺意の叫びをあげた次の瞬間、ホシノにマビノギオンから放たれる銃弾の嵐が襲いかかる

スイーツを楽しみ、平凡な日常を求めた少女の姿はもう無かった。ここにいるのは、この元凶を必ず殺して罪を償わせるという意思に支配された魔獣…

中学生の時封印した“キャスパリーグ”という自分の本性を隠すことなく曝け出す

小鳥遊ホシノに必ず報いを受けさせる…それが今の彼女が持つ行動理念だった


ホシノ「ぅぐ…!あぁっ!」

大量の銃弾はホシノの身体を吹き飛ばして、背後にある噴水へと突っ込ませる

「い、たた…っ!?」

びしょ濡れになったホシノが起きようとすると、カズサは急接近してホシノの頭目掛けて強烈な右脚の飛び蹴りを喰らわせる

「がふぅっ!」

カズサ「殺す…絶対殺す…テメェのやらかした罪を苦痛で払わせてから…身体の欠片ひとつさえ残さず消し去って…地獄に叩き堕としてやるッ゛!!!」

カズサは噴水から遠く離れた石畳に叩きつけられ倒れ込むホシノへ追いつくと、今度は左手を思いっきり踏みつけてから肘目掛けて銃床を振り下ろす

(バギャッ!)

「い゛っ…!?あ゛ぁぁぁっ!!!」

左の肘が折られ、あまりの激痛に悲鳴をあげるが

「(凄く痛いけど…カズサちゃんや世界中の人が受けた苦しみに比べれば、全っ然生ぬるいんだろうなぁ)」

心の内ではそう考えていた




その後何十発も弾丸を撃ち込まれ、身体が遠くまで吹っ飛ばされる程の威力を誇る拳や蹴り、果ては銃床も使ったあまりに強い暴力を受け続けるホシノ…

10分足らずだというのに、額が割れ歯も何本か折られたことで頭や口からかなり出血している状態…左腕はさっきの一撃で完全にオシャカ状態となり、よろよろと立ち上がってもだらんとぶら下がっている…腹や脚にも痛々しい傷痕が見え、満身創痍と言っても過言では無い状態だ



我を忘れてホシノを攻撃し続けるカズサだったが…これほど痛めつけられているというのに、一度も受け身や回避や防御をせず一方的な暴力を受け止めるホシノを見て余計に意味が分からなくなった

その気になればこの女は私を返り討ちに出来る強さを持ってるはずなのに、何故抵抗せずに自ら死にたがるのか


カズサはホシノの胸部を銃床で殴り押し倒すと、その上で馬乗りになり尋ねる

「……なんでさっきから抵抗しねぇんだよ。その気になりゃ私ぐらい余裕で倒せるんだろ?」

「げほっ!がはっ!ぅ゛ぅ…もう私に、残されてる贖罪の仕方は…え゛ほっ…!死ぬくらいしか…無いからかな゛…」

「…」

「ごめん゛ね…キヴォトスの、きみの、日常を壊しておいて…その上…私を殺す事で、手も汚させちゃうなんてさ…」

「っ…!黙れッ!!!」

(バゴッ!)

「あぐっ…!」

「ふざけんなっ!どの口がそんな事ほざけんだよ!?今までアビドスで好き放題してたくせに、こんな時に限って何しおらしく謝ってんだっ!!!」

(ドガッ!)

「ゔっ…!」

「口だけで謝ったって…もう私の願った日常はっ!平凡はっ!大好きなみんなは戻ってこれねぇんだよぉ゛ッ!!!」


馬乗りになって殴るカズサ

殴るたびにホシノの口から血が噴き出る

その時…カズサの心と同じくらい曇った空から雨が降ってきた

誰もいない広場で雨に打たれる2人


しばらくしてカズサが殴る手を止める

ホシノは半目を開けて彼女の顔を見やる

カズサの目には、雨とは違う水が流れていた

「うぅ…っく、ぐすっ…返せよ…!私の大事なもの、ぜんぶ…!!」

「…カズサ…ちゃ…」

「ナツを返せ!ヨシミを返せ!アイリを返せ!宇沢を返せ!日常を返せ!願いを返せ!平和を返せ!全部全部全部全部…全部返せよぉ゛ッ!!!」

「………」

泣きながら返せと叫ぶ彼女の姿はあまりにも悲痛だった

「…ごめん…もう、返せないから…さ」

喋るのも大変な状態だが言葉を紡ぐ

「私にトドメ刺して、償わせて…それでケジメ、つけさせて欲しい…」

彼女が求めているのは自分の命じゃないと分かっていても…償うべき方法が思い浮かばず自分勝手な自殺願望を伝える事しか出来なかった



数分間の沈黙が続いた後


「…ああ、うん。もういいよ。そこまで言うならテメェの命で償ってもらう」

カズサは冷ややかにそう吐き捨てると、ボロボロなホシノの髪を引っ掴んで立ち上がらせ近くの家へと蹴り飛ばす

「ぐぶぅっ…!」

轟音を響かせ家の中へ突っ込み、その際砕けた木の破片が脚や背中に突き刺さる

最早ヘイローにヒビが入って死が目前のホシノに対し、カズサは銃口を向けた

「地獄でキヴォトスの人達に詫び続けろ小鳥遊ホシノ。私も死んで地獄に堕ちた時は…あっちでも殺し続けてやる」

そう言って魔獣は引き金に指をかける

「(あぁ…これでカズサちゃんや被害者達の気分が、少しでも晴れてくれればいいなぁ…)」

元凶は目を閉じて死の瞬間を待つ









その時

「光よっ!!!」

突如強い光と衝撃波が走った

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雨が降り始めた後

アリスはホシノとカズサを追う途中緊急無線を繋げました

繋げる相手は…


〈鷲見セリナ〉

〈氷室セナ〉←

〈蒼森ミネ〉


セナ「アリス…どうしました?緊急事態でしょうか?要救護者であれば、一刻も早く報告を」

アリス「はい!現在トリニティ南地区の噴水広場にて、カズサがホシノを…ではなくて!砂糖未摂取の人が、アビドスの人を一方的に攻撃しています!このままではアビドスの人が殺されてしまうかもしれません!」

「ホシノ…?まさかアビドスの…?いえそれは後ほど確認しましょう。
南地区の噴水広場…了解しました。こちらの搬送が終わり次第、直ちに急行致しますのでどうか死た…要救護者の保護をお願いします」

「分かりました!ですが長くは保たないかもしれませんので、タイムアタックでやれそうならお願いします!」

「はい、救急車のエンジンフル稼働してでも死体…ではなく要救護者を搬送すると約束しましょう。本当の死体には絶対させません」

「どうかお願いします!」

セナ先輩との無線を切り、アリスは最速で広場へと向かいます




そして見えてきた噴水広場は…あちこちに銃痕や抉れたような跡があり、激しい戦闘が繰り広げられていたのがよく分かります

…いえ、戦闘ではなく一方的な攻撃です

すると目の端に映ったのは、銃を家の中へ向けるカズサの姿

アリスは考えるよりも前に、カズサと家から少しズラした位置へ光の剣の照準を合わせ…

アリス「光よっ!!!」




予想通り、カズサはその場から飛び退き発砲を止めてくれました

間髪入れずに一階部分が崩壊した家へと向かいます

そこには、最早HPが殆ど尽きかけた様子の小鳥遊ホシノが倒れていました

顔面は血まみれで辛うじて顔のパーツが分かる程度…

左腕は異様な曲がり方をしていて折れているのがすぐに分かります

恐らくこの家に突っ込んだ事で、木片が脚に突き刺さっており

ヘイローにヒビが入っているという死にかけの状態に見えました

セナ先輩が来るまで、なんとかホシノを守らなければ…!



カズサ「何で邪魔すんだよ」

その時、背後から身が凍ってしまうかと錯覚するほどの冷たい声をかけられる

あの、荒れていながらも面倒見の良さと優しさを隠せなかったカズサと同じ声には聞こえませんでした


「そいつは自分の命で償うって、ケジメつけるって言ったんだ」

アリスはホシノを庇うように振り返ると同一人物とは思えない程の憎悪と殺意に満ちた目を怯まず見つめて

「…カズサ。たとえそう言ったとしても人殺しは許されません。そんな事をしてしまえば──」

「は?何言ってんの?そいつが人間だとでも言うわけ?…意味分かんねぇ!そのクズがしでかした事忘れたのかよ!?」

「っ…!そ、それは」

カズサの勢いに押されてしまいます


「そいつは私の日常をっ!大好きだったスイーツ部をっ!アリス、あんたの大事なダチをっ!このキヴォトス中をっ…!全部ブチ壊しやがった奴だッ!!!」

「………ですが…」

「お前が庇ってるそいつは人間じゃないんだよっ!生きてるとまた誰かが壊されるかもしれない!殺されるよりよっぽど酷い事になるかもしれない!

だから今すぐ殺すべきなんだよッ!」



感情的に怒鳴るカズサの言葉に対して、アリスは…

「いいえっ!ホシノは確かに悪事を犯しました!ですが私刑も死刑もすべきではありません!」

彼女の気持ちはよく分かります。しかし死んで当然という言葉には断じて違うと伝えました

「ホシノは勿論、アビドスの人達は処刑ではなく、法のもとで真っ当に裁くべきです!私刑で殺してしまっては…カズサが人殺しになってしまいます!アリスはそのようなエンドを望みません!」

「───」

「ホシノが殺してと…ケジメをつけると言ったのは、彼女自身にそれ程の罪悪感があるという事ではないのですか?それならば尚更、ホシノは裁判を受けて罪を償うべきだと…アリスは思います」

「……アリスは、勇者になるんじゃないのかよ?お前の後ろにいるのは、どんなゲームに出てくる魔王より何百倍もタチの悪い最低のクズだぞ…!」

カズサは睨んだままアリスに告げます

「お前がホシノを、魔王を庇うって言うなら…アリス、お前は勇者じゃない…!勇者の皮を被っただけの、魔王に与する裏切り者だ…!みんなが苦しんでるのに元凶を庇う大罪人だぁ゛ッ!!!」

そう叫び、銃口をアリスに向けました

「…今のカズサから見たアリスは、そう見えるのですね…確かにそう思われても仕方ありません。ですがっ…!」

アリスは光の剣を持ち直し

「“皆で迎えるハッピーエンド”の為に…そしてカズサが人殺しにならない為に!アリスは貴女を止めますっ!ヒーラー系勇者として、カズサが傷つきすぎないよう戦ってみせます!」

「やってみなよエセ勇者。悪いけど私は手加減しないし、ホシノから目を離そうものならトドメを刺す…覚悟しろ」

「…行きますっ!」


その言葉を皮切りに戦いの火蓋が切って落とされました

最低でもカズサのHPが必要以上に下回らないようにしつつ、セナ先輩が救急車でホシノを回収してくれるまで…ホシノに注意を向けながら立ち回らなければ!

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ミネ団長が指名した救護騎士団の方一名に道案内されながら、私はアリスが報告した噴水広場へと救急車を走らせる

建物にぶつけないようにしつつ、手遅れにならないよう最大限の速度で向かう


セナ「アリス…小鳥遊ホシノという名を言っていましたが、それが本当だとするなら一刻も早く治療せねばなりません」

彼女が本当の死体になるのは許しません

罪を償うため、命を守るため、何より…先生とアリスがホシノの死を望まないと言ったが故に

「アリス…私が到着するまでの間、どうか小鳥遊ホシノを守って下さい」

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