ナムシャンデリア
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璃鷹は織姫の近くに着地すると服についた砂埃を祓う動作をした。
この様な惨状の中命の危機がある状況で態々その危険は場所に進んで行く人間は少ない。操られていた生徒の中に璃鷹の姿が居なかったのを確認していた織姫はここに来る事を想定していなかった人物との遭遇に目を見開いた。
「井上さん大丈夫?」
「え、あ、鳶栖さん!??何で上から…ッ!!?危ない!!」
疑問を口に出す前に璃鷹に向かって真っ直ぐに飛んでくる種子を見て織姫は咄嗟に叫んだ。しかし璃鷹はその攻撃を避けることなくその場を動かない。
ナムシャンデリアはその歯が剥き出しになった口を開けて笑う。
「隠れていればこうはならずに済んだのに馬鹿な小娘だ‥よ、」
目の前に居る女はもう自身の操り人形になっている筈だ。そう思っていたナムシャンデリアの予想は大幅に外れることになった。
(無傷だと‥!!そんな馬鹿な)
女は先ほどと寸分違わない場所に涼しげに、こちらを気にする事無く佇み、手の甲にら何やら青い模様が浮かんでいる。今までなかった事象にナムシャンデリアは酷く動揺を示す。そしてもう一度種子を飛ばそうと触手を動かした。
「ひっ、」
その瞬間此方を見つめる琥珀色の瞳に冷たい視線で睨まれた。織姫は慌てた様子で璃鷹に近づいた。
「だ、大丈夫!?それを打ち込まれると体が‥「井上さん」え?」
「よく聞いて」
「う、うん」
「あれは井上さんの敵だよ。無理そうなら変わるけど‥今の井上さんなら出来るよね」
それを聞いて何か言葉を出そうとしたが、此方を見つめる瞳を見てそれを辞めた。そこに不安の色は一切ない。
織姫はそれがいい加減な言葉では無く、信頼から来るのもであると分かっていた。
「──うん、私やるよ、たつきちゃんのために他の人たちのためにも」
「井上さんならきっとできるから頑張って。もし危なくなったら私も加勢するから」
その言葉に織姫は璃鷹を安心させる為に微笑んだ。
「状況はよくわかんないけど‥何でだろう あたし今全然怖くないの だから大丈夫…でも心配してくれてありがとう」
そして一歩前へ進んでから璃鷹の居る方向へ振り返った。
「鳶栖さん…何があっても私の事、後ろで見ててね」
「…うん信じて待ってるよ」
その言葉を聞いて織姫はナムシャンデリアに向き直った。その顔には大事な人を傷つけたナムシャンデリアへの怒りが窺える。
「その女に戦わせるきかい‥?」人外の体からでも恐怖している事が分かるほどに震えていたナムシャンデリアは一筋の自身の生存への道を確固にする為に恐る恐る話しかけた。
虚とはあまり会話をしたことが無い璃鷹は少し不思議がった。いつもなら聞き流しているところだが‥最初の一幕は楽しめた事と、そして同級生である織姫の前なのもあり璃鷹はそのナムシャンデリアからの問いに答える。
「?私に言ってるの…まぁ私が戦う必要はないからね」
それを聞いてホッと息を撫で下ろしたが気まぐれで殺される未来もまだ無くは無い現実に再び体を硬直させる。
「安心しなよ、私は参加しないから…まだ怯えてるね?そうだな…じゃあこうしよう。もし井上さんに勝てたら生きたまま逃がしてあげる」
「虚相手でも約束は守るよ」
璃鷹はもうナムシャンデリアには意識が向いて居ない様で織姫の後ろで既に傍観を開始している。その言葉を聞いたナムシャンデリアは一筋の生存の希望が見えた事に安堵した。
そして真っ直に種子を織姫の方向に打ち込もうと向かってくる。織姫は一呼吸おいてから璃鷹が来る前に教えられた言葉を放つ。
「ヒナギク バイゴン リリィ」
「私は『拒絶する』!!」