観察
スレ主目次
「そういえばあんた…鳶栖さんにはそういう事しないよね」
割れたガラスを三人で集めている最中、たつきは織姫に対しての千鶴の卑猥な発言を咎めている時にそう千鶴に向かって言った。
「うーんなんだかなぁ…何というか女子高生らしい初々しさが無いっていうか‥女の子らしくて可愛いと思ってるんだけど‥何でかなぁ‥」
「女子高生らしくないあんたが言うか!!」
悩ましい様に声を出した千鶴の頭をたつきの拳が振りかぶった。
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「…?」
放課後、先生の手伝いでノートを一緒に運んでいた璃鷹はその場で立ち止まった。
体育館近くから虚を気配を感じたからだった。
その方向を見て璃鷹は立ち止まった。学校の敷地内で虚の出現、本来であればルキアの端末に指令が入り一護がすぐさま向かってくることが予想されるが今回はその2人が来ていない。
──恐らくは何かどうしても手が離せないことが起こったか‥。
(一護がいないならなら別に私が戦う理由も無いな‥)
それよりも学校という身元特定が疑われやすい状況下に置いて、この様に自身が何かせずともこのような非日常的何かが起こることは極めて稀である。
そしてその非日常を求めて安全な場所から観覧するのもまた、人間の性では無いだろうか。
少し考えてたから教師の居る方向を向いた。
「先生」
「どうした?大丈夫か?」
微動だにしない璃鷹を心配して顔を覗き込んでいた先生に璃鷹は1クラス分のノートを既に手に持っている上に更にノートを追加した。
「用事ができたので後はお願いします」
「あ、おい!!鳶栖!??」
背後から教師の呼び止める声が聞こえたがそのまま階段を降りていた足を逆方向へ向けた。
──虚に対して殊勝な工夫は期待していないが、精々生徒数人はやってくれるだろう。
璃鷹が屋上に移動した瞬間学校の窓ガラスが全て割れた。どうやらもう始まってしまったようだ。「危ないな」と声を出して少し肩についた破片を取る。
「へぇ…」
織姫の首を千鶴が泣きながら締めている光景を見て感心した様に声を出した。
どうにかしようとしているが手が言うことを聞かないようだ。
あの虚は何やら種子の様なものを人間に打ち込んで操るというの能力らしく面白いものを見つけた事に璃鷹は喜んだ。
楽しくなりそうだとその方向に視線が釘付けになる。
が、しかしその後直ぐにある光景を見て璃鷹の熱が冷めた。
最初こそ期待を裏切り生徒を洗脳させるという劇に感心していたが途中、意識が消える瞬間を見て再び期待度が下がる。璃鷹は下で繰り広げられているソレを退屈そうに頬杖を付きながら観覧していた。
「分かってないなぁ」
ため息混じりにそう呟く。
だがしかし当初の期待通り、生徒達が虚に殺害されることは確実だ。一護か石田がここに来ない限り変更はないし璃鷹は彼女達を助けない。
──イレギュラーの介入を除いては。
「…?」
織姫の周りには小人のようなナニカが複数飛んでいる。
それは死神の力でも、滅却師の力でもないのは見てとれた。
「確認する必要があるね」
璃鷹は手すりを超えて屋上から飛び降り真っ直ぐ織姫の近くに落ちた。