・テーマ:尻尾ハグ
─黒鹿毛敬語ちゃん─
「うー、寒っ……暦の上でもう春のはずなんだが」
まだまだ夜から朝は冷え込む今日この頃。俺は朝一番に何をしてるのかと言うと、必要な物を買いに出掛けていた。食料と日用品、そして……0.03mmのコレ。
『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』というボタンを押して、あにまん民である俺の家に突然現れた元男のウマ娘。俺はその日のうちに彼女で童貞を卒業した。
「強制的にエッチ」というのが定期的にしなければいけないのかは知らないが、あちらからお誘いがあるので避妊のためにゴムが必要と言うわけだ。
正直、満更ではない。黒髪ロングで巨乳の美少女ウマ娘とうまぴょい(意味深)なんて拒否できる人間の方が少ないと思うし、最初こそ行為後に蹴飛ばされて死にかけたが、それ以降はなるべくこちらを気持ち良くしようとしてくれるし。まあ普段の態度は素っ気ない感じなのだが。
「ただいま」
「あら、もう帰ってきたんですか」
顔は無表情で声色も平静なようすだが、尻尾は飼い主の帰りを待っていた犬のように左右に揺れ動く。1コマのマックイーンではないが、尻尾は素直というやつだ。
「寒かったぞ外、もう3月なのに……ん?」
そうやって愚痴ろうとすると、ふわふわした温かい感覚がして…見てみると、黒色の尻尾が腰に巻き付いている。いつの間にか彼女が側に来ており、抱き付いてきた。
「なんだなんだ、どういう風の吹き回しだ?」
「……勘違いしないでください、あなたに風邪を引かれて移されたら困るから暖めてあげるだけです」
「……そういうことにしておくよ」
なんだよツンデレか。見た目は大和撫子系ヒロインっぽいのに。俺は荷物を置いて、頬を赤らめる彼女の頭を撫でてしばらく体を寄せ合うことにした。
─栗毛京都弁ちゃん─
「で、次はどこ行くんだよ」
「せやなぁ……どないしましょか」
俺は今、ある日突然現れたウマ娘とお出かけをしている。デート……と言えば聞こえがいいが、実際はただタカられるだけの外出だ。相手はウマ娘であり、パワーでは勝てないから大人しく言うことに従うしかない。
そんな沈んだ気分でいると、背中をつぅーっとくすぐられる。
「うあっ!?」
「あら、そないな声あげてどうしたんです?」
「いや、どう考えてもお前だろ」
クスクスと笑う彼女の栗毛色の尻尾は俺の後ろに回されており、犯人が誰かなんて言うまでもない。
「ウチみたいな美少女とおるのに、しけた顔しとるんが悪いんですー」
お前のせいだよ、と言おうとすると尻尾を腰に巻き付けられ、いわゆる尻尾ハグの状態になる。
「なっ……」
「人前やから静かにしててください、ね?」
そういってウマ娘は人差し指を口元に当ててウインクする。その仕草の愛らしさに俺は何も言えなくなる。クソ、見た目だけなら最高なんだけどなぁ。
「……あ、そうや。次に行く場所決まりました」
「そうか?そろそろ懐が寂しくなってきたから安く済ませてくれよ…」
……なお、そうして連れていかれたのは休憩7000円のホテルだった。財布へのダメージ考えろよおい。
─芦毛元兄ちゃん─
「姉さん……その……」
「なに?」
「膝貸してほしい…」
「また?しょうがないわね」
あたしがウマ娘になってから、弟はしばしば甘えてくるようになった。
───弟はあたしと違って優秀だ。三年生を前にして、両親が旧帝大への合格を期待するくらいには。ただそうは言っても精神面ではまだまだ子供を抜けきれておらず、プレッシャーに押し潰されそうな時もあるようで。
「姉さんの膝枕……安心する……」
「いつもこうやって素直なら可愛げがあるのに」
「うるさいな」
「はいはい、大人しくしてなさい」
尻尾で弟の胴囲を包み、頭を撫でる。ウマ娘になる前はぶつかってばかりで、こんな風に二人でゆったりとする時間を過ごすことはなかった。そう考えると、ウマ娘になったのも悪くないかなと思ったりもする。
「姉さん……」
「なに?」
「姉さんの体、柔らかくて……勃ってきた」
「何が勃ってきた、よ。バカ」
ボタンの条件だから仕方なく、あの日だけの関係ということにしていたけど……実はあれからも何度か、姉弟でシている。
弟は高校生らしく性欲旺盛で、普段は勉強漬けで溜まっているのか、親が外出などでいないタイミングを見計らってあたしに迫ってくる。あたしの方も長い間シてないと体がうずうずしてくるから、それを抑えるためにも乗ってあげているのだ。
「……1回だけよ。いつ母さんが帰ってくるか分からないし」
父は仕事、母はスーパーへ買い物に行っているが戻ってくるまでそう長くはかからないだろう。
あたしは椅子にかけてある自分のポーチからゴムを取り出す。どちらも学生で、何よりも実の姉弟だ。妊娠なんてシャレにならない。
「いつも通り、ちゃんと着けてね」
「ああ…」
弟がゴムを着けたのを確認したら、ベッドに横になって後は身を任せることにした。