もう1人の滅却師

もう1人の滅却師

スレ主

目次


「結っ局!!また虚いなかったじゃねぇかよ!! 昼間のも!今回も!」


夜、ルキアの伝令神機の指令を受けて向かった先で一護は大声を出して不満の声を上げた。


「うるさい!!さっさと体に戻れ!」


物陰に隠していた一護の体を引きずりながらそう言ったルキアの言葉にため息をつくと「用事あるとか言ってたし今回わざわざ璃鷹呼ばなくて正解だったな…」と呟いた。

一護は自分の体に戻りながらルキアの方向を向いた。


「いいかげんホントどうにかしろよ!」

「私のせいだと言うのか!?私は伝令神機に入る指令のそのままを貴様に伝えているだけだ!!」

「だからそいつを治せっての!!」


完全に体に戻った瞬間だった「仲間割れかい?」と声が聞こえて2人はビクリと体を震わせる。


「みっともないな」


しかしその声の本人はそれを気にする事なく言葉を紡いだ。

その声の人物は白い服装に身を包んいた。男は自分たちの名前を言いながら挨拶をした。


「こんばんは 黒崎くん 朽木さん」

「…誰だおまえ? へんなカッコしてんな 神父か?なんで俺らの名前知って…」


少し警戒心を出しながら一護は男にそう言った。しかひその先の言葉が出る事なく「あっ」と男が声を出した。


「新しい虚が来たね」


一護の問いに答えることなく男はそう言った。


「!!」


それと同時にルキアの端末から音が鳴った。


「ほ…本当に来た!!指令だ!!」

「ど…どっちだ!?」

「あっちだよ その程度のこともわからないで…キミはそれでも死神か?」


慌てている一護達に、男は指を刺して虚の位置を2人に教えると男は手の十字の滅却師クロスを使い素早く弓矢を形成する。


「疾ッ!!」


霊子の矢を放った瞬間、その軌道の先の虚を男が射抜いた。


「反応が…消えた……!」


手に持っている端末を凝視しながらルキアは驚愕した。そして男が先程放った弓、ルキアはそれに見覚えがあった


「‥あれは鳶栖と同じものか‥‥!!いやしかし形状が‥」


目の前の男は弓のような物を形成していたが自分たちの知っている人物のソレは鞭から放たれた斬撃の様にして飛ばしていた。


「な‥‥‥何なんだおまえ‥‥!?」


一護が困惑しながらもそう問うと男は答えた。


「…彼女から僕の事は聞いていないのかい」


「彼女‥?……まさか…」


男は続けて答えた。



「石田雨竜 ──〝滅却師〟──」



「滅却師…っ!?」


璃鷹についこの間2人に話したその単語に一護が反応した。



「───僕は 死神を憎む。」






***





「♪」



上機嫌で鼻唄を歌いながら璃鷹は何かを準備している。タイル面の床には血が夥しく滴って璃鷹の足の裏を汚しているのだがまだ幾分か生暖かい血液に嫌悪感を示すことなく作業を続けている。その近くには切り取られた薄暗い浴槽には何度も失敗して刃を立てたのだろう。不揃いな状態で千切られた様にギザギザとした断面になっている。


「均等にしようと思ったのに‥やっぱりこの手の作業は向いてませんね」

「ん、っ!んッ〜!!!」


何かを口に出そうと精一杯声を絞り出そうとするが出てくるのは空気を吸った事に出てくる呼吸音のみだった。口からは血の泡がぼこぼこと吹き出した。濁っていた目は更に光を無くして痛みから白目を向いている。



女に向かって「しー」と璃鷹は唇に人刺し指を当てて小さな子供に言うことを聞かせる仕草で黙らせる。

そのまま女の首に注射器らしい器具を近づける。それを見た女性が再び身を捻って逃げようと試みるが女が激しい動きをしたせいで再び浴槽に血液が溜める。

それを見て璃鷹は一笑すると首を掴んで動きを止めさせる。


「暴れると中で針が折れて痛いですよ」


その言葉にピタリと動かなくなった女に穏やかな笑みで璃鷹は迎えた。そのまま首に針を突き刺すと中の薬品がどんどん女の中に入っていく。


「今鎮静剤を打ちました」


その言葉に耳を疑っていると「気絶でもしたら大変ですから」とその行いが善意からだとでも言うようにして女に言った。

どうやらその言葉は虚偽ではなく本当のようで次第に痛みが引いていく。段々と穏やかになっていく顔を見て璃鷹は準備が整ったとでも言うように手に新品のゴム手袋を掛けた。


「では貴方が本当に神に愛されているのかこれから確かめましょうか」


痛みがないせいか先ほどより動きが激し、まるでコンクリート上で焼かれている芋虫のような姿だった。

血が勢いよく噴き上げるが鎮静剤のせいなのか女はそれに気づかない。


「ご安心を、痛みはありませんよ」


その30分後、璃鷹は一呼吸付いて浴槽に沈められたその肉塊に話しかけた。


「良かったですね、貴方は神に愛されていた」


「この行為は貴女が愛されていた証明になりました」と璃鷹は死体の横でシャワーを浴びると浴室から出た。タオルで水分を拭き取ると上は可愛らしい寝巻きなのだが下はそれとは別の短パンを着ていた。見れば上下が違うことがわかるが大して可笑しくはない姿。

服を着替えると机に置いてあった新聞を手に取りその一面に注目した。



「書いてる事は水色くんが言ってた事と大差ないなぁ」


その記事には大きく一面に〝大学生の不審死〟と書かれている。

そうして内容を流し目で見ていると近くに置いてあった携帯の着信がなった。


「?一護からだ」


──今日は用事があって無理だと伝えた筈だが…、と璃鷹は新聞を置いた。一護の性格から見て何か不祥事が起ころうと基本一護は周りを頼らない。予め今日は予定が入った為無理だと伝えていたがならば今回はそれ程の非常時という事になる。


「それだけの何かがあったのかな」


──あの死体をどうしようか。直ぐには腐らないだろうから明日学校に行っている間に“彼ら〟を出してやらせようと考えて机に置いた新聞をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に投げ込んだ。そして璃鷹はもう直ぐ来るであろう一護たちを待って玄関に向かった。

暫くすると死神化した一護とルキアが少し汗をかきながら急いでやってきた。


「待ってたよ2人とも」


璃鷹は2人を出迎えるとそう言った。ルキアは少し気まずそうにして「‥すまないな夜分遅くに」と呟いた。


「その、聞きたいことがあってよ」

「それよりまず中に入りなよ。お茶は出せないけど」


璃鷹は2人を誘導して部屋に入れ、椅子に座らせた。


「それで話って何?」


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