青春

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スレ主

目次


期末考査が終わり、帰りのホームルームで教師の話が終わると男は急いで教師から飛び出した。


「なぁまだ鳶栖さんいるっ!!??」


男は息を切らせて教室の扉の近くで友達と話していた女子に声をかけた。いきなりやって来た来客に少し困惑しながら「し、知らない」と答えるとまた廊下を走り出した。

少し廊下を走ると目当ての人物がそこに居た。薄い水色の髪を窓から溢れる風に揺らす後ろ姿を見つけた。そうして「鳶栖さん!!」と男は少し大きな声で呼び止めた。

男は璃鷹が返事を返す前にこちらに駆け寄って来る。廊下を歩いていた璃鷹は黒髪の男に声をかけられ足を止めた。

──この人物は誰だったかと‥と璃鷹は思考を巡らせた。

同じクラスの同級生かと思ったが顔が中々ピンと来ないので恐らく他のクラスの人物なのだろうと考えた。


「良かったぁ…もう帰ったかと思ったよ」

「?何かな」


安堵感から態とらしくホッと息を吐く男に璃鷹は内心足を止められたことに面倒くさいと感じながら用件を尋ねた。

その数秒後息を整え終わった男が答えた。


「その、今日期末テストが終わっただろ?だからお疲れ様会ってことでうちのクラスの奴ら10人くらい集めて今日カラオケ行くんだ」

「へぇ楽しそうだね」


社交辞令でそう告げると嬉しそうしている。


「だろ!!だから鳶栖さんも良かったら一緒にどうかなって」


少し興奮気味にそう男は答えた。恐らく璃鷹が今自分が誘ったソレに興味を持ったと思ったのだろう。普通ならば断っているところなのだが今回は少し悩んだ。なにしろ最近は全く趣味を行っていないせいなのかやけにソレが魅了的に聞こえる。

ならば──彼らが帰る時間に誰か良さそうな人物を誘って遊ぶのもいいだろう‥‥。

そう璃鷹は一瞬考えたが直ぐに冷静になった。同じ学校の人物では足が付く心配があり、またその犯行日に被害者と一緒に居たなどと証言さえれれば自身もまた疑われるのは目に見えていた。

ならば今回は少し惜しいが他のを探して諦めようと璃鷹は男に返事を返した。


「うーんでもクラス同じでもないのに私が行っちゃったら迷惑じゃない?」

「全然大丈夫だって!むしろ隣のクラスの話したことない人と話せて友情?を深めるチャンスだよ!!」

「今日用事あるからなぁ‥ちょっと厳しいかな」

「いやそんなこと言って絶対暇でしょ」


そう渋ってくる男は璃鷹がもう行くことが決定したように「それで二次会は俺の家でする予定なんだけどさ」と携帯を弄って家の住所を見せてきた。


「‥ちょっと男の人と遊ぶの抵抗あるからやっぱり無理かな」

「でもあの黒崎?とか他の奴とも良く連んでるじゃん」


少し押し黙ってそう答えた璃鷹に男はそのまま畳み掛ける。


「まぁ一護は特別だからね」

「えぇ何そ「ちょっと!!」


男の言葉を遮って丁度タイミングよくたつきが現れる。たつきはすごい剣幕で相手に詰め寄った。


「げ、」


男はどうやら一方的にたつきのことを知っているようでその姿を見た瞬間狼狽し始めた。


「アンタね誰だが知らないけど鳶栖さんに言い寄ってるんじゃないわよ」

「別にそんなつもりじゃ」


それを聞いたたつきはため息を吐きながら「さっきから見てたけど鼻の下伸ばしといて何言ってる訳?」と責め立てる。その言葉で図星を突かれた男は負け惜しみのようにたつきに向かって声を出した。


「あ、アンタに言ってねぇから別に良いだろ!!」

「そうじゃなくて嫌がってるのに無理やり催促してたのが問題なの!!」

「嫌がってねぇよ!!!」


そう大声で言った後たつきはこちらに方向を変えて璃鷹に問いかけた。


「鳶栖さんこの人の名前知ってる?」

「今日初めて喋ったからちょっと分からないな‥ごめんね」


璃鷹は悩む素振りを見せてから期待している男に言った。その言葉を聞いて「うっ」と呻く男にたつきは話しかけたこともない奴がなぜ覚えて貰えてると思ったのかと呆れていた。


「当たり前でしょ何ショック受けてるのさ」

「そ、それならこれから仲良く!!なって‥いけ、ば」


しかし男はへこたれることなく璃鷹に言葉を続ける。しかし途中で男はたつきの顔を見て固まったまま動かなくなった。


「‥いい加減にしないとあたしの拳が火を吹くわよ」


たつきはそのまま男に近寄ると拳を見せて威嚇した。それを見た男が「ひっ、」と情けない声を出して急いで階段を降りて逃げて行った。すると物陰から織姫が急いで2人に駆け寄ってきた。


「たつきちゃん鳶栖さん大丈夫だった?!!」

「井上さん」


──なぜ彼女が?、そう思っているとたつきが横から声を出した。


「私が隠れててって言ったの、ほらこの子可愛いから着いてきたらナンパされると思って」

「た、たつきちゃん」


それを聞いて璃鷹は「確かにそうだね」とたつきに同意した。美醜観念にはあまり詳しくない璃鷹だが一般的な感性、そして周りの反応を見ても織姫の顔立ちは整っているのだろうと考えたからだ。

少したってから先ほどたつきに助けてもらったことを思い出しす。璃鷹は感謝を伝えた。


「有沢さんさっきはありがとう。凄くかっこよかった」


たつきに感謝を伝えた後、本人が返事をする前に「でも」と璃鷹は言葉を続けた。


「次からは先生を呼ぼうね。有沢さんが強いのは分かってるけど可愛いから心配なの」


それを聞いて顔を赤らめながら「か、」と擬音を出すたつきに織姫は元気よく声を出した。


「うん!たつきちゃんは鳶栖さんの言う通り可愛いよ!!」

「お、織姫っ」

「もしかして照れて「ない!!」


織姫が顔を覗き込見ながらそう言うと少し声のトーンを大きくしてたつきが言った。あらかた後「そろそろ私帰るね」と一言2人に告げた。


「あ、そういえば用事あるんだっけ‥引き止めちゃってごめんね」

「え、そうなの‥?ご、ごめんね私ったら!!時間大丈夫?もしかして遅れちゃった?」

「全然平気だよ、それにさっきの嘘だから気にしないで」


そう言って鞄を持ち直すと一階に続く階段の場所に歩き出した。


「じゃあ2人とも気をつけてね。たつきちゃんもさっきはありがとう」

「ばいばい!!鳶栖さんも気をつけてね!!」


織姫は笑顔で手を振る横でまだ顔を赤らめているたつきもゆるい動作で手を振った。

璃鷹は校門を出るとそのまま家とは逆方向に進んで行った。

たつき、織姫と別れた帰り道、本来であれば一護たちと共に虚退治をしているか一護の家で勉強を教えられている時間だが今回は違う。璃鷹はメールで一言一護とルキアに断りを入れてから下校中1人で当たりを見渡しながら久しぶりの1人の時間をどう使おうかと考えていた。


「どうしようかな」


他人から見ればこれから寄り道をしようか家にまっすぐ帰ろうかという女子高生特有の独り言に聞こえているか多少道に人がいるのだがその独り言に不信感を出す者は居ない。


(でも今遊べそうなストックは残っていなし)


近場では学校が狩場として比較的気軽でいいのだがそれでは発覚のリスクが上がってしまう。

どうしようかと頭を悩ませていると今まさにその通りの一軒家の玄関で女の人が何やらパンフレっトのようなものを持って叫んでいた。過激ではあるが恐らく宗教勧誘の関係者なのだろう。

璃鷹は何かを思いついた様にしてその家の敷地に入って女性の後ろに立った。

行き玄関の前でまだ「神は慈悲深いから貴方たちを見捨てないッ!!」だとか「信じていれば救われるッ」と扉を激しく叩いては狂った様に叫んで最後はそれでも出てこない家の主人を見て諦めたのか一旦今まで行っていた猛攻を止めた。


「主は何があっても貴方達をお救いにはならない‥天使の使者である私の言葉を信じないならばいずれ貴方達は地獄に堕ちるでしょう」


狂人の様に涙を流しながら最後には近くに置いてあった子供用のアニメのキャラクターが描かれている傘の布部分を破いてそのまま傷だらけになって凹んだ扉にソレを投げつた。

扉はその衝撃で更に傷を増やした。


「すみません」


女はようやく後ろに立っていた璃鷹に気づいた様で怪訝そうな顔をして濁った目をこちらに向けてきた。

女は慣れているのかすぐに璃鷹に向かって恨めしそうに呟いた。


「‥なんですか警察を呼ぶなら」


「いえ、そうではなくその活動に興味があるので詳しく知りたくて、」


それを聞いた女が先程の刺々しい表情とは思えないほどの喜悦の色を浮かべた。


「あら!!若いのに推敲な思考を持っているね!!」

「恐縮です」


そう言って女性を誘導すると家の外の方向を指を刺して


「家まで着いてきて頂きたいのですが‥よろしいですか?」

「えぇ!主の救いを求める者には慈悲の精神を持って教えを授けるのが私の勤めですから!!」


それを聞いた璃鷹が「信仰が深いんですね」と答えると女性は嬉しそうに笑っている。

そして女性が足を進めながら「それでお家はどこなのかしら」と璃鷹に尋ねる。


「それがその‥今直ぐお話をお聞きしたいのはそうなのですが生憎と用事がありまして」


そう言って申し訳なさそうに答えると──璃鷹は住所を書いた紙を女の方に差し出した。女性は冷やかしかと思い罵声を浴びせようと口を開きかけたが「ですが」と言ったその後の璃鷹の言葉を聞いてその罵声を吐き出そうとした口を閉じた。


「こちらに住所を控えているのでもし良ければ今日の夜にでも来ては頂けないでしょうか?」

「えぇ分かったわ!!すぐに伺いますね!!」


──脳がある事に一色になった人間は操りやすくていい、と子供の様に笑っている女性の顔を見て返事は聞かずに璃鷹は微笑んだ。


「──待ってますね」


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