当然、彼の中の彼らも悔やんだ

当然、彼の中の彼らも悔やんだ


サービス精神』と同じ設定で、時系列的には添い寝大会よりも前のイメージです。

若干のキャラ崩壊と口調に注意。

IFローは出てきません。


 











 他の世界のローの中にはクルー達が存在し、代わる代わる表に出ている。誰が出るか順番は一応決まっているらしい。しかし、一日に何度も入れ代わることもあるし、この世界のクルー達に呼ばれて別の人が表に出ることもある。

 何より、彼らは誰が表に出ているのかあまり口にしない。そのため、どのような順番になっているのかは彼らにしかわからない。

 誰が表に出ているのか口にしないと不便かというと、別にそうでもない。この世界のハートの海賊団のメンバーは、ある程度彼らと時間を過ごせば口調や所作から誰なのか何となくわかるため、その問題はなかった。

 ちなみに、この世界の彼らでも表に出ているのが誰なのか一目でわかることはほとんどない。ペンギンとシャチのように長い付き合いがあれば別だが、基本的にある程度会話が必要であった。

 ただ、そんな中で、一目とはいかずとも、数秒あれば誰かわかる存在がいる。

「あっペンギンにシャチだ!」

「「おっ今日はベポか」」

 そう、ベポである。他の世界のベポは会った瞬間に顔をほころばせるので、とてもわかりやすいのである。そして何より――

「久々に会えたからガルチュー」

 ――彼はこの世界のメンバーと会うと必ずガルチューをしていた。それゆえにガルチューをする=ベポという認識がついていた。


 ……当然だが、中身はベポでも外見は他の世界のローである。そんな状態でこの世界のクルー達にガルチュー、つまり抱き締めて頬ずりをしたらどうなるだろうか?

「「あぁぁ……」」

 答えは言葉にならぬ言葉を発しながらうずくまる、である。悶え苦しむならぬ萌え苦しむといったところであろうか。

 めったに見れない笑顔だけでも十分な破壊力なのに、それに加えてガルチュー。こうなるのも致し方ないだろう。

「……もしかして、嫌だった?すみません……」

「「いやいやいや!」」

 他の世界のベポがその様子を見てネガティブになったことに気づいた二人はあわてて立ち上がった。

「何回も言うけど!嫌じゃないから!」

「むしろめちゃくちゃ嬉しいから!今の反応は嬉しすぎるせい!!」

 立ち上がるやいなや、二人は必死に弁明を始める。萌え苦しむくらい嬉しいガルチューが自分達のせいで『嫌ならもうやめる……』となるのは何としてでも避けなければならなかった。

「……本当?じゃあもう一回ガルチューしてもいい?」

 説得もあって他の世界のベポは嬉しそうに顔を上げた。それを見て二人はは即座に両腕を広げた。

「「何回でもどうぞ!!」」

 その言葉を聞いて、満面の笑みで二人へ抱きついた。(そしてまた二人は同じような反応をした)


 二人の反応も相まって、他の世界のベポが表に出ていることがポーラタング号内に知れ渡っていった。『ベポのときはガルチューをしてくれる』ということが周知の事実であるため、彼の周りには続々と人が集まっていった。

「幸せ……」

「今なら死ねる……」

「中身はベポだからまだ意識が保てる……」

 そして、そんな言葉を口々にしながら、ガルチューをしたクルー達はうずくまっていった。最後に立っているのはガルチューに慣れているこの世界のベポだけであった。

「……何してやがる」

 やがて、この世界のローが若干あきれた様子でやって来た。彼はこの世界のクルー達が他の世界のローのところに行ったあと、何の反応もないことに気づいて心配してやって来たのである。いつもならうるさいくらいの反応があるため、そう思うのは自然だろう。

「き、キャプテン……」

「違う世界のローさんだ!」

「……ベポか」

 彼の存在に気づいたこの世界のクルー達は何とか起きあがり、他の世界のベポは笑顔でそちらへ向かっていった。他の世界のベポがあまり表に出ていないため、この世界のローと出会うのは初めてだった。

 そのため、当然ガルチューをしようとしたのだが……。

「おい、ちょっと待て」

 その前に両肩を持って阻止してしまった。数秒硬直したあと、腕をおろし、顔を下に向けた。

「おれ達のキャプテンとガルチューができるような気分になって……すみません」

 そう言いながら落ち込む他の世界のベポを見て、この世界のローは言葉につまった。

 他の世界のベポが彼のキャプテンとガルチューをすることはほぼ不可能である。そんな彼の願いを無下にすることは難しかった。

 そして何より、トラファルガー・ローという存在は、総じて弟分のようなベポに甘かった。

「……しょうがねェな」

 ため息をつきながら、この世界のローは他の世界のベポの背中に腕を回し、頬を寄せた。その意図に気づいた他の世界のベポは喜色満面となり、彼へガルチューをした。

 ……何度も繰り返すようだが中身はベポでも外見は他の世界のローである。つまり、絵面だけを見れば、この世界のローと他の世界のローが抱きついて頬ずりをしているということになる。

 その光景を見た瞬間、この世界のクルー達に衝撃が走った。

 のちにこの光景を見たものは語る――

 ――あの光景に比べればレイリーの覇気なんて大したものではない、と。

「ここがラフテル」

「死んだかもしれない」

「ベポだから耐えられたけどキャプテンだから耐えられなかった」

 まだ余力のあったものは言葉を、ないものはただ黙って昏倒していった。ガルチュー耐性のあるベポもこの尊さには耐えられず、倒れてしまった。

 やがて、ガルチューをしている二人以外に立っているものはいなくなった。

「……本当に何してやがる」

 いつもより少し長いガルチューが終わったあと、この世界のローが困惑したのは言うまでもない。


 ……ちなみに、正気に戻ったあと、この場に居たものは映像を残さなかったことを悔やみ、居なかったものは見れなかったことを悔やんだ。








以下後日談

IFクルー達は出てこないけどIFローは出てくる

結構暗めなので注意!















「おまえが、うれしいなら、おれともするか?」

 ガルチュー事件から数日後、たどたどしい口調で他の世界のローその人はこの世界のベポに問いかけた。最初こそ何もできなかった彼だが、リハビリのかいあって起き上がって会話をする程度は可能になっていた。

「このまえの、はなしは、おれのなかで、きいた……うれしいなら、おれはいくらでも」

「……いいの?」

 この世界のベポは嬉しそうに問いかける。そこにはガルチューができること自体に対する喜びもあったが、触れることを拒んでいた他の世界のローの成長に対するものもあった。

 ベポの様子を見ながら、他の世界のローはまだ慣れていないながらも口角を上げて頷こうとした。

「ダメだ」

 そのとき、この世界のローが横から口を挟み、明確に拒絶した。この世界のベポと他の世界のローは彼へ振り向く。前者は疑問を、後者は困惑を顔に浮かべていたが、それを訂正する気はさらさらなかった。

 なぜなら、この世界のローは感覚共有で知っていたからである。

 他の世界のローが感覚に慣れきっておらず、まだ過敏になっていることに。

 ……そして、向こうの世界で受けた仕打ちのせいで、触れ合いには不快感が伴うことに。

 ベポを納得させるには、この事実を伝えてしまうのが一番早い。しかし、『これ以上迷惑をかけたくない』という思いをこの世界のローは最大限尊重していた。……クルー達を不安にさせたくないという思いが少なからずわかってしまったからである。

「……まだ、辛ェだろ」

 だから言葉にするのは、詳細はわからずとも意図は伝わる程度にした。

 それを聞いて、ベポは他の世界のローへ向き直した。彼からわずかに怒っている様子が感じられた。

「ローさんが辛いならおれはしない」

「……え?」

 ベポがキッパリ言い切ると、他の世界のローから表情が消え失せた。

「べつに、おれは」

「おれが嬉しいならそれでいいなんて言わないで。ローさんが幸せじゃないと意味がない」

 冷や汗を流しながら弁明しようとしたが、言いたいことを先回りされて終わった。言い分はベポの方にあるのだが、他の世界のローにはそれが理解できていなかった。

「なんでわかんないの!おれ達は」

「ベポ、やめろ」

 このままだと恐慌状態になると判断したこの世界のローがベポを止めた。その声で少し冷静さを欠いていたベポも落ち着きを取り戻した。

「ごめんね、ローさん」

「いや……わるいのは、おれだ」

 何が悪いのかもわからないのに自省する様子にこの世界のローは眉をひそめた。もっと言葉を尽くすことはできるが、理解できるかは別だ。

「おれからお前の方は知らねェが、お前からおれへの感覚はよく伝わる……意味はわかるな?」

 だから、せめて不快に感じることは避けるように誘導した。

 自分のせいで誰かが嫌な思いをする。これを他の世界のローが何よりも恐れていることに、この世界のローは疾うに気づいていた。

「す、すまねェ」

 案の定、他の世界のローは青ざめながら謝罪した。こんな思いをさせるのは業腹だが、あんなことをするよりはずっとマシだとこの世界のローは考えることにした。

 ベポの言葉を理解するためには、彼から奪われたものを取り戻す必要があった。そして、それは一朝一夕でできるものではない。そんな今の彼にはこれを理解するのが精一杯だ。


 だから――

「それなら、おれは、どうすれば……」

 ――二人が立ち去ったあと、そう呟いたことにこの世界のローは感覚共有で気づいたが、聞かなかったことにしてあげた。












以下おまけというか捕捉というか……

自分の書いたやつだとIFミンゴ手を出してるのか書きたいけどレス消費するのもな……と思ったのでここに投下

触られるのに不快感が走るとか書いちゃったし














 『サービス精神』世界線だとどっちもあり得る、と思ってる。ただ、どっちにしても抱き締められることはあった。

 抱き締められるのって言い方が悪いけど『腕を拘束されて身動きが取れない状態』だから、無理やり何回もされたら同意なく体に触られるのが嫌になると思う。

 それはそれとして手を出されてるから辛いっていうのもシンプルでいいなとも思ってる。


 なら、『ひょうそう』、『しんそう』世界線だとどうなのかというと……。『コラさん』の人格ができたあとなら手を出されてるのはわりとあり得るな、と。

 ある程度体に激痛が走ると『コラさん』が表に出るというのは、逆に言えば激痛が走らない限り『コラさん』は出てこない(出てこれない)ということなので……。本人格のローさんだけを苦しめるために拷問以外の方法を使ってきそうなんだよな……。

 ただ、そんな気分でやるからIFミンゴ自身が、というよりはイトでこう……色々してるイメージ。



 そもそも自分が書いてる世界線の場合、IFミンゴは欲情してるのか?問題がいつも立ちはだかる……わからん……

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