小僧無様かるたで遊ぼ!〜前編

小僧無様かるたで遊ぼ!〜前編


序章

※小僧無様まだ2分目くらい

※ネタお借りしました、良き無様に感謝

part5 >>53

※おや…伏黒の様子が…?





かくして伏黒恵への受肉を賭けた、虎杖の無様イキかるた勝負は始まった。

しかし開始早々虎杖は難局に立たされていた。


「【わ】、わんわん。いかせてくださ、い、わんっ。ちんち……ちん……」

「おい、さっさと読め虎杖悠仁。宿儺様をお待たせするな」

「虎杖。そのちんちんは犬を立たせる芸のちんちんであってシモじゃねえだろ」

「伏黒真顔で引用してツッコミ入れてくんのやめてェ!」


読むのが恥ずかしい。

単純かつ根本的な問題だが、宿儺の主目的はここに詰まっている。

恥ずかしいセリフを言わされる無様さ。しかも見ず知らずの綺麗な人(裏梅)と親友に聞かれているというのが最高のスパイスとなっている。

読み札から目を背けると伏黒と視線がかち合い、「ヒッ」と情けない声が出てしまう。


「あ、あの、伏黒さん」

「オマエ、下ネタに本気で照れるようなタイプじゃなかったろ。……つーことはやっぱり自分のことだからいたたまれねえわけだな、これ」

「じっくり見んのやめて……」

「悪いがそれはできない。負けるわけにはいかねぇからな」


伏黒は並べられたかるたを凝視する。その顔が至極真剣なのがまた、いたたまれなかった。


絵札を並べたときもそうだった。

裏梅が並べているのを制止して「ゲームを持ちかけてきたそっちに絵札を並べられちゃ、絵札の位置を把握するイカサマをこっちは疑わざるを得ない。ここは公平を期するために虎杖に並べさせろ」と至極真面目に言い放った。

虎杖は自分のイキ顔50選を一枚一枚しっかり見ながら並べ直す羽目になったのだった。


わざとやってんのかな…と恨みがましい気持ちになって伏黒の横顔を見ていると、頬にニュ、と宿儺が浮かんで裏梅に話しかける。


「裏梅、分かったか?」

「これ、でしょうか?」

「それは【わ】ではないな」

「くっ、失礼致しました。虎杖悠仁無様エロへの造詣が浅く」

「良い良い。知った上でお前を参加させている。で、それを選んだ理由を聞かせろ」

「は。このだらしなく舌を出し涎を垂らして悦んでいる様が犬畜生のように見えましたので」

「悪くない洞察だ。事実この小僧は犬に犯されているかのように四つん這いで張形を受け入れていたときの写真だからな。見てみろ笑えるぞ。なんと情けない。まるきり雌犬だ」

「確かに……口元が特に、フッ」

「似てるだろう!?」


ウフフフフフフフ…

ゲラゲラゲラゲラ…


最悪の雑談を繰り広げられている。

虎杖の目からハイライトが消えかけた、その時。伏黒が顔を上げた。眼差しにキラリと光が差している。


「虎杖、勝機が見えたぞ」

「伏黒…!!」

「虎杖。本気で、そのセリフ言ってた時、どんなことされてどう感じたか思い出しながら読んでみてくれ」

「伏黒…!?!?」


伏黒は残念ながら依然として真面目な顔をしていた。


「あの裏梅って奴は虎杖には関心がない。だからお前の顔の判別はほとんどついてねえんだよ。さっき選んでた写真、選んだ理由は聞いたか?もっとちゃんと犬みたいになってるやつは他に何枚もあるのにあれを選んだ。たぶん全部似たようなイキ顔に見えてんだ」

「イキ顔って言うのやめろよ」

「一方俺はお前とは付き合いがある。心得はあるつもりだ」

「何の心得?」

「表情から何考えてるかが大体わかるってことだよ。オマエが恥ずかしい目に遭ってんのに俺が冷静だから、揶揄われてんじゃねえかって八つ当たりする気持ちになっちまってるのもわかってる」


虎杖はハッと目を見開いた。

伏黒の鋭い視線が身に突き刺さる。


「オマエを辱めたいわけじゃねえ。俺たちは絶対負けるわけにはいかねえんだ。俺だけじゃねえ、オマエの力が必要だ。いいか、俺もさすがにイキ顔なんて知らねえからパッと見区別はつけられてない。けど実物が目の前にありゃ同じのがどれかわかると思う」

「伏黒……」


恥も、迷いも、何もかも消えたといえば嘘になる。

けれども友人にほんの一時抱いてしまった、見当違いな恨みだけは、喉奥で感じる苦味のあとに失われた。


「まずは俺を助けろ、虎杖」


虎杖の眼差しに伏黒と同じ光が灯る。

友人の言葉に、震える唇を噛み締めて力強く頷いた。




後編につづく


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