モテモテパニック!?
モテパニ作者拓海「はぁ」
拓海は項垂れていた。幼馴染のゆいとの関係がいまいち進展していない事についてだ。
ブンドル団との戦いのまえに比べればかなり近づいた気もするが、後一歩二歩足りないのが否めない。
拓海「もっと好かれる男になりてえ…」
その日拓海は気まぐれでいつもと違う道から帰る事にした。
すると、デリシャストーンが反応を示す。
拓海「なんだ…?」
その反応に従って足を運ぶと、そこにあったのは。
拓海「デリシャストーン!?なんでこんなところに!?」
驚いた拓海はつい迂闊にそれに触れてしまい、デリシャストーンは眩い光を放った。
拓海「なんだ…?」
光が止み、目を開けるも特になにか起こった様子は無い。拾ったデリシャストーンもおとなしくしている。すると周りから光を見た通行人が何人か近寄ってくる。
拓海「やべ、なんとかやり過ごさねえと」
弁解しても泥沼になりそうなので素知らぬ顔でその場から立ち去ろうとすると。
女性A「ねえあの子…」女性B「うん…」
拓海「(なんだ…?)」
周りが余計ざわめき始める。嫌な予感が…
女性A「カッコいい〜!」女性B「なんて素敵な男の子〜!」男性「ウホッ、いい男」
周りの人間は拓海を見ると目の色を変える。明らかに普通の状況ではない。危険を感じた拓海はその場から全力で逃走した。
〜〜〜
拓海「はぁっはぁっ、なんだいったい。やっぱりこのデリシャストーンが?」
追ってくる人々から逃げ切り人のいない路地裏までやってきた拓海。逃げてる途中も目が合った相手が追跡者に加わるなど途方もない鬼ごっこであった。
???「拓海?」
拓海「うわ!ってゆい…」
後ろからの声に驚くと、そこにいたのは幼馴染のゆいがいた。
拓海「なんでこんなとこいるんだ?」
ゆい「さっき必死な顔して走ってる拓海見かけたから追いかけて来たの。拓海こそこんなとこで何してるの?」
拓海「それは…(ってゆいと顔合わせてるけどまさかゆいにも影響があるんじゃ!?)なあゆい、お前なんとも無いのか?」
ゆい「え?なんとも無いって?」
拓海「なんとも、無いのか?」
ゆい「うん。あ、でも拓海追いかけるため走ってきてはらペコッた〜」
ゆいに変わった様子は無い、それに拓海はホッとしたような残念なような気持ちになる。
拓海「はぁ…実はな、これ拾ったんだ」
ゆい「これってデリシャストーン!?」
拓海「ああ、これ拾ってから会う人みんなおかしくなるんだよ。お前が大丈夫なのはたぶんプリキュアだからだろうな。なんとかしないと…」
ゆい「だったらみんなも呼ぶよ!みんないればきっとなんとかなるよ!」
ゆいはそう言ってハートキュアウォッチで他の三人に連絡を取る。
拓海「あー、そうだ。ローズマリーにも連絡してくれるか?デリシャストーンの事ならあいつの方が詳しいだろ?」
ゆい「あ、そうだね。マリちゃん」
拓海に指摘されゆいはマリちゃんにも連絡を入れる。
ローズマリー『あらゆい、どうかしたの?』
ゆい「マリちゃん、実はこっちで大変な事になっちゃって。あ!でもあたしも詳しくはわからないから拓海に変わるね。拓海ー」
ゆいは拓海にハートキュアウォッチを向ける。
拓海「ローズマリーちょっといいか?」
ローズマリー『!?拓海くん…あなた…』
すると拓海と対面した瞬間マリちゃんの様子が変わる。嫌な予感が…
ローズマリー『しばらく会わないうちになんて素敵になってるの〜!こうしちゃいられないわ!今すぐ会いに行くから待っ…』
ゆい「マ、マリちゃん!?」
拓海「ゆい!今すぐ切れ!」ゆい「う、うん」
拓海に促され急いでゆいは通信を切る。
ゆい「マリちゃんいったいどうしちゃったの…?」
拓海「言ったろ?顔合わせると変になるって。クックファイターなら大丈夫と思ったんだけどな」
???「「ゆい(ぴょん)!」」
連絡を切ったのとほぼ同じタイミングでまた後ろから声がする。そこにいたのは。
ゆい「ここねちゃん!らんちゃん!」
ここね「なにか大変な事が起きたって聞いて飛んできた」
らん「途中でここぴーに会ったから一緒に来たよ。んでんでどうする?あまねん待つ?そのなんか大変な事すぐ解決しちゃう?」
ゆい「どうしよ?拓海」
拓海「あー、じゃあとりあえず菓彩を待…」
ここねらん「「!?」」
そして二人は拓海が振り向いた瞬間様子が変わる。なにやら既視感が…
ここね「拓海先輩…好き!」
らん「はにゃ〜男らしさマシマシ〜」
拓海「この二人までこうなるのかよ!ゆい逃げるぞ!」
ここね「待って〜、私にあなたを焼き付けて〜」
らん「ゆいぴょん!拓海先輩の独り占めは許さないよ!」
〜〜〜
ブラペ「ふぅ…なんとか巻けたようだな」
二人に追われた拓海とゆいは、行き場の無い路地裏なのもあって拓海はブラペに変身しゆいを抱え建物の上から逃走に成功した。
ここねとらんが現在プリキュアになれないのは幸いだった。
ゆい「まさかここねちゃん達までおかしくなっちゃうなんて。これからどうするの?」
(変身解除)拓海「そうだな、一応家の近くまで帰ってきたがこれじゃ母さんもどうなるかわかんねえし、どうしたもんか…ん?」
変身解除すると自分のデリシャストーンが点滅しているのに気づく。通信の合図だ。
出るか悩むが、ダメならすぐ切ればいいと応じる。
シナモン『拓海』
拓海「父さん!」ゆい「門平さん!」
シナモン『マリちゃんから連絡があったんだ。なにかあったのかい?』
拓海「連絡が合ったって、あいつ元に戻ったのか!?」
シナモン『元にか、やはりマリちゃんになにかあったんだね。残念ながらおそらくマリちゃんはお前が思っている状態のままさ。僕に連絡してきたのはお前に会うために僕のスペシャルデリシャストーンの力を借りたいという要件だったよ。正直らしくないと感じたから名が上がったお前に連絡したわけさ。何があったか聞かせてくれるか?』
拓海「あ、ああ」
〜〜〜
シナモン『なるほど、だいたい事情はわかった。拓海、お前は今超モテモテ状態になっている』
拓海「なんだよ!?超モテモテって!」
シナモン『言葉通りさ。お前が拾ったデリシャストーン、おそらくブンドル団が廃棄したスペシャルデリシャストーンの試作だろう。見たところ軽い暴走状態にある。話を聞く限りではお前と顔を合わせるとお前への好感度がとんでもなく上がるようだ』
拓海「…そういえば父さんやゆいはなんでなんともないんだ?ローズマリーや芙羽達もおかしくなったならクックファイターやプリキュアなのは関係ないんだろ?」
シナモン『そんなの簡単だ、もう上がる余地が無いからさ。僕は父親としてお前を愛してる。だから影響を受けないのさ』
ゆい「じゃああたしも同じ理由かな?もう拓海とは家族みたいなもんだし」
拓海はその言葉に複雑な心境になる。
嬉しくないとは言わないものの、この距離の近さも悩みの一つなのだから。
シナモン『とにかく、その程度の暴走ならお前でも抑えられるだろう。家に帰って集中して制御してみるんだ。僕が大丈夫ならあんちゃんも大丈夫だから安心するといい。それから最後にゆいちゃん』
ゆい「え、なんですか?」
シナモン『僕とゆいちゃんが拓海に向ける気持ちが同じかどうかはもう一度考えてみてくれないかい?』
ゆい「え…?」
シナモン『じゃあまた、事態が解決しなかったらもう一度連絡してみてくれ』
そう言ってシナモンは通信を切る。
そして残された二人には少し気まずい空気が流れていた。
拓海にはわかる、父が最後に言ったのは自分への応援だと。
ゆい「じゃ、じゃあどうしよっか…?」
拓海「あー、まあ父さんが言った通り家に帰るよ。それからゆっくり…」
???「二人ともこんなところにいたのか」
後ろから声が聞こえる、知ってる声だ。それにゆいだけ振り向く。
ゆい「あまねちゃん!」
あまね「まったく、約束の場所にいないと思えばきみ達の家の近くに来て正解だったようだ…ん?品田、なぜ顔を背けている?」
拓海「え!?いやーこれは…」
顔を合わせると惚れさせてしまうから。
なんていくら事情があっても健全な男子が同級生の女子になかなか言えるものではない。
そんな煮え切らない態度もあまねを苛立たせた。
あまね「人と話す時は顔を合わせろ、常識だぞ。それともなんだ?顔にできものでも作ったか?ケアを怠ったきみが悪い、さっさとこっちを向け」
ゆい「あ、あまねちゃんこれには…」
あまね「邪魔しないでくれゆい。さぁ!」
拓海「うわ!」
あまね「!」
強引に顔を合わせられてしまう拓海。
その直後一瞬硬直するあまね、ここにきてあまねまでもが…
あまね「…なんだ、いつも通りじゃないか、つまらん」
拓海「え…?」
しかしその予想は外れなにも起こらなかった。
拓海「菓彩、なんともないのか?」
あまね「なんのことだ?」
それに戸惑う拓海、訝しむあまね、しかし一番心を揺らしていたのはこの二人ではない。
ゆい「あまねちゃん…?」
ゆいだ。
先程のシナモンの言葉を聞き、拓海へ向ける感情の種類とその意味を考え始めた矢先のこれに誰よりも動揺していた。
ゆい「なんで、なんともないの…?」
あまね「…ゆい?」