モテモテパニック2
モテパニ作者拓海「母さん、ただいま」
あん「たっくん、おかえり。あら?ゆいちゃんとあまねちゃんじゃない。二人だけなんて珍しいわね」
ゆい「ど、どーも」
あまね「し、失礼します」
あん「?」
いつもと違ってぎこちない二人に疑問を抱くもとりあえず拓海に任せてあんは通す事にした。
拓海「父さんが言った通り母さんは大丈夫だったな、さて」
あまね「…ひとまずは聞かせてもらおうか。今の状況をな」
先程簡単にしか言えなかった説明を拓海の部屋で改めて詳しくする。
あまね「品田と顔を合わせると品田を好きになる?なにかの勘違いじゃないのか?実際私もゆいもきみの母君もなんとも無いじゃないか」
拓海「逆に言うとその三人と父さん以外みんなそうなってんだよ。しかも男でも関係ねえし」
ゆい「うん。あたしも見た。ハートキュアウォッチで連絡したマリちゃんやらんちゃんここねちゃんも」
あまね「で、影響が無い者の共通点が」
拓海「…父さんいわく、すでに、その、俺を好き、な、やつ?」
あまね「ずいぶん小っ恥ずかしいことを言うな」
拓海「うるせえ!」
あまねはからかうような事を言うが、顔に笑みは無い。
段々と苦虫を噛み潰したような顔になっていく。
あまね「品田、きみに非はないことはわかっているが、一言言わせてくれ」
拓海「あ、ああ…」
あまね「………反則だろう!それは!!!」
あまねは絶叫した。
普段のクールな姿からは想像できないほどに。
あまね「私が失言しただとか!態度でボロを出しただとか!そんなものは無くスペシャルデリシャストーンで私に影響が無かったのが証拠だと!?無いだろ!私に落ち度!」
拓海「お、おう…」
あまねは荒れている。
無理もない、隠していただろう気持ちがこんな形であばかれたのだから。
拓海「菓彩、俺は…」
あまね「待て、ふぅー、待ってくれ。私としてはバレてしまったのはこの際諦める。しかし今この状態で答えを出すな。せめてこちらから改めて答えを出させてくれ」
あまねはそう言って拓海に向き直り息を整える。
ゆい「あ、あたしはいない方が…」
あまね「いや、ゆいはいてくれても、いいやいてほしい。もちろんゆいがいいならな」
ゆい「そ、そっか…」
ゆいに止められるもあまねは改めて自身を整える。
深呼吸はもちろん、衣服の皺を伸ばしたり、髪を手櫛で整えたり、表情はいつも通りでも緊張しているのが全身から伝ってくる。
あまね「んっん。品田、私はきみを好きだよ」
拓海「!」
そう言われるのはわかっていても、やはり動揺してしまう拓海。
あまね「どうした品田?顔が赤いぞ。告白されるのは初めてか?」
拓海「い、いや。一回されたことは、ある」
あまね「そうか、それは残念だ」
しばし皆沈黙する。先程とは別種の緊張感だ。
そして…
拓海「菓彩、俺は…」
あまね「待て、返事はいらん」
拓海「え?」
あまね「何を勘違いしている?私はもう誤魔化せないから自分で話しただけだ。別にきみから返事をもらいたかったわけではない。どうせ答えはNOなんだろ?そんな返事はいらん」
先程までの緊張はどこへやら、あっけらかんとしていた。
あまね「それともきみはOKしてくれるのか?」
拓海「それは…」
あまね「だろう?(まあOKの返事もいらんがな)」
あまねの告白は改めて拓海を動揺させる。
拓海だけでなく、一緒にいるゆいも…
そして三人には再び沈黙がおとずれる、その沈黙を破ったのは。
あん「たっくーん、お客様よー」
拓海「え?客?」
母の言葉に応えようとする前に扉は開く。
ここね「拓海先輩♡」
らん「やっぱりここだったんだ♡」
拓海「芙羽!華満!あ!」
そこにいたのはここねとらん。
街で出会った多くの人物は拓海を知らないので街から拓海が消えればもう探す手段は無いが、元々知り合いである彼女達がここへ来るのは当然だった。
あまねの件で完全に後回しにしてしまっていたが、順番を間違えた。
スペシャルデリシャストーンを制御してからあまねと話すべきだったがもう遅い。
ローズマリー「ここねとらんだけじゃないわよ!」
ゆいあまね「「マリちゃん!?」」
扉のここね達に注目していると窓からマリちゃんが現れた。
拓海「なんでいるんだよ!?父さんは力を貸して無いはずなのに!」
ローズマリー「ブンドル団から押収した転送装置を使ったわ、無断で!」
拓海「おい!近衛隊長!」
しかもそれで終わらない。
騒いでいるとマリちゃんの後ろが光を放ち、そこから人影が見える。
セルフィーユ「ローズマリー隊長!職務を放り出した上に使用禁止の転送装置を無許可で使うなんて!さすがにクッキング様もお怒りですよ!」
ナルシストルー「ちっ、なぜ俺様達までこんな事に付き合わされねばならん」
セクレトルー「しかたありません。スペシャルデリシャストーンを持つローズマリー氏に対抗できる者はそういませんから、てゆーか近衛隊長が問題起こすなっつーの」
ジェントルー「ふっ、ローズマリーはこのジェントルーが止めてやるトルー」
スピリットルー「ローズマリー!おいどんたちとクッキングダムに戻るでごわす!」
パムパム「パムパムたちもいるパムー」
メンメン「クッキング様がプリキュアのみんなにも協力してほしいらしいメン」
コメコメ「ゆい、久しぶりコメー!」
拓海「なんでこんな時に限ってみんなくるんだよ!」
クッキングダムの知り合いがほぼ全員来ていた。もはやちょっとしたオールスターだ。
ゆい「コメコメ!見ちゃダメ!」
コメコメ「コメ?」
ゆいはとっさに自分に近づいて来たコメコメの目を隠す。
コメコメはなんとかなってもこの人数他はそうはいかない。
拓海がつい大きな声でツッコンでしまったために皆の視線は拓海に向く。
セルフィーユ「ブラックペッパーさん…素敵です!」
ナルシストルー「な、なんだ。この俺様が黒胡椒にときめいている!?」
セクレトルー「ブラックペッパー…いえ、ブラックペッパー様!」
ジェントルー「なっ!この気持ちはなにトル?」
パムパム「拓海…こんなにパムパムの好みだったパム?」
メンメン「なんてことメン、気持ちが溢れて止まらないメン…」
スピリットルー「みんなどうしたでごわす?」
案の定みんな拓海に惹かれてしまう。
拓海「くそっ!」
慌ててその場から逃げようとする拓海だが、
ローズマリー「デリシャスフィールド!」
いつものデリシャスフィールドに阻まれる。
大人数で密集していた空間が開けた状態になる。
ローズマリー「さあ拓海くん!私と仲良くしましょう」
ここね「パムパム、拓海先輩照れ屋で逃げちゃうから止めるの手伝ってね」
パムパム「パム!」
らん「メンメンもお願いね!」
メンメン「メン!」
ナルシストルー「ふっ、この俺様を虜にするとは憎い奴め。俺様の物にしてやる!」
セクレトルー「ブラックペッパー様!私をあなた様の元へ!」
ジェントルー「この気持ち貴様の仕業だな!責任を取らせてやるトルー!」
スピリットルー「わからん、みんななにがあったでごわす?」
拓海「ああ!くそ!」
あまね「品田、とりあえず場を納めよう。ゆいも行くぞ!」
ゆい「うん!あ、コメコメは拓海を見ちゃダメだよ」
コメコメ「コメェ?」
〜〜〜
ローズマリー「はぁっ!」
ブラックペッパー「くっ」
そして開戦する。
プリキュア達はお互いと対峙し、ブラックペッパーはローズマリーを相手する。
そして…
スピリットルー「いくでごわす!ミニスピリットルー!」
ミニs'「ゴワス、ゴワスッ」
ナルシストルー「邪魔だ!」
セクレトルー「どきなさい!」
ジェントルー「トル!」
ミニs'「ゴワ〜」
他の相手にミニスピリットルーが向かっていくもナルシストルー達はそれをあっさりと吹っ飛ばす。
セルフィーユ「このこの〜!」
ミニs'「ゴワッ、ゴワッ」
一人を除いて。
ブラックペッパー「くっ!ジェントルーはともかくナルシストルーとセクレトルーまでデリシャストーンを持ってるのか!」
スピリットルー「ローズマリーを止めるために特別に貸し出しされたでごわすが、完全に裏目でごわすなぁ。しかしおいどんに策あり!ブンドル団の三人はおいどんに任せるでごわす」
ブラックペッパー「助かる、こっちはかなりきつい相手だからな!」
ローズマリー「おしゃべりはおしまい?あんまり焦らしちゃだめ、よ!」
ブラックペッパー「くっ!」
言葉とともにマリちゃんからデリシャストーンの力で作られたロープが繰り出される。
ブラペもエネルギー弾でそれを弾くもわずかに動きを止めただけで再び襲い掛かる。
その場に留まっていてもいけないと跳躍して逃げるが、それでもなお追いかけてくる。
ブラックペッパー「(逃げてるだけじゃだめだ!けどどうやってこのロープを掻い潜れば!)」
ローズマリー「あら、私から目を逸らしちゃだめよ?」
ブラックペッパー「!」
ロープだけに注視していると気づかないうちに回り込まれていた。
ブラックペッパー「ぐあっ!」
不意を突かれロープの方向に蹴り飛ばされ、ブラぺは捕まってしまった。
ローズマリー「やぁっと捕まえたわ。さぁおとなしくして、お楽しみの時間よ」
ブラックペッパー「ひっ!」
捕まったブラペにマリちゃんの手が伸びる。
ナルシストルー「させるか!」
と思いきやその瞬間ナルシストルーのエネルギー弾が飛んでくる。
その勢いでブラペも解放される。
ナルシストルー「黒胡椒は俺様の物だ!勝手に手を出す事は許さん!」
セクレトルー「ナルシストルーの物という点を除けば私も同感ですね。ブラックペッパー様には私の主となっていただきます!」
ジェントルー「誰にもやらせんトル!ブラペは私の物にしてやるトル!」
ブラックペッパー「(スピリットルーのやつ、三人を止めるんじゃなかったのか!?)」
窮地こそ脱したが、一気に四人に囲まれ新たな窮地に。
ナルシストルー「だからまずは邪魔者を排除だ!ローズマリー、覚悟しろ!」
ブラックペッパー「ん?」
しかしその予想とは裏腹にナルシストルー達はブラペではなくマリちゃんに向かっていく。
スピリットルー「どうやらうまくいったようでごわす」
ブラックペッパー「スピリットルー、いったいなにを?」
スピリットルー「ブンドル団はプリキュアと違って固い絆で結ばれているわけではないでごわす。ましてや今回はブラックペッパーの争奪戦のようなもの、少し煽れば簡単にお互いで争ったでごわす」
ブラックペッパー「でかしたぞスピリットルー!俺は今のうちにスペシャルデリシャストーンの制御をしておく。誰かが勝ち抜いて来た時は足止めを頼む!」
スピリットルー「合点でごわす!」
〜〜〜
ヤムヤム「ちょわー!」
フィナーレ「ふっ!」
プレシャス「やぁっ!」
スパイシー「はっ!」
激しく巻き起こっているあちらとうってかわってこちらの戦闘は小規模だった。
いや戦闘と呼べるのかどうか、攻撃らしい姿勢は取るものの相手を傷つけないように勢いを殺している。
フィナーレ「ヤムヤム、一旦落ち着くんだ。今きみは夢を見ているような状態と言っていい。きみも突然の気持ちに惑わされず冷静になるんだ」
ヤムヤム「確かにこの気持ちヤムヤムもよくわかんない。でも溢れ出る情熱が止まんないよ!フィナーレにだってこんなことあるんじゃないの?」
フィナーレ「なっ!?」
ヤムヤムが言ったのはなにも恋愛に限ったことではなかったのだが、先程拓海へ告白したフィナーレにはどうしてもそちらがよぎってしまう。
ヤムヤム「隙あり!『プリキュア・ヤムヤムラインズ』!」
フィナーレ「しまった!」
それに動揺してしまいヤムヤムに大技を打たせてしまう。
麺状のエネルギーはフィナーレを覆うように地面に突き刺さりフィナーレを拘束する。
フィナーレ「くっ!」
プレシャス「フィナーレ!」
スパイシー「いかせない」
プレシャスがフォローに入ろうとするもスパイシーに止められる。
プレシャス「スパイシー…スパイシーも止められないの?」
スパイシー「…うん、こんな気持ち初めてだけど、止まれない。プレシャスには悪いけど私も好きが溢れて止まらないの!だから邪魔はさせない!『ピリッtoサンドプレス』!」
プレシャス「グゥッ!」
スパイシーはパン型のエネルギーでプレシャスを挟む、攻撃力は低いが相手を止めるのに長けた技だ。
スパイシー「ヤムヤム!」
ヤムヤム「はいやー!」
そこにヤムヤムが麺状エネルギーをロープのように伸ばし巻きつけにかかる。
これに捕まればいかにプレシャスといえど…
プレシャス「そうはさせ、ない!」
しかしプレシャスは完全な拘束にかかる前に力を解放し、二人のエネルギーを吹っ飛ばす。
プレシャス「フィナーレ!」
その勢いでフィナーレの元へ飛び、拘束を破壊する。
フィナーレ「助かった」
プレシャス「うん。それにしてもやっぱり二人は手強いね、それにやりにくい」
フィナーレ「それはそうだろう。私達も彼女達を傷つけたいわけではない。それはあちらも同じようだが、困った事にこういった倒すのではなく制する戦いにおいて我々アタッカーより彼女達サポートタイプの方が有利なのがな」
スパイシー「やっぱりプレシャスは簡単には捕まえられない」
ヤムヤム「フィナーレも、今度は簡単には隙をみせてくれなさそうだよ」
スパイシー「大丈夫。合わせ味噌でいこう。作戦は、コソコソ…」
ヤムヤム「はにゃ!そんな事しちゃうの!」
スパイシー「二人ならきっと大丈夫、わたしに任せて」
ヤムヤム「わかった!スパイシーに任せるよ!ホアチャー!」
作戦を伝え合った後ヤムヤムが突っ込んで来る。
ヤムヤム「『バリカッターブレイズ』!」
プレシャス「うわ!」
フィナーレ「くっ!」
ヤムヤムの攻撃技。威力は低いが速度と連射性に優れている。
ヤムヤムはそれを足元に向けて放ち、二人を牽制している。
フィナーレ「(ヤムヤムが囮なのはわかっているが、なかなか無視しにくい事をしてくれる。スパイシーはなにをやろうと…)」
攻撃をかわしながらスパイシーの方を見ると。
スパイシー「キュアスパイシー!ハートジューシーミキサー!」
フィナーレ「なに!?」
プレシャス「ええっ!?」
スパイシー「シェアリン、エナジー、ミックス!」
ハートジューシーミキサーにエナジーを装填するスパイシー、ヤムヤムはそれを確認すると横へ跳び射線を開ける。
パムパム「パムゥ!」
スパイシー「『プリキュア・デリシャススパイシー・ベイキン』!」
放たれたのはスパイシー最強の攻撃技、これを受ければ二人はただでは済まない。
プレシャス「うわわ!」
フィナーレ「くっ!(まさかこんな大技を撃ってくるとは、品田好きの気持ちが暴走した?いや、これはかわせるように撃っている。なら本命は!)」
ヤムヤム「もういっちょ隙あり!」
無視できない大技を陽動に使い、避けた先に回り込んだヤムヤムによる拘束!
それこそ二人の作戦!
フィナーレ「あいにくだが!」
しかし何か仕掛けてくる、それは察していたフィナーレも無策ではない。
なにがくるかはかりながら己の武器に力を溜めていた。
フィナーレ「『プリキュア・フィナーレブーケ』!」
ヤムヤム「にょわー!」
攻撃は外れるが、ヤムヤムを怯ませ距離を置く事には成功する。
ヤムヤム「ふぃー、びっくりした」
スパイシー「うまくいかなかった、しょうがないヤムヤム"もう一回"」
ヤムヤム「了解!うおおお!」
プレシャス「やらせないよ!」
先程の二の舞にはなるまいとプレシャスは接近する。
フィナーレ「待てプレシャス!」
ヤムヤム「バリカッター…」
プレシャス「ッ!」
プレシャスは防御の構えを取る。
牽制としてはやっかいなヤムヤムの攻撃も構えれば受けてもさほど被害は無い。
そう、プレシャスは受ける構えをとってしまった。
ヤムヤム「と、見せかけて!えいやー!」
フェイク、ヤムヤムは腕に纏わせていたエネルギーを刃ではなくロープ状に変える。
プレシャス「しまった!」
フィナーレ「させん!」
それを察していたフィナーレはプレシャスの襟首を掴み投げる。
自分もなんとか滑り込む姿勢で回避に成功する。
先程の失敗すらも利用した二段構えの作戦、しかしそれすらも布石!
スパイシー「『ピリッto』…」
フィナーレをフォローに動かしそれをスパイシーが捕らえる。
プレシャスほどのパワーが無いフィナーレではそれに抗うのは難しい。
それを見越した三段構えの作戦…!
プレシャス「させない!『プリキュア・プレシャストライアングル』!」
それを遮るためにプレシャスは離れた位置からフィナーレ達の間へと攻撃を放った。
フィナーレ「すまない、プレシャス」
プレシャス「ううんアタシが迂闊に突っ込んじゃったから、それにしても…」
フィナーレ「ああ、二人に組まれると完全に後手に回ってしまうな。なんとか凌げているが、このままではいずれ捕まる。無理矢理にでもあの二人を引き離す!プレシャス!援護してくれ!」
プレシャス「わかった!」
そして二人は別方向に走り出す。
固まっていては先程のように一手で二人とも動かされるからだ。
しかしその対策もスパイシーは織り込み済みだ。
スパイシー「『シンデレラフィット』!」
メロンパン型バリアの形を変える技、それを二つ展開して二人の進路を塞ぐ。
プレシャス「『2000キロカロリーパンチ』!」
それをプレシャスが壊す。
強度重視ではなくあくまで変形重視。
最もパワーがあるプレシャスの拳は防げない。
だが、一瞬動きは止めた。
ヤムヤム「ホアチャー!」
そこにヤムヤムがロープ状のエネルギーを纏い飛びかかる。
しかしそれを見たプレシャスは、笑った。
フィナーレ「スパイシー!」
スパイシー「!」
プレシャスを狙い注意を少し逸らしていたフィナーレから声がかかる。
そこにはすでに大技を放つ準備を終えたフィナーレの姿があった。
フィナーレ「『プリキュア・デリシャスフィナーレ・ファンファーレ』!」
スパイシー「くぅ…!」
フィナーレからの声かけがあったためバリアを張るのは間に合うも、流石の大技受けきれない。
スパイシー「きゃあああ!」
威力は消すも勢いは消せない。
スパイシーは吹っ飛ばされてしまう。
フィナーレ「プレシャス!」
プレシャス「うん!」
それと同時にプレシャスはスパイシーが飛んだ方向に跳ぶ。
フィナーレ「さあヤムヤム、きみには私と二人で踊ってもらおう」
ヤムヤム「ッ!」
〜〜〜
スパイシー「いたた…やり返されちゃった」
フィナーレに吹っ飛ばされたスパイシーがごちる。
あの一撃はスパイシーが防ぐと信じてたのかもしれないが、多少意趣返しもあるのでは?と邪推してしまうほど乱暴であった。
フィナーレとしてはあれくらい強引でないと出し抜けないと判断しての事だったが。
そうしているとプレシャスが近くに着地する。
プレシャス「スパイシー…」
スパイシー「プレシャス…」
しかし二人は向かい合っても動かない、いや動けない。
その理由は…
プレシャス「…ダメだ。どう考えてもあたしだけじゃスパイシーを傷つけず止める事できないよ」
スパイシー「…わたしも。わたしだけの力だとプレシャスを止める事はできない」
最初の小競り合いでそれがわかったからだ。
プレシャスは四人の中で最もパワーを持っている、だが性能が攻撃に特化しており所謂搦手は全く使えない。
だからこういった戦いにおいては出来る事は少ない。
スパイシーは防御・拘束に長けたプリキュアだ、だからこういった戦いにおいてスパイシーはプレシャスより適正がある。
しかし相手が悪い。他の二人ならともかく最も怪力なプレシャスを単独で止める事はできないと先程の攻防でわかった。
プレシャス「だからね、提案があるんだ」
スパイシー「提案?」
プレシャス「うん。あたしが今から全力でパンチする、それをスパイシーがバリアで防ぐ、バリアを破ればあたしの勝ち、破れなかったらスパイシーの勝ち。あたしが勝ったらスパイシーが止まって、あたしが負けたらスパイシーの邪魔しない。どうかな?」
スパイシー「…わかった、受けて立つ」
正攻法でやっても泥試合になるだけ、ならばシンプルに決める。
どちらが勝ってもどちらも傷つかない、ならば乗るしかないだろう。
プレシャスは集中する。最高のパンチを繰り出すために。
ローズマリー『体の芯を意識して、力を無駄なく注いでみて』
マリちゃんから受けたアドバイスを実践するなら、今!
プレシャス「『5000キロカロリーパーンチ』!」
スパイシー「『クラスティパンバリア』!」
二つの技が衝突する!
プリキュア最大のパワー!プリキュア最硬の防御!
二人の力に上下など無い、差があるとすればそれは気持ち!
スパイシー「はぁぁぁ!」
バリアが徐々にパンチを押していく、気持ちの上でスパイシーが勝っているのだ。
今回の件でみんなが拓海へ抱いた気持ちはまやかしかもしれない。
しかし、今この瞬間だけは彼女達にとってその気持ちは本物だ!
プレシャス「(みんな本気なんだ。ここねちゃんも、らんちゃんも、マリちゃんも、セルフィーユちゃんも、ジェントルーも、ナルシストルーも、セクレトルーさんも、街のみんなも、そして自分の気持ちを打ち明けたあまねちゃんも。今一番真剣じゃないのはきっとあたし)」
改めて思う、自分の気持ち。
あまねの想いを聞いてからぐるぐると自分の中で回って止まらない。
こんな半端な気持ちでは勝てないのは道理。
プレシャス「でも!」
負けたくない。
今"ゆい"は心の底から思っている。
なぜそう思うのかまだわからない、それでもだ!
シナモン『僕とゆいちゃんが拓海に向ける気持ちが同じかどうかはもう一度考えてみてくれないかい?』
そう言われた意味がわかった。
今はまだ気持ちをまとめる余裕がない。
だから今はただ懸命に!
プレシャス「やぁぁぁぁ!!!」
プレシャスの拳に再び力が宿る。押されていた力は拮抗していく。
プレシャス「やぁぁぁぁぁ!!!」
スパイシー「はぁぁぁぁぁ!!!」
二人の間で拳とバリアがせめぎ合う。
そして次第にバリアにひびが入っていく。
ひびはどんどん大きくなっていく。
プレシャス「はぁぁぁぁぁ!!!!!」
そのひびは全体に拡がり、そして!
スパイシー「ッ!」
プレシャス「はぁぁぁっ…」
プレシャスの力が尽き、変身が解けた…
ゆい「悔、しいなぁ…」
全身全霊発揮した。
しかしいま一歩及ばなかった。
スパイシー「わたしの勝ち、だけど…」
スパイシーもまた力尽き変身が解けた…
〜〜〜
フィナーレ「どうやらあちらも決着がついたようだな」
ヤムヤム「ふにゃ〜」
そしてフィナーレ対ヤムヤムも決着がついていた。
やり方は単純腕っぷしで取り抑えた。
フィナーレもプレシャス同様攻撃方向に特化しているので制する戦いおいて出来る事が少ないのだが、彼女には格闘術という他のプリキュアには無い術があった。
ヤムヤムは応用力は四人で一番だ、しかしその分技の威力が他より劣る。
だからゴリ押しが出来なくは無かった。
フィナーレ「しかしヤムヤムを抑えていては私も動けないな。後はきみ次第だぞ、品田」
〜〜〜
四人から離れた位置でブラペは原因であるスペシャルデリシャストーンの制御を行っていた。
ブラックペッパー「よし。これで完了だ」
スピリットルーの時間稼ぎもあってなんとか暴走を止める事に成功した。
ブラックペッパー「(父さんが言うにはすぐには影響は消えないみたいだが、一応事態は解決か)」
ローズマリー「拓海くん、待たせちゃったかしら?」
すると次の瞬間背後にマリちゃんが降り立つ。
どうやら突破したのはマリちゃんのようだ。
ブラックペッパー「…ずいぶん狙われていたように見えたが、ここまで来たのか」
ローズマリー「完全な一対三とか四なら危なかったわ。でも全然チームワークなってなかったから付け入る隙はいくらでもあったわ」
ブンドル団の四人はマリちゃんを止められなかったようだ。
ブラックペッパー「(どうする?影響が時期に消えるなら無理に戦う必要は…いや、こんな逃げ腰じゃ駄目だよな。それに)」
ブラペは気持ちを整理してマリちゃんの方を向く。
ブラックペッパー「やられっぱなしはカッコ悪いしな!」
ブラペはデリシャストーンの力を纏い突撃する。
ブラックペッパー「はぁっ!」
ローズマリー「ッ!」
ブラペの右拳がマリちゃんへ飛ぶ、しかしマリちゃんは左腕でしっかりガードして逆の腕でブラペを突く。
ブラペはそれを回避するもその先にマリちゃんは蹴りを放ちブラペを吹っ飛ばした。
ブラックペッパー「チッ!(強え、初撃の流れを持っていこうとしたが、やっぱ体格と技術に差があるせいで格闘戦じゃ勝てない。かと言って離れても)」
ローズマリー「次はこっちからいくわよ!おりゃおりゃおりゃおりゃ!」
マリちゃんは両手にそれぞれエネルギー弾を作りそれを連続して射出する。
凄まじい弾幕だ。連射している分威力はそこまでだが、足を止めて受けようとすれば間違いなく物量に呑まれる。
ブラックペッパー「だったら!」
かわしながら自身もエネルギー弾を作る。
ブラックペッパー「はぁっ!」
そしてそれをマリちゃんへ向かって撃つ。
例え弾数が多くとも一発一発が弱いならそれより強いエネルギーで一部分を撃ち抜けば相手まで届く!
ローズマリー「!」
マリちゃんへとブラペの弾は届くが、それまで何発も相殺したそのエネルギー弾は威力を大して残していなかった。が、防御の姿勢を取らす事で弾幕が止む。
ブラックペッパー「そこだ!」
ブラペはすかさず二発目を放つ、本命はこちらだ。
ローズマリー「甘いわ、よ!」
しかしそれはスペシャルデリシャストーンの力を纏った掌に弾かれる。
ブラックペッパー「(くそっ!連発の分威力が足りなかったか!)」
ローズマリー「そりゃあ!!」
そして再びマリちゃんはロープを作り出す、先程やられた技だ。
ブラックペッパー「同じ手は、二度食わん!」
ブラペはそれに合わせて自身のマントに力を纏わせそれが細く伸びる。
それはマリちゃんのロープと似ている。
そしてその二つは真っ向から絡み合う。
ローズマリー「(あれは!クックファイターが使う技術!土壇場の我流でやってのけたの!?)」
マリちゃんの扱うスペシャルデリシャストーンに比べ他のクックファイターが扱うデリシャストーンは出力が劣る。
なのでデリシャストーンにはスペシャルデリシャストーンに出来ることでも出来ない、あるいは難しい事がある。
それを補うために無からエネルギーだけでロープを作成するスペシャルデリシャストーンに対抗し、実体を持つマントを媒介するという術を一般のクックファイターは身につけた。
ブラペはそれを我流で再現して見せたのだ。
お互いのロープが絡み合い拮抗した状態となる。
ローズマリー「私の拘束術を防いだのは見事だわ。でも力も私が上よ!」
お互いのロープが絡み合い綱引きのような状態になるも、そうなれば当然力が強い方が相手を引き寄せられる。
そして引き寄せた方は向かってくる相手を待ち構えれば攻撃のチャンスが訪れる。
ブラックペッパー「わかっている!だから!それを利用させてもらう!」
ブラペがそう言うとブラペのデリシャストーンが光を放つ。
すると次の瞬間お互いのロープが突如形を失う。
ローズマリー「(これは、デリシャストーン同士の干渉による力の無力化!?嘘でしょ、こっちはスペシャルデリシャストーンなのよ!?)」
ブラックペッパー「(ここだ!)」
一方的に引っ張られていた先程の状況と異なりマリちゃんに引き寄せられた勢いをそのままに自由に動ける浮遊状態でさらには相手は完全に虚をつかれ隙ができた状態。
ここが最大のチャンスだ!
ブラックペッパー「『ペッパーミル・スピンキック』!」
ローズマリー「しまっ!」
ブラペの蹴りを喰らいマリちゃんは吹き飛ぶ、完璧なクリーンヒットだ。
ローズマリー「……完敗よ」
マリちゃんは倒れたままそう呟いた。
するとブラペはマリちゃんに近づきそのまま癒しの波動をかけた。
ローズマリー「あら?」
ブラックペッパー「あんた、もうとっくに影響抜けてるだろ?」
ローズマリー「…バレた?」
ブラックペッパー「あの様子を見たらな」
そう言うブラペの視線の方向には。
ナルシストルー「俺様はいったい何を…よりによってあんな黒胡椒に!?」
セクレトルー「ありえないつーの…私の半分くらいの子供にあんな…」
ジェントルー「トル…?」
スピリットルー「いやーみんな元に戻ったようでよかったでごわす」
ナルセク「「よくない!」」
セルフィーユ「スピリットルーさーん!もう大丈夫なのでこの子なんとかしてくださーい!」
ミニs'「ゴワッゴワッ」
影響が解けたブンドル団達がいた。
ブラックペッパー「それにさっきの戦いではスペシャルデリシャストーンを制御する前と違って俺へ執着してるように感じなかった。俺を試したかったのか?」
ローズマリー「ええ、今さら拓海くんがデリシャストーンを持つ事に反対はしないけどクックファイターのトップとして、そしてあなたのお父さんの弟弟子として自分の手であなたを試したかったのよ。こんな事言っちゃったらあれだけどいい機会だったわ」
ブラックペッパー「俺は勘弁してほしいよ。捕まった時本気で怖かったからな」
ローズマリー「あら、私好みのメイクしてあげようとしただけよ?」
ブラックペッパー「それはそれで勘弁してくれ」