キスの日
・とある日の二人がずっとちゅっちゅしてるだけ
「英寿くんってさ、キス、好きだよね」
「ああ、そうだな」
そっと引き寄せると、抵抗もなくこちらに身を委ねてくる。そのまま顔を近づけて唇を塞いだ。
柔らかく吸い付いてくる唇の感触を楽しんでから、薄く開いている口に舌先をそっと差し込む。
英寿くんが俺の首にするりと腕を回してくる。
そのまま舌を絡め、唾液を交換する。角度を変えて、何度も。
「…ん…んん、……んっ、ふ……」
その度に英寿くんから漏れる、鼻にかかった甘い声。それをもっと聞きたくて、英寿くんの腰を強く抱く。
「んぅ…、ぁ、ん……、っ、は、」
そのまましばらく甘い口内を存分に味わって、唇を離した。
「…んっ、…はぁ…はぁ……」
少し震えながら、荒い息をついているのもかわいい。
その後は、いつもなら濡れた口唇もそのままに、蕩け始めた目で俺の事を見つめてくる…はずなんだけど。
「………」
今日は、何故かわずかに眉根を寄せている表情で。
「どしたの?」
「なんか、いつもと違う」
いつもと…?なんかしたっけか…?としばし考え、
「…あー…、タバコかな?」
そういや、ここに来る前に吸ってきたんだった。
「嫌だった?」
「別に…慣れてないだけだ」
口調は拗ねているようで、でもぺたり、と体を寄せてきて俺の肩口に頭を擦り付けてくる。もしかして、いつもと違うから驚いちゃった?
「…ふーん?」
「何だ」
「いや、なんでも?うーん、そっかそっかあ、じゃあさ」
へらり、と笑いながら腕を引くと、素直に膝の上に乗ってきてくれる。
首を傾げてこちらを見る英寿くんの頬を撫で、そのまま口唇をそっと親指でなぞる。ふに、と指の腹で軽く押すとまた期待するように薄く開く口唇と、その奥に赤い舌が見えた。
「早く慣れるように、いっぱいしようか、キス」