アッシュルバニパルの魔術師:4

アッシュルバニパルの魔術師:4

魔術師ウイvs警備室長ハレver.2

【アッシュルバニパルの魔術師:3】

【アッシュルバニパルの魔術師:5】

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──いよいよこの日がやって来ました

“アビドスの目を覚まさせる”戦い

【アビドス決戦】が始まります


アッシュルバニパルの扱いに関しては…ぶっちゃけた話ですが、“完璧に覚えた”とは言い難いです

自力での操作はある程度慣れたものの、補助AIの制御に苦戦して…なんとか使いこなそうと努力しましたが、最終的には時間が足りなくなってしまいました


…最悪AIの補助を切って自力で動かすという手段を使うべきかもしれませんが、それはリミッターを解除する事でもあるので本当の最終手段です

命の危険があるのであれば解除しないに越した事はないはず

リオ会長のメッセージ通り、補助は極力切らないようにしましょう

いざという時には切り札として使うべきなのでしょうけど…

そんな時は来ないと祈りたいものです




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そして戦いの火蓋が切って落とされた


先生を始めとしたあらゆる自治区の人々で構成されし反アビドス連合の軍勢は、“ユメに溺れた者達”を引き戻すべく砂漠の地へ足を踏み入れ、攻勢を開始


一方のアビドス勢力は、大規模な攻勢の報告を受け“アビドス風紀委員会”などの武力組織が自治区外周に陣取る

約十分後、激しい攻防戦が開始された




アリス達勇者パーティの面々は重要拠点の制圧に割り振られ、ウイはその中でもアビドス中心部へ潜入する部隊の一員に決まった

他の潜入部隊メンバーは、清澄アキラとFOX小隊の4人


ウイは内心「別に潜入に長けているわけでは無いんですけど!?」と思ったが、普段から古書館でなるべく音を立てずに行動する癖があったため隠密行動の適性あり、とアリス達から評価され潜入部隊に割り振られたのだった



そして6人はアビドス中心部へと潜入

監視体制を崩すため、警備室への潜入と破壊工作作戦を開始

なおウイは機敏に動けないため、ユキノかアキラに抱えられ飛び移っていた


ユキノ「こちらFOX1、Aサイトクリア」

アキラ「こちらCAT、近くにアビドスの方はおりません。皆さん移動して大丈夫ですよ」

ニコ「FOX2了解、これからBookと一緒に行くね」

オトギ「こちらFOX4、目標地点まであと377mほどかな?警備している風紀委員と思しき子が4人見えるね…」

クルミ「FOX4、私が隙を作るから援護をお願い。早めに制圧するわよ」

「おっけー」



ウイ「…(これが、本物のエリート小隊と怪盗の動き方…全く無駄がありません)

「ウイさん大丈夫?疲れてない?」

「あ、大丈夫です…ていうか名前言ってしまったら」

「心配ご無用。通信は切っているし盗聴の恐れも無いから」

ニコはウイに笑みを見せながら答える

「そうですか…」

「後もうちょっとだから頑張って。全部終わったら美味しいお稲荷さん、ご馳走してあげるからね」

「は、はい。その時は是非とも」

ウイもぎこちない笑顔を見せる


そして一行は監視網を潜り抜けるため、カメラの無い空間を把握して砂に埋もれかけな家屋の隙間や屋上を飛び移るようにして進む




そして20分ほどした後

風紀委員A「ぐえっ!」

B「ぎゃっ!」

「タンゴーダウン。いつでもOKだよ」

「FOX4よくやった。よし、入るぞ」

近くの風紀委員を制圧した一行は、目標地点である警備室の建物へ入り込む

その内部はというと…


「うわぁ、なんか機械だらけだよ」

周りを見回してそう呟くオトギ

建物内は色々な機械…主にサーバー類と見られるものが多数設置されていた

繋がっていない監視カメラのようなものまで置いてある

コードやケーブルは床を覆い尽くすほど適当に置かれており、最早足の踏み場に困るレベルだ


しかしそれよりも気になったのは…

「うっぷ…!この甘ったるすぎる匂い…絶対砂漠の砂糖製品よね?」

強烈な甘い匂いで思わず鼻を抑えながらクルミが尋ねる

「そのようですね、確かアビドスMAXやアビドスサイダーなる飲料が、この地の常飲飲料という話でしたが…」

「それにしたって、ここの濃度はかなり強烈だねぇ…身体壊しちゃうよ」

呆れた様子を見せるアキラと生徒の身を心配するニコ

「あまり騒がない方がいい、ここは敵地のど真ん中だ。いつどこから攻撃が来るか分からない」

ユキノがそう忠告したその時


??『あー、もう君達の場所分かってるから好きに騒いでくれていいよ』

「っ…!?」

突如近くのスピーカーからノイズ混じりの声が聞こえた

「ジャミングは発動していたはず…!?仕方ない!早急に片付けるぞっ!」

まさかこれほど早く居場所を特定されるとは思わず、少しだけ動揺しつつもすぐに電撃戦を仕掛けると5人に告げるユキノ

潜入部隊一行は凄まじい勢いで建物内を駆け始めた

ウイはニコに背負われた状態で、速さに驚愕しつつしっかり掴まる


??『うわ早っ!?あ゛ぁもう遠隔接続で動かすのってキツいのに…!』

声の主は驚きと怒りの感情を見せる

すると次の瞬間


「いったぁ゛っ!?」

突如建物内の機械が全て動き出し、不意に落ちてきた装置に頭をぶつけたクルミが悲鳴をあげる

「頭割れそ…うぎぃ゛っ!?」

思わず頭を抑えたクルミだが、次の瞬間大型のドローンが腹部へ向かって高速でぶち当たってきて、あまりの衝撃に吹っ飛んでしまう

「うわぁっ!?なんか絡みついてきたんだけど!?し、しかもキツくなってきてるし…!くぅっ…」

驚いて壁に背中をくっ付けたオトギは、側に落ちてた太いケーブルに絡みつかれ縛り上げられてしまった

「FOX3!FOX4…なっ!?」

ユキノは2人に駆け寄ろうとするも、大型のサーバーと思しき機械が倒れ込む

急いで銃を構え機械を撃ちながら後方に下がったが、クルミとオトギとの距離が開いてしまう

しかもこの廊下は人が1人通るのも大変なレベルで色々な機械が置いてある

一度退けば大型の機械によって更に行手を塞がれ、どんどん連鎖的に後ろへ進めなくなってしまう

「FOX2!そっちは大丈夫か!?」

ユキノは無線でニコに呼びかけた

「う、うん。ウイさ…Bookは無事だよ…でも私はちょっと…」

「ど、どうした!?」

「ユキノさん!ニコさんの足が、機械に挟まれてます!わ、私を助けようとして咄嗟に庇って…!」

「なんだと…!?」

「こちらCAT、FOX3は今私が介抱した。だがこのままでは非常に拙い。これから撤退しようにも退路は塞がれてしまっている。脱出するのであれば、機械が動き露わになった窓を割るしか無いだろう。既にFOX2、3、4が、行動不能になった…今なら窓も塞がれず撤退出来ると思うがどうする?」

「……」

アキラの言葉を聞いたユキノはどうするべきかを判断しようと考える


しかしその時、ウイが声をあげた

「ユキノさん、アキラさん、今動けない皆さんを連れて撤退してください」

「なっ!ウイさん、何を…!?」

声が聞こえた直後、閃光のようなものが走り機械の動きが緩慢になった

「今のは…魔術師の装備品ですか?」

「はい、私のアッシュルバニパルは情報伝達粒子を使って電子機器を操作出来るので、機械との相性が良いんです。私が機械の動きを抑えるので、お2人は今の内にニコさんとクルミさんとオトギさんを連れてここから脱出してください!」

「…貴女はどうするおつもりで?」

アキラの問いに対してウイは…

「この相手を無力化します!この先の、警備室にいる相手を…!」


「…FOX1、了解。隊員達を安全な場所に運んだらすぐに助けに行く、それまでは生き続けてくれ」

機械の間を潜り抜け、拘束されたオトギと足を挟んだニコを助けたユキノ

「ご、ごめんFOX1…苦しかったぁ…」

「いたた…私も、手間かけさせちゃったかな…?」

「気にするな、こんな超常現象も同然の事態、予測できるわけがないだろう」

一方、クルミを抱えたアキラは銃で窓を割り外の様子を伺うが…

「おや、風紀委員会の新手ですよFOX1。あの障碍を乗り越える必要が出ましたが大丈夫でしょうか?」

「なに、これでもSRTの小隊長だ。あの程度なら2人を担いで道を切り拓きながら撤退するなど造作もない」

「見事です、では行きましょう。Book…いえ、魔術師のお嬢さん。また後程連合の拠点でお会いましょう」

「…了解しました」


そう言葉を交わして、ユキノとアキラは動けなくなった3人を担ぎ撤退戦を開始

ウイはアッシュルバニパルの光線と情報伝達粒子を駆使し、襲い来る機械を退けながら単身警備室の奥を目指す





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??「な、なんで言う事聞かないの!?このまま中に入れたらハナコ様やヒナ様に叱られる…!何とかしないと…!」

機械が軒並み動かせなくなるという事態に焦りながら、身体から伸びるコードをこれでもかというくらい伸ばしてメインサーバールームの色んな場所に接続する警備室長

同じ警備員の生徒数名が室長を手伝っているものの、彼女達はたった1人の侵入者を阻めずにいた


警備室員A「ダメです!迎撃装置が機能不全になりました!」

B「外部との連絡もさっきから繋げられません!5人が撤退した時は出来たのに、ジャミングが突破出来ません!」

C「も、もうすぐそこまで来ています!どうしますか室長!?」

??「くそっ…!特殊部隊より、あいつの方が危険だったなんて…!とりあえず電子錠のロック、7重にかけて!」

A「りょ、りょうか…うわぁ!?」

B「ロック操作が妨害されてます!も、もうこうなったらバリケードを…!」

3人の警備員が机を離れ近くの重たい棚を扉の前に移動させるが

(ドガァァァァァンッ!)

ABC「「「おわあああああっ!?」」」

凄まじい威力の光線が扉と棚を貫いたと同時に、爆発によって3人は部屋の隅まで吹っ飛び気絶した


??「なっ…!」

砂煙の中からゆっくりと現れる高身長なシルエット

ウイ「貴女が、警備室長ですか?」

そう尋ねる彼女の手には、自動的にパラパラとページを捲る魔導書のようなもの

??「それのせい、か…!」

「答えて下さい。監視網を掌握している警備室長は、貴女ですか?」

ハレ「…貴女の言う通り。私がアビドス警備室の室長、小鈎ハレだよ」

「…私は古関ウイ。トリニティの、図書委員長です」

アッシュルバニパルを携えながら、自分の名前を伝えるウイ

それを聞いたハレは、部屋のあちこちに接続していたコードを外して自分の周囲に浮遊させる

「…まるで蛇遣いですね。悍ましい」

「なんとでも言って、よくも私の完璧な警備を台無しにしてくれたね…!」

「えぇ、完璧な警備を台無しにするのが今回受けた仕事ですので」

「はっ!仲間に助けて貰えなきゃ機械にぺちゃんこにされてたかもしれないのによく言うよ!…今私、本気で苛ついてるから容赦とかしないよ。大事な後輩達をこんな目に遭わせた報いも、絶対に受けさせてやるから…!」

ハレはそう言って椅子から立ち上がり、巨大化改造を施されたアテナ3号に自分のコードを接続した

瞬間、アテナ3号の下部からは大型の脚が複数本生える

「うわっ、なんですかそれ…」

「一々引かないでくれるかな?これは私の可愛いアテナ3号。元はドローンだったけど、改造されて最高の相棒になった。そんなチンケなオモチャなんか、コンマ数秒でスクラップにしてお前の脳みそに砂糖の快楽を5割増し…いいや!10割増しで流し込んでやる!」

そう怒鳴ったハレは、コードをしならせ近くにある山積みのアビドスMAXの缶の山にぶち当てて吹っ飛ばす

ガランガランと騒がしい音を立てて缶が吹っ飛び、騒音で思わず顔を顰めたウイは耳を抑えた

「うっ…うるさいです、よっ!」

耳から手を離し、アッシュルバニパルを構えて光線を放つ

「そんな攻撃通用するもんかっ!」

ハレは一本のケーブルを構えると、光線を飲み込むようにして消してしまった

「はっ!?ど、どうなってるんですか、そのコード…!?」

「私はハナコ様の補習授業によって最高の力を手に入れた…それがこのコードとケーブル達。後輩達も使えないってわけじゃないけど、この演算機能を甘く見るようなら、お前は絶対に負ける。しかも今はアテナ3号の補助もあるから…お前の勝ち目は、1%にも満たない!」

酷すぎるって次元じゃない隈をした目を手で擦りながら、ハレは無数のケーブルをウイに伸ばした

「(わ、分かります!もしこのケーブルに触られたら、そこで終わり…!絶対に、触られないようにしないとっ!)」

本能的に強く警戒し、襲い来るケーブルへ光線を放って対応するウイ

だがその攻防は、ウイが劣勢だった

それもそうだろう…ここは敵地の中枢、相手は砂糖により異形の力を得ている、狭い屋内での戦い、甘ったるすぎる飲料の匂い…今の地の利はハレの方にある


「こう、なったら…!」

無数のケーブルを弾きつつ、一発の光線を警備室内の扉に向け撃ち放った

その部屋は、今や滅多に使わなくなったハレの寝室…かつて反抗の意思を持っていた頃、改造ドローンを作ったあの部屋である

扉を破壊し、その部屋へ避難したウイは体勢を整えながらアッシュルバニパルのページを束ね始めた

「そんなところへ逃げても無駄だよ…!お前はここで、私が補習授業してあげるからっ!」

アテナ3号と共にゆっくり近づくハレ

「悪いですが、遠慮させてもらいます!そして頭上に注意した方がいいと、今のうちに言っておきますよっ!」

300枚あるうちの236枚を束ねた

そしてアッシュルバニパルに手を翳したウイは、高らかに吼え立てる

「光よっ!」

「はぁ!?お前、何を──

(チュドオオオォォォンッ!)




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ウイ「私は、ずっと古書館に篭っているだけの偏屈で面倒くさい生徒です。でも先生やヒナタさんと出会って、外の世界にある素晴らしさを、少しだけでも理解しました」

ハレ「お、お前ぇっ…!よくも、大事なサーバーや、モニター、を…!」

「それ以来、私は意外にも“屋外で戦う”のが得意なのだと知ったんです」


警備室のある建物は、一瞬にして一角が大きく吹き飛んだ

さっきまでの液晶画面から放たれる目に悪い光だけの暗い部屋は、殆どが跡形も無くなり天の光が広く差し込んでいた

「うぅっ…やっぱり日光は苦手ですが…これで、戦いやすくなりました…!」

ウイはやはり眩い太陽光を受けると目が痛いままだが、かつての古書館に篭もるだけだった頃に比べれば、連合での特訓のお陰でかなり対応出来るようになっていた

一方のハレは、ほぼ四六時中モニターへ釘付け状態。やむを得ず外に出ることがあったとしても、夜などの暗い時間帯に出ることが多かった…つまり、当分の間陽光を浴びていなかったのだ

今のウイとハレでは、どちらが陽の光を浴びた時のダメージが少ないか…それは火を見るより明らかだろう

「あ゛ぁぁ…!まぶ、しぃ゛…っ!」

「これまでですハレさん!私は、貴女に勝ちます…!」

「っく…舐め、るなぁ゛ぁぁぁぁっ!」

するとハレは、突然アテナ3号から2本のコードを引っ張り出すと…

「くあ゛っ!」

なんと自分の目に接続した

「へぇっ!?は、ハレさん!?貴女何をやっているんですかっ!?」

「うるさいっ!こうなれば、どんな手を使ってでもお前を倒す…!アテナ3号ッ!私の目となれ!敵を倒せぇ゛っ!」

アテナ3号『了解。これより当機はハレ様の視覚を担当いたします』

すると改造されたアテナ3号の機体から、突如3台の丸い小型ドローンが飛び出した

それは従来のアテナ3号と同じ形のカメラであり、ハレの視界はそのカメラ越しにウイを見ている状態


「な、なんで…なんでそこまでして!?視力をその機械に委ねてでも、私を倒すと…!?」

「ああそうだよ…!アビドスに仇なす、反抗分子は、1人残らず砂糖漬けだ…っ!それがこの楽園の、規則なんだっ!」

接続部から血の涙を流しながら、ハレは再度ケーブルを伸ばす

「ウイッ!お前の記憶も!精神も!全部粉々に砕いてっ!砂糖以外の生き甲斐を何もかも消してやるッ!」

「…いいえ、いいえ!私は負けません!絶対にっ!」

普段大声など殆ど出さない2人は、この時ばかりは感情任せに大声をあげた

ハレは破壊されたことに対する復讐心、ウイは勝利への渇望を叫ぶ



だがアテナ3号の支援により、ケーブルの動きは前にも増して機敏になっていた

警備室を破壊したことで回避できる場所が広がり、瓦礫などの遮蔽物をある程度利用出来るようになったとはいえ、今のままではハレの猛攻を凌げない

これではさっきと同じ…そう考えたウイは、遂にあの選択を取ることにした

「(こうでもしないと勝てませんね…)」

アッシュルバニパルの背表紙部分にある一つのスイッチ

それはアッシュルバニパルを動かす補助AIのオンオフを切り替えられるスイッチであった

瓦礫の陰に隠れながらスイッチをオフにしたウイは、300枚のページを自分の力で操り始めた


(ズキッ)

「ゔっ…!」

スイッチを切った瞬間から、ウイの脳内にはアッシュルバニパルから大量の情報が送り込まれる

その量に脳は早速悲鳴をあげ、鋭い頭痛が襲いかかってきた

「ここからが正念場、でしょうか…!」

しかし頭痛にも怯まず、さっきまでとは比べ物にならない勢いで光線を発射し、ハレのケーブルへ当てて機能不全させていく

「なっ!?さっきまでとは比べ物にならない…!何をしたのっ!?」

「え、えぇ…!貴女と同じで、私も危険を顧みないことにしました…!ハレさんの機械が壊れるのが先か、私の脳が焼き切れるのが先か…勝負、しましょう!」

「ふ、ふざけないで!死なせるもんか!お前の脳が焼き切れる前に、私のコードで快楽ぶち込んでやるっ!だからさっさと、接続させろおおおおぉぉぉぉっ!」

「いいえ!意地でも貴女の目を覚まさせますっ!それが私が、勇者から…アリスさんからお願いされた、“魔術師”としての使命、ですからっ…!」

「っ…!?あ、アリ、ス…!?」


その名前を聞いた瞬間、ケーブルの動きが緩慢になった

「そうです!私は、アリスさんの、勇者パーティの、仲間なんですっ!」

「あ…アリス…?そんな、嘘だ…!」

「嘘ではありません!私は、彼女と同じ“守りたいと思う存在のために戦う”同志として、彼女の仲間になりました!」

「嘘だ…嘘嘘嘘嘘嘘…!つまらない嘘をつくなぁっ!」

動きがバラつき始めたケーブルを、光線で押し除け懐へ駆け込む

「貴女と同じ部活である、チヒロさん、コタマさん、マキさんのことも、アリスさんから伺いました!私は、貴女を仲間の下へ帰すために、貴女を止めます!」

「嫌だ…!私は、みんなを裏切った…!もう私の居場所は、アビドスにしか…」

最後のケーブルが破壊された

「いいえっ!貴女の居場所は、まだ存在しているんですっ!目を覚まして下さいハレさんっ!」

意識が危うくなりつつある状態で、ウイはトドメの一撃の狙いを定める

「うわあああああぁぁぁぁっ!」

ハレは既に破壊されたケーブルを自分の手で持って振り回そうとするが…

しかし、ウイの方が早かった

「甘いユメはもう終わりですっ!」


光線は、巨大化したアテナ3号の機体中央を撃ち抜いた

アテナ3号『本体、破損、ハレ様、お逃げクダ、サ──』

(ドガアアァァァァァンッ!)





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ウイ「っはぁ゛っ!はぁ…!はぁ…!」

アテナ3号の爆発に巻き込まれ吹き飛んだ私は、砂漠に倒れ伏しながら激しく息を切らせる

もしもあと数分間リミッターを解除していたら、本当に脳が焼き切れていたかもしれなかった…という実感があった

ハレ「…ぅ…ぅぅ…ぁ…」

目線を横に向けると、近くで同じように倒れ伏したハレさんの姿が見える

呻いているものの、大きな怪我は無いと遠目からでも判断出来た

目から少し出血しているものの、潰れたわけではなさそうで胸を撫で下ろす

「あは、は…や、やれちゃいましたね…我ながら、ビックリです、本当…」

目が潰れそうなほどの砂漠の陽光を受けながら、独り言を漏らす

「あぁ、こういうことですか…ネルさんの言っていた、私の根性って…」


ヒナタさん、シミコ、古書達

私にとって大切な存在に、やっと顔向け出来る気がしました…

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倒れ伏す2人の足下には

アッシュルバニパルとアテナ3号のカメラが、寄り添うようにして落ちていた

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       (SS一覧二代目はコチラ)

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