アッシュルバニパルの魔術師:3

アッシュルバニパルの魔術師:3

ヒナタに再会&その後のウイ

【アッシュルバニパルの魔術師:2】

【アッシュルバニパルの魔術師:4】

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私はアッシュルバニパルの扱いに慣れるための訓練と、日光の下でも活動できるための訓練を続けました

引き篭もりの身ではかなり、いや相当にキツい訓練でしたが…アリスさんを始めとしたミレニアムの生徒やC&Cの皆さんの支えもあり、しっかり扱い方を覚える事ができました

…正直な話、辛くて何度もへし折れそうになりました。こんなのやってられないと投げ出したくなった回数は、最早数え切れないほどです


でもなんでですかね?

逃げたくなっても、“諦めるのは嫌だ”と感じて訓練を意地でも続けるんです

そ、そりゃもちろんミレニアムの皆さんや勇者パーティの皆さんの期待を裏切りたくはなかったですよ?

けれど、それとは別に“このまま諦めたらいよいよダメな奴になる”と感じまして…

寿命は大分縮んだ気がするんですけど、なんだかんだで慣れていったんですよね

そういえばC&Cのリーダーさんも…


ネル『あんた中々根性あるじゃねえか!弱音こそ結構吐くが、どうこう言ってもキッチリやり切る所は評価してやるよ!いいか?その根性、いざって時はマジで役に立つから忘れんな。つっても無理はすんな。根性出すのと無理するのは違うんだ。テメェが無理して死んだり怪我を負った時、あたしはガチで許さねぇぞ。分かったな?』

ウイ『ひゃ、ひゃい…』


まあ…あの方からの圧が凄くてビクビクしっぱなしでしたけど、言ってる内容はとても納得のいくものでした

精神論とか私向きじゃないんですけど…あの方の言葉は私の中に刻まれています

私の中に眠る根性…発揮する時が来ないに越した事は無いのですが、いざという時は出す必要があるかもしれませんね



そんな風に、身も心も成長させてもらう日々が数週間ほど続いたある日

先生が少々慌てた様子で私を呼びました


先生 “ウイ!今ちょっといいかな!?”

「え、あ、はい…大丈夫ですけど…」

“さっきサクラコから連絡が来て、ヒナタが目を覚ましたとかなんとか…”

「…ヒナタさん!?」

“とりあえず、車を手配したから行ってあげて欲しい!私はちょっと手が離せないから、代わりに「目が覚めてよかった」と伝えてくれると…”

「わ、分かりました!伝えておきます!ありがとうございます!」


まさかあの後無事だったと…!?

いや、顔を見ないと安心できない

私は先生が用意してくださった車に乗りトリニティへ急いで戻った


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そわそわしながらしばらく車に揺られること数十分

やっと到着したのは大きめの病院

車を降りると、そこにはサクラコさんの姿が…


サクラコ「ウイさん!」

ウイ「さ、サクラコさん…!ヒナタさんは無事ですか!?」

「ええ、ひとまず着いてきて下さい」


サクラコさんに着いて行って、奥の方の病室へと案内された

「中にマリーがいます。ウイさんが希望するなら2人きりにしますが…」

「で、できればそうしてもらえると…」

「分かりました。マリー、私です」

ノックを聞いたマリーさんが顔を出した

マリー「ウイさん…!わざわざ連合から来ていただきありがとうございます」

「い、いえ…ヒナタさんには今までも、トリニティから脱出する時も、お世話になりましたので…」

「シスターヒナタも喜ぶはずです。では私は席を外しますね」



マリーさんは病室を出、私はヒナタさんと数週間ぶりの再会を果たした


「…ヒナタさん」

ヒナタ「あ…ウイさん!良かったです…本当に、良かったです…」

ヒナタさんは治療中の傷だらけでした

何より…

右腕と左足が折れていたのです

「その…腕と足は…?」

「えっと、ウイさんを逃がしてたくさんの人達を食い止めましたけど…その時がかなり大変でして…」


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どうやら私を逃した後、大勢押し寄せる砂糖中毒者達を必死に食い止め…


ヒナタ『うああああぁぁぁっ!』

シスフモブ『流石はシスターヒナタ…!こうなったら全員で押し寄せて、一気にカタをつけましょう!』

シミコ『では私が腕を狙います!』

『くっ!?シミコさん貴女まで…!抑えきれなっ…きゃああぁぁっ!』


砂糖堕ちした事で狂い凶暴化した生徒達とシミコに押されて、腕と足を折られてしまったらしい

(ボキッ)

ヒナタ『っ゛ぁ゛ぁぁっ…!!!?』

シスフモブ『今ですわっ!』

『あぐうっ!?』

シミコ『さあヒナタさん、貴女も仲間になりましょう?』

『い、いやですっ…!離して下さいっ!さ、砂糖を近づけないで…!』

『もう抵抗は無意味です。この後委員長も捕まえなきゃいけないので早く食べて下さい!』

『あ゛…がっ…!』

そのまま組み伏せられ、あわや砂糖摂取させられそうになったその時…


????『待ちなさい!』

(ダダダダダッ!)

モブ生徒『ぎゃっ!?』

シスフモブ『なっ…誰ですか!私たちの邪魔をするの…は…!?』

ヒナタ『さ、サクラコ…様…!』

サクラコ『ヒナタ、遅れてしまって本当に申し訳ありません!今助けます!さあ皆さん、彼女達を取り押さえなさい!』

正常シスフモブ『『『了解っ!』』』


サクラコさんが正常なシスターフッドの生徒達を引き連れ、助太刀に来たお陰でヒナタさんは間一髪助かったらしいです

シミコも捕まり、今は拘束中の身ながら正常な意識を取り戻す時間が増えてきているらしいです。しかも古書館の被害は扉だけで、中の古書達は無事だったとのこと…そっちも本当に良かったです

狂った生徒達は拘束され、ヒナタさんはマリーさんの介助を受け搬送されたそうですが…それからヒナタさんは今さっきまでずっと眠っていたと…

その上サクラコさんとマリーさんは他に発生した暴動の処理もやっており、携帯電話も戦闘で破損してしまっていたが故に、ヒナタさんは腕と足こそ折ったものの生死の危険や砂糖堕ちの恐れは無いという報告が遅れてしまったらしい


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ヒナタ「え、えへへ…その、すみませんでした…ドジっちゃった分は取り返せたと思うのですが…」

ウイ「っ…!ヒナタさんのバカッ!そ、そんなになるまでやらなくてもよかったでしょう!?なんで、なんで私なんかのために…腕と足を折られてまで…!」

「す、すみません…けれど、元を正せば私が大勢の砂糖に溺れてしまった方々に居場所を教えてしまったのが原因で」

(ぎゅっ)

「…えっ」

ウイはヒナタに抱きついた

「もう、謝らないでください。また私の悪い癖が出てしまっただけなので…本当に、心配したんです。死んだとは流石に思いませんでしたが、もしかしたら砂糖を摂取させられて狂った人達の仲間入りしてしまっているのでは…なんて、ここ数週間連合で過ごしながら、そんな良くない想像をし続けていました」

「ウイ、さん…」

「実際すぐにでもトリニティに戻って、ヒナタさんが無事かどうかの安否を早く確かめたかったです。けれど、私は連合で新しい友人…いえ、新しい【仲間】と出会いました。」

「お、お仲間さんですか?」

「はい、ミレニアムの天童アリスという方です。私は連合に辿り着いて間もない時、アリスさんから【勇者パーティ】の仲間になって欲しいと頼まれました」

「勇者パーティ…?はっ!確かミネ団長が今所属していらっしゃる!?」

「ええ、そのパーティメンバーに加わりました。最初はシミコや古書達やヒナタさんを守れなかった私に何が出来るんだと、突っぱねてしまいましたけど…」


ウイは、アリスや連合の人達と過ごした数週間について語る

ヒナタは優しい笑顔を見せながらその話をしっかりと聞き続けた




「──というわけで今に至ります」

「そうだったのですね…ウイさん、これだけはもう一度謝らせて下さい。ご心配をおかけしてすみませんでした」

「そんな、私こそ何から何まで…」

「…一つだけ、お願いがあるのですが」

「はい、なんでしょう?」




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一方その頃


アリス「先生!魔術師が…ウイが何処に行ったのか、知りませんか?」

先生 “ああアリス!ごめん、報告が遅れちゃったけど、ウイは一旦トリニティへ戻ってるんだ”

「そうでしたか」

“実はウイの友達…ヒナタって子が、砂糖中毒者に襲われていたみたいで、その子が目を覚ましたから様子を見に…”

「…ということは、ウイはパーティから離脱してしまうのですか?」

“えっ?うーんどうだろう…”

「ウイは訓練の時、常に大変そうにしていました…もしウイの守りたいと願う人が無事だったのであれば、パーティから離脱するかもしれません…」

“ねえアリス、アリスはどっちが良い?”

「と、いうと?」

“ウイがパーティに復帰するか、離脱するか…アリスにとっては、どっちが良いと思うかな?”

「それは当然復帰です!」

“だよね?じゃあ、仲間を信じて待つのも勇者のやるべき事だと私は思うよ”

「はっ…!」

“ウイは確かにちょっと交流が苦手な子だけれど、きっとアリスの…勇者の場所に戻ってくるはず”

「はい!アリスはウイの…魔術師の帰還を待つ事にします!」


アリスは元気よくそう言ってシャーレを出て、連合の拠点へ戻ってきた



カヤ「おや、勇者様のご帰還ですよ」

「カヤ!フウカ!お迎えですか?」

「い、いえ別に?どうせ心配なんか不要な天下無敵の勇者様なんですし、無事に帰って来るだろうとは思ってましたよ。ここに居たのは、フウカさんと喋りたくなっただけです」

フウカ「私はアリ…勇者がお腹空かせているかもと思って晩御飯を用意しておいたの」

「おお流石は料理人!気が利きます!」

「私は!?」

「カヤは遊び人らしいですね!」

「ですから!遊び人なんて役職は望んでいませんって!」

「ではレベルアップして転職できるよう頑張りましょう!」

「ぐぬぬぬ…!私はただ遊んでいるわけではありません!」

「はいはい、冷めないうちに早く食べて欲しいから行くわよ(눈_눈)」

「あ、フウカ。一つお願いがあるのですが…」

「ん、何?」

「もう1人分お皿を用意して欲しいです!後で合流する仲間がいるので!」

「ああそうなの?分かったわ」

「…それって誰のことですか?」

「魔術師、ウイのことです!」

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その後、夜の23:30頃

アリスはフウカと2人で椅子に座っていた

簡易食堂のテーブルには1人分の食器


アリス「すみませんフウカ、こんな時間までアリスに付き合わせてしまって」

フウカ「ううん気にしないで。私もウイさんが戻ってくるのを待ちたいから」

「戻ってきてくれるといいのですが」

「弱気なこと言わないの。…私はあまりお話していないけど、ウイさんがずっと訓練を頑張っていた姿は見ていたし」

「ありがとうございます、フウカ」

「でも夜が明けたら流石に寝ようね?」

「はい…」

その後、2人は1時間近く待った


「……(うとうと)」

「フウカ、無理せず寝てください」

「あ、ごめんちょっと寝ちゃってた…」

「今日は一旦寝ましょ」

(コツッコツッ…)

「…待って、来たんじゃない?」

「え?あ、足音です!まさか…!」


アリスは足音が聞こえた方へ駆け寄る

そこには──


ウイ「あ、アリスさん…た、ただいま…です…」

「ウイーッ!」

(ぎゅーっ)

「げはっ!?ちょ゛、ぐるじ…!」

「あっ、またやってしまいました…」

「おかえりなさい、魔術師さん」

「げほっ!えっと、フウカさん、でしたよね…?貴女まで待たせてしまったようで、なんかすみません…」

「いいのよ。仲間の食事を用意するのも料理人のやるべき事だから」

「あ、ありがとうございます…こんなに遅い時間まで待たせてしまって…」

「ではウイ!改めて我ら勇者パーティの魔術師として、よろしくお願いします!戻ってきてくれて嬉しいです!」

「…はい。こちらこそ」




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ヒナタ『ウイさん!是非勇者パーティの一員として、活躍して下さい!』

ウイ『そ、それがお願いですか!?』

『はい!…私は折れた腕と足が治るまで動けませんが、マリーさんやサクラコ様達が正常なシスターフッドの方を警備につけてくれるので安心してください』

『…分かりました。』

『ところで、ウイさんは勇者パーティの中でどのような立場なのですか?ゲームには疎いのでよく分かりませんが、ウイさんならカッコいい立場かもしれないと思いまして!』

『はぁ…そんなにカッコいいかは分かりませんけど…

私は、“魔術師”古関ウイです…!」





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アリス「魔術師よ!お主の武器を、再度授けようぞ!」

ウイ「…食べてる途中なんですが」

「で、でもやっぱり早く渡したくなってしまって」

ウイ「全くもう…魔術師ウイ、パーティに復帰しました。これから勇者の道行を改めて導くと約束しましょう」


魔術師は、アッシュルバニパルを勇者に手渡された

それからウイは更なる訓練を経て…



遂にアビドス決戦の時が訪れた!

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