RABBIT around(後編)
前編の続き
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現在私は、ミレニアムのベッドの上にいる。
「…本日のカウンセリングは以上です」
私は怪我の入院と同時に、以前からミネ団長に言われていたカウンセリングを(強制的に)受けることになった。
事件の経緯も説明するために、全てを包み隠さず、正直に言ったところ、
丸一日説教を受けた。
どうやらアヤネさんから事情はある程度聞いていたようで、
『砂糖』を摂取していないと言っても、説教の時間は伸びましたが、受け入れてもらえました。
「あの…相手の皆さんはどうなりましたか?」
それだけが、どうしても気になった。
「…本来なら彼女達は『執行猶予』中の行動ということで厳罰が下るのですが…
被害者である貴方が彼女達を咎めないとのことなので、厳重注意で終わるとのことです」
「…安心しました。元を辿れば、私のせいですから…」
彼女達はその被害者なのだから、酷い罰が下らないで良かったと思う。
「…その辺りのカウンセリングも必要そうですね」
「!?」
「…ですが残りは後日です。よろしいですね?」
「…はい」
「…一つだけよろしいですか?」
「…なんでしょう?」
「…他の方から聞きましたが、最後は抵抗したそうですね」
「…被害者だったあの人達の手を、これ以上、汚させるわけにはいきませんでしたから…」
「…なるほど」
「私も同じような経験をしたのでわかります。あのまま行くと怒りに身を任せた彼女達はより苛烈になると思ったんです。ブレーキが壊れた機械のように…」
最初のスイーツ店の襲撃を思い出す。
ホシノさんが来なければ、あのまま私は暴走していただろう。
「あの場にいた全員がそうなっていた場合、私は間違いなく死んでいたと思います」
「!」
「被害者だった彼女達に人殺しの罪を背負わせてはいけない。そう思って、がむしゃらに抵抗したんです」
「……」
「…よく考えてみたら、より苛烈になっていた可能性が高いですね。ですが…」
「ですが…なんでしょう?」
「…何もせずに死ぬことが嫌だったのかもしれません」
「…自分の命を投げ出すつもりはなかったと…」
「…まだやり残したことが、たくさんありますから」
これは紛れもない本心だ。
料理、ゲーム開発、RABBIT小隊との合流、他にもやりたいことはまだまだあった。
「…多少は改善の見込みがあるということですね。では改めて、本日のカウンセリングは以上になります」
「…ありがとうございます」
「それと、最後に一つ…」
「?」
「口の内は大丈夫ですか?」
「すっかり完治しました。流石ミレニアムの科学力です」
ミユに撃たれた分も治してもらって、むしろ前より調子が良かった。
「それなら何よりです。では失礼します」
そう言って、ミネ団長は部屋から出て行った。
あの人も忙しいだろうに、私のために来てくれて、申し訳なかった。
少し物思いにふけっていると…
ウィーン
「「「ミヤコ(さん)ー!」」」
「だ、大丈夫?」
ゲーム開発部の皆さんが来てくれた。
「はい、もうしばらく入院は必要ですが、怪我はほとんど大丈夫です」
「良かったー!もうミヤコの料理食べられないかと思った!」
「お姉ちゃん!その言い方だと料理目的みたいじゃん!」
「そうです!ミヤコにはまだ、収録の手伝いとバッドエンドの確認というクエストが残ってます!無事で何よりです!」
「アリスちゃん…その言い方もそれ目的に聞こえるよ…」
「え、えっと…」
『自業自得ってやつだ』
ふと彼女の言葉を思い出す。
自業自得、悪い意味で使われることも多いが
良い意味でもあるらしい。
どちらにしても自分の行いの結果が自分に戻ってくるというものだ。
今の状況ははたしてどっちなのだろう。
「しばらく入院なら暇でしょ?その間ゴメンけどバッドエンドの確認よろしく!こっちもギリギリだからさ!」
そうして貰ったバッドエンドを見る…
少なくとも今は、悪い意味ではなさそうだ。
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(SSまとめ)