RABBIT around(前編)

RABBIT around(前編)


ミレニアムでゲーム収録に協力をしていた時のこと、

その日は料理の材料の買い出しに来ていた。

人混みの中、いつの間にかポケットに紙が入れられていた。

その紙には、存在していたあるグループの符号と建物の住所、

そして、『武器を持たずに一人で来い』と一言だけ書かれていた。

私は食材をミレニアムに置くために戻り、

置いた後に再び出かけて、指定の建物まで来た。

そこは廃墟になっていて、周りには他に建物はなかった。

「…へぇ、約束通り来たんだ」

建物の前には、見覚えのある顔があった。

あるグループのメンバーの一人だった生徒だ。

「…みんな会いたがってるからさ、入ってきなよ」

私は彼女に誘われるまま、建物の中に入った。

建物の中は体育館のような広間になっていて、

彼女達の仲間が何人も集まっていた。

グループに参加していたメンバー以外にも

私がアビドスにいた頃に同じように潰してきた組織のメンバーもいた。

ドゴッ!

「ウグッ!?」

私は、案内した彼女から殴られた。

「…私さぁ、中毒者になっちゃったんだよねぇ」

ドガッ!バキッ!

彼女は私を何度も殴りつけて、私は倒れた。

「…なりたくもない中毒者になって、治ったと思ったらリハビリばっかりで嫌気がさして、

ゲーム収録の話を聞いて、気分転換になりそうだから参加してみたらさぁ!」

ギリィ!

「イッ!」

彼女は私を強く踏みつけた。

「あんたがいたの…」

グググッ

彼女は踏みつけたまま、私に体重をかけた。

「…私昔から物覚えが良くてさぁ、声を聞いただけで一発で分かった。アイツだって」

「……」

「私たちのグループにいたヘルメットを被ったアイツ、リーダーが信頼していたアイツ…

その信頼を裏切って私たちのグループに『砂糖』入りのジュースを差し入れたアイツ!」

ガシッ

彼女は私の頭をつかんで無理矢理起こした。

「お前だよ!お前!私たちを狂わせた、『砂糖』を取ってないのにアビドスの屑どもに従っていたお前だよ!

そんなあんたがゲーム開発に協力?ふざけるのも大概にしろ!」

ドガッ

私はそのまま床に叩きつけられた。

「ここにいる奴らはみーんなあんたに恨みを持ってる連中だよ。自業自得ってやつだ。

まだこんなもんじゃ終わらない。もっと痛めつけてやるから覚悟しろ!」

ドスッ!バギッ!ドガッ!ボゴッ!ドゴッ!

周りにいた他の人達も暴力に加担してきた。

「よくも私たちを中毒者にしたな!」

「アンタのせいで!アンタのせいで!」

「正気のままアレに加担するとかイカれてるんじゃないのか!イカれてるんだったなぁ!」

「少しは反撃でもしてみたらどうなのよ!」

「元凶なんて関係あるか!お前らは…お前だけは赦せない!」

それから、どのぐらいの時間が経ったかわからないが

私は暴力を受け続け、相手の皆は銃まで持ち出してきた。

バン!バン!ダダダダダダ!ダァン!ドガーン!

「ケホッ…ケホッ…」

ガシッ

再び私は頭をつかまれた。

「私たちの痛みはこんなもんじゃないぞ!何とか言ったらどうなんだ!」

「……なさい」

「あ?」

「…ごめんなさい」

「……」

「……行動はともかく…あなた達の恨み自体は…ケホッ…正当なものです…私がしたことは…どう足掻いても…赦されるものではありません…

『砂糖』の被害を与えただけではなく…被害者だった皆さんに…こんなことをさせてしまって…ごめんなさい…」

私は彼女達に謝罪の言葉を言った。

ゲーム開発に協力を申し出た時点で、いつかこうなることは覚悟していた。

彼女達の怒りは正当なもので、被害者だった彼女達が私に報復をすることは当たり前のことだ。

私は、被害を与えたことと、被害者である彼女達に暴力を振るわせているこの状況を謝罪した。

「…ふざけんな!」

「!?」

案内した彼女が、私の口の中にショットガンを押し込んだ。

「そんな謝罪で私たちの気が済むと思うか!甘いんだよ!謝罪の一つや二つで…この恨みがはれると思うな!」

…その通りだ。

彼女達の気持ちは痛いほどわかる。

スイーツ店を襲撃した時、店員を痛めつけても全く気分がはれなかった。

ただ怒りが次から次へと沸いてくるだけだ。

きっと彼女達も同じなのだ。だから…

ダァン!

「!!」

「はっ、ざまぁみろ」

ガシッ!

「は?」

これ以上、怒りに身を任せる彼女達の手を汚させるわけにはいかなかった。

ブン!

「なっ!?」

私は口に突っ込まれたショットガンを掴み、体の向きを変えて、撃ったことで油断した彼女から力づくでショットガンを取り上げた。

「おい!私の銃!」

「ゲホッゲホッ…やはり口の中を撃たれるのは…ウグッ…いいものではありませんね」

私は奪ったショットガンを持って、ふらつきながら立ち上がった。

「何のつもりだお前!」

「…これ以上、私なんかのために、あなた達の手を汚させるわけにはいきません」

「はぁ?何言ってやがる?」

「加害者は私だけで…ゴホッ、充分です」スチャ

ショットガンを彼女達に向けた。すると彼女達は…

「プッ、アハハハハハハハハハハハハハ!」

「「「「「「「「「「アッハッハッハッハッ!」」」」」」」」」」

私を馬鹿にするように笑い出した。

「本当にイカれてるなお前は!そんなボロボロの身体でこの人数相手に勝てると思うか?」

確かにその通りだ。

口の中に撃たれたショットガン以外のダメージもかなりある。

正直、立っているだけでやっとだった。それでも…

「SRT…舐めないでください!」

彼女達を止めるために、立ち向かわないわけにはいかなかった。

「チッ、やっちまえ!」

「「「「「「「「「「うぉおおおおお!」」」」」」」」」」

案内した彼女の声を合図に、複数人で襲い掛かってきた。

その時…


ドーン!!!


突然、入り口が吹き飛んだ。

「なんだ!?」

どうやら相手側も想定外だったらしく、案内した彼女が驚いていた。

砂煙が収まるとそこには…

「ミヤコ!大丈夫ですか!助けに来ました!」

アリスさんが『光の剣』を携えてそこに立っていた。

「どう…して…」

ここがわかったのかと聞く前に

「今日は収録日だったはずです!ゲーム開発部以上に時間を守るミヤコが忘れるなんて考えられません!

きっと何か妨害イベントがあったと思い、監視カメラをマキに調べてもらったら、

ここに入っていくのが見えたので皆で来ました!」

そうアリスさんは答えた。

「…皆…とは?」

「収録に来ていた皆です!」

…たしか今日の収録は…あっ

「…やはりあの時、強引に救護するべきでしたか」

「ダメですよミネ団長!ミヤコさんにも事情はあったんですから…」

「…ですが今は救護は必要そうですね」

「…というかマコト先輩、なんで我々も来たんですか?」

「キキキッ、ここでミレニアムに恩を売るのも悪くはない。トリニティだけに活躍させるのも癪だったしな」

「ミヤコちゃーん!大丈夫ですかー!」

「ミヤコさん、これが終わったら是非ラーメンを所望します」

そう今日の収録は、バッドエンド救済コーナーの収録だった。

つまりここに来ているのは、

現在トリニティのトップであるミネ団長、

アビドス対策委員会のアヤネさん、

ゲヘナの救急医学部のセナさん、

同じくゲヘナのパンデモニウム・ソサエティー所属の戦車に乗ってきたイロハさん、

そのパンデモニウム・ソサエティーのトップにしてゲヘナ全体のトップであるマコトさん、

ミレニアムのトップ組織であるセミナー所属のコユキさん、

ミレニアムのエージェント集団C&C所属のトキさん、

そして、ゲーム開発部所属のキヴォトスを救ったアリスさん…

…政治的にも物理的にも過剰戦力すぎます。

「「「「「「「「「あわわわわ…」」」」」」」」」」

あまりの戦力差に、相手の皆さんは狼狽えていました。

その後、相手の皆さんは全員が即座に降伏したところで、

私はそのまま意識を失った。


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後編へ続く(SSまとめ

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