Permanent

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・別世界弟と高校生兄




言われた通り机越しに両手を差し出して雑に乗せられた箱の重みにどんなお菓子かとワクワクして開ければそこには小さな、四色の宝石が並んでいた。

「お菓子?」

「誤飲するなよ」

お菓子じゃないらしい。ガッカリして1つ手に取ると炎のような赤が光に反射して揺らめき耀いていた。他にも黄色、青、水色⋯⋯

「良い頃合いだろう。代わりに付けておけ」

言われてピアスだと気づきやっと思い出す、そっか、そういえば耳に穴開けたんだっけ。

開けてから1ヶ月ファーストピアスというのをつけていたが最初にあった異物感はとうに消えてしまってすっかり忘れていた。手入れはよく分からないからクロに任せていたし。

「どうやって付けるの」

小さな留め具がついていてなんとなく構造は分かるもののイヤリングさえ付けた事がない自分には全くもって謎な物だ。

「まず今つけてる」

「それもどうやって外せばいい?」

呆れた顔で吸っていた葉巻を灰皿に置いて目の前で少し屈む姿に本当に弟はこんなに大きくなるのだろうか。と、考える。

ここが別の世界でクロはここだと兄がいないから弟でさえないと納得しつつも弟が少しづつ成長する姿を眺めていたい自分としてはなんだか楽しみにしていたモノのネタバレを見てしまった様な気持ちになる。

まあ私の世界には海賊なんて今外国にしかいないし兄がいる世界でクロに怪我なんてさせないから全然違う姿かもしれない。

「付けるから動くな」

などと考えている内に外し終わったピアスを机の上に転がして箱から取り出した方を指輪だらけのゴツゴツした手が耳に触れて器用に付けていく。弟は結構細かい作業が好きだし、やる? と聞くと喜んでやるのを思い出す。

留め具を動かす感触に触れられることへの嫌悪感が湧かず不思議がっていると、声をかけられる。

「覚えたか」

「覚えた。でも付け外しはクロにやってもらうから」

元の世界に戻ったらきっと珍しがって興味を持つに違いないしクロがもし開けた時の練習になるよね。

ふと手が止まっているのに気づいて顔をあげるとまじろぎもせずにクロが私を見ていた。

「なに?」

「⋯⋯なんでもねぇよ」

全部付け終わるとおもむろに懐からもう1つピアスを出す。

あ。

「今クロが付けてるのと同じだ」

「偶然だな」

それだけは新品じゃなくてちょっと古いし他のと違う形状の物だ。

左に2つ、右に3つ。僅かに感じる重みに少し心が弾む。

小さな鏡を手渡されて覗き込んで気づいた事をそのまま口に出した。

「あっこれ指輪と同じ色だ!」

「そこは同じ“石”とでも言え」

どっちでも同じだと思う。


もう用は無いと言うように仕事に戻ってしまったクロを横目に私は暫く元の世界での弟に似合うピアスを考えていた。








蛇足で湿度が高過ぎたのでそれを許せる方のみ

https://telegra.ph/Linden-viburnum-03-26

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