⚠️GLOBO

⚠️GLOBO


「これ……ふうせん? な、何……?」


先程メンテナンスが終わったと聞き、早速プリントで手に入れた道具を自室で確認していたスグリは見慣れない道具に戸惑う。


名称は確かに“ふうせん”だ。

しかしその形状はまるで地元で買うラムネのお菓子の袋のよう。


そもそもなぜメンテナンスが行われたかというと、姉妹校から呼んだ特別講師のポケモンが遊んでるうちにうっかり故障させてしまったので、向こうの地方からも人が加わり修理されたのだった。


もしかして地方によって道具の効果が変わったりするのだろうか?一時期バトルの勉強に明け暮れた自分でもそこまでは詳しくない。


見慣れない道具。一時期とはいえ頂点に上り詰めた自分が効果を分からないとは言い難い。

そうなると正直に聞けそうな相手はほとんど限られる。悩みながらも思いついた脚があまり夜遅くならないようにと急ぐ。


☪︎✦••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈*̣̣̥


「こぉんなこともわからないの?スグってばお子ちゃまねー」


いつか聞いた姉の幻聴が脳裏に浮かぶ。

防御反応だろうか。それと同時に真逆の声も反射的に思い出した。


「なかなか分っかんねぇことがあっても、オイラにだけは何度聞いてもいいぜぃ〜」


まだ入部したての頃だった。言ってる本人が何度言っても覚えないような信用感を抱える言葉に今は縋ってみようと思ってしまった。


もう一度……ゼロから始めたい……

絶対這い上がってくるから……それから対等に…………


扉の先でわやわやと頭を抱えるスグリに気がついたのは寝付けない龍だった。


☪︎✦••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈*̣̣̥


「どうしたんだスグリ〜?そんなに廊下ん中ウロつかれちゃあ まぁたオイラが何かしたと思われちまっ……」

「か、カキツバタ! あの……さ!」


カキツバタの言葉を遮り、まだ若干躊躇いの混じった声で聞く。


「使い方分かんね道具出てきた……カキツバタ……前に言ってたよね?何度聞いてもいいって……」


そう言い“ふうせんのようなもの”を見せるとカキツバタの顔色が変わる。


「確かに部活で何度でも聞いていいとは言ったけどよ…… “何でも”聞いていいとは言ってねえぜぃ?」


カキツバタの声は、スグリにはどこか冷たさを含んだように聞こえた。


やっぱりまだどこかで怒ってる?

俺があんな態度を取り続けたから?

みんなが当たり前だと思ってる事を知らないから……


「あのよースグリ……そんなもんどっから出てきたんだ?」


青くなって堕ちていく林檎にカキツバタが網を差し出す。


「ど、どこって……部室のどうぐプリンターだけど……

 道具って地方によって効果とか……違うの……?」


見当違いなスグリの発言にカキツバタの呆れた顔がニヤつきを取り戻す。


「……はーん? スグリよぅ、それって……」

「ポケモンっこさどう持たせたらいいかすらわかんね……うう……」


ずずいとカキツバタが顔を近づけ、玉子色を覗き込む。まだ生まれていないかどうか探るように。


「オイラも何度でも聞くぜ? それ、何だ?」

「何って、ふうせん……たぶん、パルデアの……」


ははあん?とカキツバタが口元に手をやり推し量る。あれ?地方じゃない?じゃあ道具を作っている会社?

どちらにせよ少なくとも自分よりかは“この何か”について知っているようだ。


「んー……こういうことも覚えとかないとねぃ。

 ここじゃあ何だから、オイラの部屋で話そうや」

「わ、わかった……」


お互いに聞き返したことで少しだけ、でも確かに埋まった溝があった。

扉の閉まる音と共に“もう一つの悩み”をどうするか……思い巡らすカキツバタ。


杯の中に映るは蛇の影、二匹。


▶︎ ……🐾

Report Page