83後日談(了)5.通り雨 6.たそがれ
72短かったのでまとめました。これで一応オチです。ありがとうございました。5. 通り雨
「少しは落ち着いたか」
「…ここは?僕…」
「俺の隠れ宿だ。無理に起きあがらなくていい。寝てないんだろう。少しでも横になって休め」
「ありがとうございます。だいぶ楽になりました」
「デク…さっきまで『おっぱい』といいながらうなされていたんだが……俺のせいなのか」
「……多分、はい。あっでも、僕の問題かもしれなくて…!」
「いずれにせよ難儀なことになったな」
「僕も悩んでいるところなんです…」
「…外ではゆっくり話をさせてやれずにすまなかった」
「こちらこそ強引に遊園地にまで誘っておきながら本題を引き延ばしてしまって……これで最後になるのかなって思ったら、つい……夢だったんで」
「夢?」
「好きな人と遊園地…」
「………」
「………」
「…デク。俺には好きだの恋だのは正直良くわからん…語る資格すらもないだろう。だから一般論として聞いてほしい。俺は妻帯者で焦凍たちの父親だ。そもそも、そういった好意は家庭がある人間に伝えるものではないと考えている……意味は分かるな?」
「はい…ごめんなさい」
「古くさい価値観だと思うかもしれんが君は優秀な若者でこれからもヒーローとしても活躍する。だからこそ人の道を踏みはずすことがあってはならないと思う」
「はい。僕もよく…分かってます。最初からもうどうにもならないことは分かっていました…」
「……そんな顔をするな」
「………」
「今回のことは俺が不用意に君に触れてしまったことが発端だ。だから全て責めは俺にある。罵倒でも訴訟でも好きにするがいい。…ただ轟の家には迷惑をかけたくないというのが本音だ」
「知ってましたよ…でもその言いかたはちょっとズルいですね。僕が何もできなくなるのを分かって言ってる」
「…すまない。だが、ここまできてしまった以上、大人として君の気持ちはひとたびは受け入れようと思う」
「ええっ??受け入れて…くれるんですか?」
「ああ」
「…僕の気持ちは…正直…まだよくわからないんです。あなたのおっぱいに昼も夜も心乱されてしまって困惑したし、色々考えてしまう自分自身にショックでした。最初はあなたのことが好きなんじゃないかって思いました。でもまだよくわからない」
「いずれにせよなんらかの好意であることは確かなんだな?」
「はい」
「ならば…その気持ちは嬉しい」
「えっ…!?」
「しかし俺は…うおっ」
「エンデヴァー!!」
「ちょっとまて…デク!腕を離せ!話を…最後まで」
「僕もうれしい…うれしいです!!」
「……!」
「そんな分かりやすく困った顔しないでください…嘘でも、うれしい」
「っ……俺は………」
「でもあなたもここに連れてくるくらいの好意は僕にあるんですよね?しかもこんなお布団しかない部屋…」
「部屋が狭いというのか布団が大きいというのか…おそらく両方だな」
「部屋もお布団も…あなたの匂いがいっぱいで僕もう頭がおかしくなりそうです」
「う…それは…すまん…もっと考えるべきだったか…」
「……エンデヴァー」
「な…なんだ」
「もう一回あなたに触れたらはっきり分かりそうな気がする」
「…デク?」
「受け入れて…くれるんですよね」
「何をするつもりだ」
「触ります」
「……っ…デク!」
「嫌なら跳ね除けてください。僕は燃やされたって止まらないけど」
「出来るかそんな…」
「…エンデヴァー…」
「…‥‥……」
「……わ…‥‥あったかい…エンデヴァー……やっぱり…すごい…………おっぱい…」
***
「……………もうそろそろいいか」
「もう少し…このままで…ああ…すごく柔らかくて気持ちいいです」
「…その…そこをやたら撫で回すのは…妙な気分になるから…やめろ」
「妙な気分?」
「少し…こそばゆい…」
「エンデヴァー!今僕はっきり自覚しました」
「うん?」
「おっぱいじゃなかった。いや正確にはおっぱいだけじゃなかったんです!」
「何がだ」
「おっぱいだけじゃなくてこのお腹も太もももお尻も首筋も…すごくすごく魅力的なんです!もしかしたら僕おっぱいで頭がおかしくなったのかもしれないけど僕にはそう見えてしかたがないんです…一度そんな風に見てしまったらもうあなたの素晴らしい肉体全てから恐ろしいほどの魅力を感じる。精悍で男らしい顔立ち、憧れます。低い声もすごくかっこいい。瞳もとっても綺麗で吸い込まれそうだ…首も肩もがっしりとして太くってたくましくて…おっぱいもお尻も腕も太い指も大きな背中も太ももももうすっごくすっごくエッチなんです!!!」
「な…何を言ってるんだ」
「エンデヴァー…僕あなたが欲しい」
「…なんだと??」
「受け入れてくれるんですよね」
「いや、待て…待て!!!」
「僕はあなたの匂いにも興奮する!」
「やめろっデク…そんなところに顔をつっこむな!!」
「エンデヴァー…鼓動が速いです」
「うっ…そこは…さ…さわるな」
「僕の中でいろんなものが限界超えました…!みんな何か言ってくれてるけどこれは僕の問題!」
「みんな??何のことだ」
「僕の気持ち結論、出ました!」
「落ちつけ、落ちつくんだ!」
「抱かせてください!!!」
「…デク…君は自分で何を言ってるのか分かってるのか?」
「あなたこそ分かってますか?僕こんな状況で何もできない子供じゃないです」
「まっ…待てデク!!…こ…こういうことは本当に好いた相手としたほうがいい…と思うぞ!」
「『と思う』って何ですか?本当にそうなんですか?何か違うんですか?」
「……むぅ」
「大人として受け止めてくれるんですよね」
「う…うう」
「あなたが僕にしてくれたように思い切りギュッと抱きたい…」
「う…ん?」
「行きます!」
「…………」
「…………」
「…エンデヴァー……ああ……僕の腕のなかにあなたがいる… …傷だらけで悲しくてすごく苦しいんだ…もう僕のほうが泣いてしまいそう…………あなたの心も全部……こうして抱きしめられたらいいのに…」
「……何を…言ってるんだ」
「…………」
「デク???…寝とるのか??」
「…………」
「なんだ…なんなんだ…もう…」
「…エンデヴァー」
「うん?……寝言か…」
「…好き…です」
「…………」
「…………」
「…困った…な…」
***
7. たそがれ
「いかん!寝入ってしまった…何時だ?!デクは?」
「オールマイトが首根っこ掴んで連れて帰りましたよ」
「ホークス…」
「何があったか知りませんが、まさかのひとつ布団の中でしっかり抱き合って寝てるとは…まあ…あなたじゃなかったら完全に事案ですよ!びっくりしたなあもう」
「…デクがな、俺を抱きたいというものだから」
「やっぱやばいことになるとこだったんだあっぶねぇ」
「うん?」
「いやこちらの話。そうそう緑谷くんがこれを」
「例のノートの紙だな。『今日はありがとうございました。ふっきれました。 僕はもう大丈夫です』… あいつも大概嘘が下手だな」
「まあ思春期によくある年上への憧れみたいなもんすかね。これでひとまずは一件落着てことで。エンデヴァーさんホントお疲れ様でした」
「まったくだ…もうやたらめったら揉まれたせいで胸に少し違和感が…」
「大丈夫っすか?」
「じきに収まる。俺は大丈夫だ……だがデクのやつ……俺の胸で…泣いていたな」
「は?」
「ホークス。俺は結局あいつを泣かせてしまった。ただでさえ苦労の多い宿命をその身に負っているというのに…本当にかわいそうなことをした…」
「エンデヴァーさん…?」
「しかしあれでよかったのだろうな。…デクのやつあれだけ俺に好きだのなんだの散々言っておきながら‥‥最後は…オールマイトのところに戻っていくのだから…」
「ええっ…エンデヴァーさん??」
「…今日はなんだか夕暮れが美しいな」
「エンデヴァーさん…マジか」
終わる!
→後日談のエピローグとかいう訳わかんない状況で続く