4Bルート解説

4Bルート解説


目次 前話


『終わりになんてさせません。まだまだ続けていくんです。私たちの物語、


           Sugar Archive

       私たちの砂糖の物語を』

 


セイア「待たせたね。カズサのバッドエンドのルート分岐はこれにて完結だ。楽しんでくれたかな?」

ナグサ「待った結果が、これ……? 救いは……?」

セイア「そこになければないね」

ナグサ「モモイはどこ?」

セイア「ミドリと服を交換してから遊びに行ったよ」

ナグサ「外道だ」

セイア「まあそんな浅知恵すぐに見破られるに決まっている。あと30秒で捕まって潰される未来だ」

ナグサ「悪は滅びたんだね」

セイア「私としてはゲーム開発が遅れるから限度を考えて欲しいものだが……夢の中ということで勝手に先行プレイしている身としては、無事発売されてもらわないと盛り上がりに欠ける」

ナグサ「え、まだ発売されてないの?」

セイア「実はそうなのだよ。夢の中だと多少時間が進んでいてね。向こうの彼女たちはこちらを認知はしていない。ゲームで作られたイフとして観測されてはいても、こちらから観測されているとは思いもしないだろうね」

ナグサ「オカルトじみてきた」

セイア「幽霊を撃てる銃を持っているんだから、それくらいは有ってもいいだろう?」

ナグサ「そうかな……そうかも……」

 

セイア「話が脱線したか。それじゃ解説といこう」

ナグサ「お願い」

セイア「『諦めない』ルートと『諦める』ルートの大きな違いとしては、死者の数だろう。激突することよりも戦闘を回避して逃げ出した結果、ハナコやヒナたちの戦いはなく、風紀委員会、C&Cなどにも被害は出ていない」

ナグサ「亡くなったのはカルテルトリオの3人だけってことでいい?」

セイア「そうだね。和解を目指しているのに殺し合ってしまうのは意味がない。ホシノたちが死んだのは誰からも予想外の出来事だった」

ナグサ「後先考えない衝動的な自殺……あれは予想できるものではないよね」

セイア「元凶と思われるカルテルトリオが居なくなり、アビドスは組織として瓦解した。悪い魔王はいなくなってめでたしめでたし、だ」

ナグサ「本当にめでたし……なのかな?」

セイア「『諦めない』ルートよりも両陣営の被害状況が軽い以上、復興も容易だろう。ここだけは明確に良いと言える」

ナグサ「正直五十歩百歩な気が……」

 

ナグサ「アポピスって結局どうなったの? 死んだホシノたちの体を使って起き上がったところまでしか出てないけど」

セイア「存分に砂糖を広めるために行動するだろうね。なにせホシノが死んだから」

ナグサ「? ホシノは今まで砂糖を広めてたし、変わらなくない?」

セイア「見境が無くなる、という方が正しいかな。ホシノは砂糖を利用する目的として『アビドスの借金を返す』『砂祭りを開催する』という名目を掲げていた。けれどその目的は達成されているうえに、ホシノが死んだから次の目標がない。なら方法を選ぶ必要もないという訳だ」

ナグサ「……方向性を与えることでアポピスを制御していた?」

セイア「結果的にはそうなる。まあ砂糖を広めて麻薬中毒を大量に生み出したのは変わらないから、実はホシノは正しかった、なんて彼女自身擁護されたくはないだろうけど」

ナグサ「それは……うん、そう言うと思うな」

セイア「まあそういう訳で動き出したアポピスだが、死体を弄んでいるのを見て他の人間がどう思うか、なんてアポピスは考えていないから、このあとの連合はマジギレするけど」

ナグサ「うわ」

セイア「ちなみにアビドス側の生徒たちも砂糖がきっかけとはいえ、元アリウス生徒みたいに、アビドスを新しい故郷と決めたものもいる。トリオの3人の人徳に惹かれていたものも多数いる中、動く死体を見てしまえば……」

ナグサ「アポピスハードだ」

セイア「故郷に巣食う病巣を刈り取らんと一致団結するかもしれないね。まあ泥沼の戦争になるだろうさ。ヒマリも言っていたように、交渉が上手く行かなかったのだから、キヴォトスが滅ぶまで続くだろう」

 

セイア「さて、その後の社会的なことは解説したし、カズサの精神についての解説に移るか」

ナグサ「心が折れて諦めたからこのルートになった訳だけど、諦めなかったらブラッドアーカイブにつながるなんて、どっちを選んでも詰んでる」

セイア「既にバッドエンドが決まってしまった後だからね、仕方ない」

ナグサ「対策委員会の子たちと一緒にいてメンタルは回復してたのは分かったけど、それでも難しいことなんだ」

セイア「心というものは一度折れ目が付いてしまえば、その折れ目を払拭することは難しいんだ」

ナグサ「うっ、アヤメ……」

セイア「別のトラウマを刺激してしまったかな? ともあれカズサは反逆の牙を抜かれてしまった。それ以降は直接対決を避ける傾向が出ているものの、本人はそれを自覚できていない。まだ戦う意志はあると思っている」

ナグサ「私もユカリたちと顔は会わせづらい」

セイア「そういうことだ。メンタル面の回復はできた。体調も戻った。けれどこのカズサでは限界を超えられない」

ナグサ「諦めないルートの方が強い?」

セイア「そちらは反骨心を養っていたからね、爆発力が違う。いうなれば諦めないルートのカズサの戦闘力はベストを基準の100とすると60~120といったところか。揺らぎは大きいが限界を超えて強くなれる部分がある」

ナグサ「こっちの諦めたルートは?」

セイア「常に85くらいだ。メンタルが安定しているがゆえに、テストでは合格点を取れるが、トップには立てない」

ナグサ「なるほど」

セイア「ちなみに心折れてホシノによしよしされていた時は5だ」

ナグサ「戦闘力たったの5か、ゴミめ……」

セイア「ちなみにホシノの戦闘力は53ま……ゴホン、いやなんでもない。さすがにこれは盛り過ぎだったか」

 

セイア「メンタルは安定した、けれどホシノと戦うのは怖いカズサはアリスから齎された情報に飛び付いてしまった。自分でも何かできることがあると期待してしまったんだね」

ナグサ「何かしなければと動いた結果だけど、それは悪いことなの?」

セイア「いいや違う。対話を目指すことは間違っていない。トゥルーエンドでも対話は重要だからね」

ナグサ「ではなぜ?」

セイア「情報に飛び付いた、と言っただろう? カズサはヒマリたちに任せれば後はどうにかしてくれると思って思考停止したんだ」

ナグサ「……あー」

セイア「あの時ノノミの言葉に耳を貸していれば、もしかしたらこのルートでもどうにかなったかもしれないね」

ナグサ「ノノミが?」

セイア「忘れているかもしれないが、ノノミは一番ホシノと過ごした時間が長く、関係も深い。それこそヒナやシロコよりもだ。それはつまり、対策委員会時代のホシノやその前の孤独にアビドスを守っていた時代を知っているということだ」

ナグサ「カズサは1人でアビドスを守るホシノを知っていたノノミを説得して、皆で逃げ出したね」

セイア「そこが最終分岐点だろうね。ノノミも自分たちが逃げ出してホシノが即座に自殺に走るとはさすがに思わなかっただろう。これは対策委員会がずっと閉じ込められていて砂糖中毒者から隔離されていたから、現実味が湧かないのも仕方のないことなのだが」

ナグサ「カズサは砂糖中毒者の行動を知っているから、想像力が足りてなかったのかな?」

セイア「あるいは敗北したことで、どこかホシノを神格化していたのだろう。最後にもこんな簡単に死ぬ奴じゃないと叫んでいたし」

ナグサ「そうだった……じゃあどうすれば良かったんだろう……?」

セイア「カズサは連合とアビドスが交渉のテーブルに付くために必要な対策委員会の人質ではない。なら対策委員会だけ逃がして、自分は時間稼ぎに残るというのはどうだい?」

ナグサ「……トラウマがあるから護衛を買って出たのに、それはあまりにも酷だよ」

セイア「ホシノにはそんなこと分からないからね。結果がホシノの孤独死だ」

ナグサ「でもカズサだけ残っても自殺してしまうんじゃないの?」

セイア「いいや、しない。カズサは既にホシノの中で、対策委員会と同じくくりに入れられている。そうでなければ同じ部屋に入れたりしない」

ナグサ「土地も人も余っているものね。それこそ諦めないルートみたいに牢屋に入れても良かったし」

セイア「自分だけでも残っていればホシノは自殺せずに済んだという事を彼女は知らないが……これは知らない方が良いかもしれないね」

ナグサ「……悲しいことだね」

セイア「いうなればアビドスと交渉するという連合の権力に縋り、自らホシノと対話するルートを捨てたのがこのルートだからね」

ナグサ「ままならないね」

セイア「結果としてホシノを自殺に追いやってしまったと思い込み、心が砕けてしまう。お人形カズサの完成だ」

ナグサ「ホシノたちもアポピスに死体操られているし、そっちもマリオネットのダブルミーニングだね」

セイア「人形みたいになったとはいえ死んだ訳ではないし、起きて動いているホシノを見たら目が覚めるかもしれないよ?」

ナグサ「それ死体じゃないか。悪夢でしかないよ」

セイア「アポピスに憑り付かれたルートと違って救いは……どこだろうね?」

ナグサ「おい」

 

ナグサ「ホシノって強さや硬さが異常に描写されるけど、特定ルートだとあっさり死に過ぎでは?」

セイア「前は自殺できなかったのに、ルートに入っただけで変わり過ぎということかい?」

ナグサ「そうそう」

セイア「これはどちらのルートでも共通なのだが、ヒナやハナコならともかくアポピスの核のあるホシノはたとえ『ヘイローを破壊する爆弾』であっても、特定条件が重ならない限り死ぬことは無い」

ナグサ「その条件は?」

セイア「砂祭りを開催して、ホシノが終わりを宣言することだ」

ナグサ「……それだけ?」

セイア「元々ホシノの目的はアビドスの借金を返済して砂祭りを無事に開催することであり、アポピスの目的はキヴォトスを砂漠に沈めることだ。砂糖の精製も都合よく摂取させて手駒を増やすことができるという副次的なものにすぎない」

ナグサ「それは分かっているけど……あ、冒頭のアレってそういうこと?」

セイア「その通り。アポピスとしてもホシノは優秀な手駒だ。元から強いうえに、砂糖の強化により敵はいない。カリスマ性があり人を集められる。双方の目的と利害が重なっている間はわざわざ死なせる必要は無かった」

ナグサ「でもホシノの目的は達成されたから、これ以上続ける必要が無くなった」

セイア「いかにも。砂祭りが終わるまでは同じ方向を向いているのでアポピスも協力しているが、砂祭りが終わりホシノがこれ以上のやる気を失った時点で、まだまだ続けるつもりだったアポピスからしたら邪魔になってしまった。言う事を聞かないなら死体を使った方が良いと判断されてしまったから、爆弾一つで死んでしまったのだ」

ナグサ「なるほど……ホシノが砂祭りが終わっても満足しなかったら、つまりまだ続けるよって言っていたら……」

セイア「あっさり死ぬことは無かっただろうね。敵対するミレニアムを呑み込み、アルの誕生日パーティーではっちゃけていたかもしれない」

ナグサ「……でもホシノは自殺してしまった」

セイア「砂糖の摂取者は怒りっぽくなり、視野が狭くなる。絶望を感じてしまえば衝動的に行動してもおかしくないというのはもう当然のような流れだが……アビドスのトップとして振る舞うことで今までずっと抑えていたんだがね」

ナグサ「孤独を感じて、それに耐えられなかった」

セイア「蛇の囁きによって狂ったのは確かだが、最期の引き金を引いたのはホシノ自身だ。ある意味ホシノもこれ以上アポピスとの対話を『諦めた』からこそ、死ぬに至ったのだろう」

ナグサ「死に向かうホシノを、ハナコやヒナでは止められなかったの?」

セイア「全員大罪を犯している自覚はあるし、そうでなければ後追いなどしないさ。一緒に地獄に行くことはできても、地獄から引きずり上げることはできない」

ナグサ「希望となるには、やっぱり対策委員会か、カズサがその場にいないとダメだったってことなんだね」

セイア「そうとも……これはトゥルーエンドからの逆算でしかないのだが、孤独の寒さに震えていたあの時の彼女に、もしマフラーを巻いてあげられる者がいたら、結末は変わっていたのだろうね」



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