2スレ112触手姦経由の純愛ユママコ(破)1/6
まだ完成してません! 加筆修正するかもです。BL・純愛になる予定・純愛だけどリョナ凌辱前提・触手姦描写・破のプロローグですJanuary 01, 2024https://telegra.ph/2スレ112触手姦経由の純愛ユママコ序22-10-24
これの続きです。
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セフレの約束が結ばれて以降、ユーマは本当にカナイ区近隣で仕事を開始した。遠方の依頼に関しては、何処からともなく協力者を得て安楽椅子探偵のような事をしているらしい。
十中八九その協力者の中にはあの事務所にいた彼らもいるだろう。あまり協力者に負荷の掛からないように努力しているらしいが、どうせたらし込んでいるのだ。直接会ってやった方が相手も嬉しいだろうに……とマコトは考えている。
相変わらずクルミ(と死神の書)は回避し続けているようだが、そこまで広くない範囲でよくやるものだ。たまにカナイタワー周辺でも見るようになったのに、未だかち合っていないようである。
触手はカナイタワーのマコト家の一つ下の階でまだ飼育している。元々その階丸ごと檻にした上で、いつでも監視できるようにしていたのだ。この階はセキュリティも、部屋自体の堅牢性もより高くなっている。逃亡されては大事件だからだ。現在は定期的にマコトの血を与えて細々と生きているが……やはり目にするとマコトの身体は少し疼く。たまに、身を投げ出してしまおうか、とすら思う。それでも踏み止まってしまうのは、ユーマのせいだ。大変遺憾ではあるが——マコトは現状に概ね満足しているので。
月に数度、電話一本かければユーマは約束違えず遅くて次の日にはやってきた。どんな依頼を受けていても高速解決してはカナイタワーに訪れるのは、一種の妖怪のようである。マコトは少し引いている。
死ぬ危険性がないからと1日減った休みの中で、やることをやって、食事の心配をされて以降一緒に飯を食い、一緒に寝る。翌日に朝食を共にしてから別れる。
セフレというより恋人のようである。別に何処かに出掛ける訳ではないが、やってることは家でデートしてる恋人達である。
それを指摘するのはなんだか癪に障るので、マコトは甘んじてこの日々を受け入れている。受け入れて半年経った。
ただ、何事も不満は生じるものだ。マコトにも、ひとつ不満がある。
この関係が性生活に根ざすものな以上、その不満も自ずとそれに関する事だ。
それをいつ、どんな形でユーマに伝えるか。そもそも伝えるべきなのか。
「ひ、んぅ」
「あ、イけたみたいだね」
マコトはそんな事を考えながら、今夜も関係を続けている。最近最中に頭によぎり続けるのは、ユーマに対する「嫌いだ」という自己暗示と、不満に関してだ。
ほぼ自分との差がない肉体である事を差し引いても、ユーマの愛撫は的確だ。
マコトがどうやって壊されてきたかを知る記憶。積み重ねた日々の経験。元来持つ観察眼。そんなユーマの持つ要素がマコトを翻弄してやまない。
半年目に当たる今夜も、マコトはずっと翻弄されていた。口の中を丁寧に愛撫され、以降も丁寧に丁寧に愛撫され続け、既に2回絶頂している。
「マコトさん、もう何回かイってるけど、もう少しする?」
「……、ふ。もう、きょうはいい。ねる」
息が弾むのを抑え込んで、マコトは目を瞑りながら答えた。
行為を続行するかしないかぐらいの時に、マコトはよく目を瞑る。目を瞑ると、ユーマの手が自分の額あたりを緩やかに撫でているのをよく感じ取れるからだ。
「そっか。お風呂とご飯はいいの?」
「あさでいい……ねる」
そう言って布団を被る可愛い人を見守りながら「じゃあそうしようか。おやすみなさい」なんて笑いかけた。そのままマコトの隣に寝転び、彼を抱きしめる。ちょうどユーマの胸に頭が抱え込まれるような抱擁の中で、マコトは薄く瞼を開けた。
「……」
実のところ、マコトは空イキに関してもう恐怖とか、混乱するというより、気持ちいいことの方が勝る。ユーマの手によるものなら、射精を伴わない絶頂は嫌いではない。
初日以降、2、3回マコトが射精したらユーマは律儀に確認してくるが、最近は別に確認を取られなくてもいい……とマコトは感じつつある。別に口にしないが。
(それに、ボクを壊すことは絶対ないし)
仮に「もっとして」と言っても、ユーマはマコトの限界を超えるような事はしないということを、マコトは身を持って知っている。
以前、好奇心とちょっとの強がりから、マコトがおねだりした時があった。あんまりにも確認するので、やってみてよと。
その結果は恥ずかしいのでマコトはあまり思い出したくないが、ユーマの挙動は印象に残っている。
ユーマは、マコトに対して意識が途切れるまで愛撫を続けるなんて負荷の大きい事をしなかった。
いよいよマコトがしんどくなってきたあたりで、最後にイかせて適当なところで行為を打ち切ったのである。これは、絶頂という現象に対して、痛みと気絶と死が付随するのがデフォルトであったマコトにとって未知であった。
その後もマコトは彼から世話を焼かれ続けている。マコトが落ち着くのを待ってから、身体を洗ったのも、夕飯の用意(冷凍食品をレンチンしていただけだが)をしたのもユーマだった。
ユーマは、マコトの絶頂の法則を受けて、極々軽度の痛みは与えてくるが、それを総括しても彼の挙動は「相手を慈しんでいる」と分類できるものである。マコトはそれが腹立たしくあり、むず痒くもあるので、ユーマには絶対それを示唆するような事は言いたくない。
本当は今だって、別に自分で風呂に入れるし、食事をする事だってできる。眠いには眠いが、耐え難い程ではない。なら何故こんな挙動をしているのかと言えば、単にマコトが拗ねているからだ。
この抱擁が、マコトが眠りにつけば解消される事を知っている。眠ったのを確認してから、シーツを取り替えたりマコトの身体を軽く拭いたりしているのだ、ユーマは。どうにも食事と入浴のタイミングはマコトと合わせているので(別に合わせなくていいのに)他の事をしているらしかった。
後は仕事を少し熟したり、銃の手入れをしたり、そういった事で気を紛らわしている。それらが全て効果がなかったら。
(ボク、わかってるんだぞ)
暗闇の中で、着衣のユーマの下半身は、僅かに膨らんでいる。耳を少しでも澄ませれば、ユーマの息が少しだけ荒いのも、鼓動が速いのも、マコトには丸わかりだ。
我慢されてしまうだろう事を知りながら、マコトは張ったテントの頂きを指の先でつついた。
ユーマの身体が強張って、ぎゅっとマコトの頭が締め付けられる。息が一際荒くなる。
(変態)
自分の事を棚に上げて、マコトはピクっと震えたペニスを布越しに撫でた。強情な主人に従って、頑なに解放を禁じられているのは気の毒である。
それでもマコトはやめてやらない。
(もう半年経ったのにさ……)
恨み節を込めて展開されるのは、自分がされて気持ちよかった手コキの断片的な再現だ。布越しに十分剥かれてないだろう亀頭に意地悪する。
マコトを抱き締めて耐える癖に、応戦をしてこない腕が、手が、指が恨めしい。
マコトに愛撫してる時は動き回る癖に。
(ここまで、やってるのに、愛撫から先に進まないのはどうなんだ?)
マコトは既に知っている。行為の後、ユーマがトイレで抜いている事を。マコトを抱くどころか、着衣を乱さない奴がだ。
ユーマのマコトに対する世話や、気を紛らわしている過程。そこになんの物音も生じない訳もなく。必然的に、マコトが一度も目覚めた事がないなんてことはあり得ない。そもそも行為中にユーマが勃っている事だって彼は前から知っていた。知っていたから、ユーマがこの行為を終えたあと何してるか気になって、様子を伺っていたのだ。その過程で色々耳にしたし、察した。
扉越しに、自分の名前を呼んでいた事だってマコトは知っている。
「だいて」
小さな呟きは、ユーマの距離から拾えない訳がないだろう。それでも応じない頑なさに、マコトは苛立った。
「……しらない」
そうして飽いて、細やかだが致命的な悪戯は唐突に終わりを告げる。暫くすれば、安心できる腕の中で眠る少年の寝息が聞こえてくる。
相手は堪ったものではない。
むくりと、マコトをベッドに残してユーマが起き上がる。そして顔を覆って呻く。
「………………勘弁してくれよ」
元来の婚後最初の性交を示すのではなく、「恋人や夫婦ないし性行為を前提とする関係を持つ者同士が最初に性交する事」を初夜とするならば。
ふたりはまだ初夜を迎えていない事になる。
ユーマはまだマコトを抱いた事がなかった。これがマコトの最大の不満要因であり、ユーマの危機回避と理性からなるふたりの現状であった。
しかしそろそろ、ユーマの限界も近い。
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翌日、ユーマからのマコトの挙動への言及はなかった。マコトの方から指摘しようと思っていたが、どうにもユーマがフラフラ(平常と比較すると若干。恐らく多くの人は気づかない)なのでやめておいた。原因は察しが付く。
(寝不足じゃないか)
事実、あの後ユーマは文字通り一睡もしなかった。いや、できなかった。マコトが知ってる通りの気を紛らせる行動を粗方試し、その結果翌日分の仕事が完遂した。それはいい。
そろそろ自身が落ち着いただろうタイミングで、ユーマは恒例通りマコトの身体を拭ってやろうとした。
いざやってみたら、勃起したのである。
いや、正直最近は興奮する傾向にはあったがそんな復活するほどなんて……とユーマは自分に引いた。このまま触れ続けたら、自分のタガが外れてしまうかもしれない。その時に被害を受けるのはマコトだ。少なくとも、彼が自分の腕の中で無防備に眠る事は無くなってしまうだろう。そんなものはまだ良い方で、これまで積み重ねた信頼が崩れて、これなら触手の方が行動が予測できる分マシと思われたら堪らない。
新たなマコトのトラウマとして、自分が恥の殿堂を打ち立てる。
そんなことあって堪るか。
ユーマは事態を回避すべくトイレに籠城し、自身を慰めそのままベッドには戻らなかった。
明け方に一度寝室を確認してからは先に入浴。普段は入浴のタイミングを合わせているのだが、今日は本当に余裕がなかったのだ。
そうしてマコトが起きてくるまで彼はコーヒーをがぶ飲みし続けてなんとか夜を明かした。カフェインと寝不足でガンガンの頭で得た戦略的勝利だった。
早朝は早朝で、のそのそ起きてきたマコトをシャワー室送りにしたり、2人分の朝食のレンチンをしながら何杯目かわからないコーヒーをそれなりにきちんと淹れたりした。
その後、風呂上がりの石鹸の良い匂いがするほかほかな生き物に微笑ましさとちょっとの情欲を抱きつつコーヒーをサーブし食卓につく……ここまででユーマはどっと疲れた。朝なのに。
(ボクも相当深刻だな……)
でもそれは全てボクの所為とは言い切れないだろ。そう一人ごちたい気分で、ユーマは今日の技術の進歩を反映した、冷凍でも美味しいスクランブルエッグをつついた。眼前のマコトは、もさもさとトーストを齧っている。そもそも体躯も手も小さいので、トーストが必要以上に大きく見えた。ユーマも全く同じ体格なので、「他者が自分を見る時もそんな風に感じるだろう」という客観的視点で見守る。そこに不純が混ざるのは致し方ない事だろう。
その指が自分に昨晩何をしたか。あの小さなお誘いの声にどんな甘い響きがあったか。そんな事が頭を過ってしまう。
これはユーマだけの所為ではない。
(ボクだって、興奮してるんだぞ)
それでも彼が衝動をセーブしているのは、いくつか理由がある。
まず第一に、マコトはあらゆる暴力と性的虐待を受けた身だからだ。あの自殺のような自慰も、ある種のPTSDによるものなのだろう。なし崩し的にこのような関係を結んでいるが、本来は医療機関にかかるべき状態である。
(統一政府を思うと、あまりカナイ区外の医療機関に頼らせたくないし、だからといってカナイ区の医療機関を頼るのはマコトさん嫌がるだろうしな……)
マコトは未だ希少な身だ。立場的に拐かすのはリスキーであるが、そもそもそんなこと考えて無いような組織が生まれないとも限らない。マコトなら並大抵の相手なら大丈夫だろうが——危ない目には極力遭わせたくないのが心情だ。
そもそも、カナイ区外・区内問わず「不死へのフォロー」ができる医療機関があるのかという問題もある。無理だ。マコトという成功例は最新鋭かつ偶然の産物なのだから。マコトが負った精神的なダメージは、現状の人類の技術では手に余る。
第二に、このセフレの約束が、通常のセフレと異なるからだ。本来性交を含むのが標準的なセフレであるが、ふたりの目的はあくまで「マコトの性処理」である。自慰にあの触手を使わせない事を目的とするならば、現状の関係性でも問題ない。マコトは愛撫自体にはすっかり感じ入るようになっている。
(もう齧ったりつねったりもあんまり必要ないし……)
痛みと快楽がセットだった性感は、そう学習しないとあの状況で精神を保てなかったからだろう。
マコトに性感を効率的に与えつつ、助けを呼べるようにできたら……とこの方法を選んだが、ユーマは別段ひとに痛みを与えるのに充足感は覚えない。
若干の罪悪感と、あわよくば逆方向の学習になればとも思いつつ、痛みの度合いを少しずつ弱くしてきたが——その効果は実を結びつつある。
恐らく、マコトは既に通常の愛撫で絶頂できる。それが可能であるならば、自慰だって可能だろう。未だできないのは、マコトの肉体的な要因というよりは、精神的な要因がありそうである。
推測するに、今までも肉体的には通常の自慰は可能だった。しかし、いざ絶頂しようとするとマコトは無意識に怖がってしまい手を止めていた。そうして彼の中に自慰に関する錯誤が生まれる。
そこから後に、他者に委ねることでブレーキが廃され絶頂に至れる事をマコトは発見し——依存した。これが真相であるとユーマは睨んでいる。
マコトが性交渉の相手に触手を選んだ事は普通に不幸であるが、もしユーマ以外の誰かをセフレに選びこの傾向が発見されていたらと思うと。中々ゾッとする。必ずしも悲劇的な結末にならないにしても、彼やカナイ区を取り巻くかつての状況を思うとろくな事にならない可能性は高い。場合によっては、カナイ区は滅んでいたかもしれない。
(本当なら、自慰を普通に行える可能性を指摘してボク達の関係を解消する方が健全なんだろうけど)
どうにも、それを選択するには関係を築き過ぎてしまった気がする。単純接触効果と言われてしまえばそれまでだが、ユーマは既にマコトを「もうひとりの自分」として認識していない。
最も幸福になって欲しい他者のひとりとして認識している。その中で取り分け明るい場所にいて欲しい部類。いや、人によってはまた別の答えが出るのだろうか。
見つめ過ぎて不審に思われたのだろう。
「何?」
怪訝そうではあるが、最初に比べれば随分穏やかになった眼差しが返ってくる。まだ若干眠たそうな姿を見せるのは、勝ち取った信頼の証だ。
日々の一部を共に過ごせば、こんな姿を目撃する回数も増える。
割とお茶目。結構独り言を呟く。語彙が実は俗っぽい。なんなら行動もちょくちょく俗っぽい。カナイ区を本当に愛していて、それ故に視野狭窄になっている時があるから、気にかけないと危ない。
誰かに託すのが、誰かに助けを求めるのが、まだ下手っぴ。
敵対していた頃もそういう一面は見せていた筈だが、こうして落ち着いて見るようになったのここ半年だ。
あの時、倒すべきであると、後に託すべきであるとしたもうひとりの自分は、ナンバー1という同じ始点から離れて生きている。こうなればもう、別たれた他者と言っても差し支えはない。
それはユーマにも同じ事が言えるのだろう。そうして他者として、最も近しい場所で改めてユーマは彼を見つめ直した。
一種の特等席から、マコト=カグツチを見守る事ができる立場と約束は、ユーマに着実に影響を与え続けた。
——はっきり言ってしまえば、ユーマは既にマコト惚れている。数ある選択肢の中から、数奇にも選ばれたのが、目の前で温野菜を食っている少年であるのだから、人生はわからない。
最も、ユーマからこの心を打ち明ける気はない。
(平常な状態じゃない相手に、その状態に付け込んで性交渉を続け——あまつさえ執着してる)
それはマコトからすれば、とても恐ろしいことだろう。
ユーマの行っていることは、倫理的に正しくない。この関係の結び方は、推奨されないものだ。それにこれ以上望むのも、マコトに負荷をかけるのもよろしくない。「あなたに恋しました」という事実が脅迫になりかねない。
(この恋に応じなかったら関係性を断ち切るなんて脅し方だってできるんだぞ)
そんな材料を持ち得ている事。それがそのまま裏切りに成りかねない。マコトが触手を本気で恐怖しているのは疑いようもないが、そんな彼から触手以外の選択肢を奪うのは、自分の立場を加味しても避けるべきだ。
彼に触手を選ばせたくないのなら、尚更。
(だからボロが出ないように……あなたの誘いには応じられない)
「なんでもないよ。コーヒーのお代わりいる?」
「いる」
絶対何かあるだろうという顔で、それでも大人しく空のマグを手渡すマコトは、きっと以前なら見ることも出来なかった光景だ。
今不意に触れたら、マコトは驚いたり怒ったりするだろう。その中には、恐らく照れや歓びが内在する。そうなるように触れてきたのはユーマだ。そういう風に、慈しんで大切にしてきた。
マコトを守りたい。可能であれば、この関係も。守りたいから、あのおねだりは聞けない。
そんなロジックをコーヒーを注ぎながらユーマが誤魔化す様子を、マコトは睨みつけていた。
ユーマに誤算があったとすれば、彼が守りたいと思ったものは確固たる意思を持つ一個体の生き物であり——存外彼の事を好いていた。
そして、この状況をよく思っていなかった。
(なんとかしないとな)
そう思えるだけの自我があるのだから、当然事件が生まれる余地があった。
事態が転がるのは、必然的であった訳である。
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朝食を摂ってユーマと別れたその後。同日の午前中にはマコトは次の休みの申請をした。
半年ぶりにマコトが2連休の取得を申請した為、部下から涙ぐまれて「やっと休んでくれた」「休みは1日じゃ足りないんですよ」「休暇楽しんでください」と言われた時は罪悪感が募った。仕事しないで本気でセフレとのセックスに取り組みます……とは口が裂けても言えない。
マコトはそう思っているが、仮に口にしたとしても「ストレス溜まってますか? もっと休みませんか?」となるだけである。実態にもっと踏み込んだ話になれば「それは恋人ですよね」「やっぱりもっと休みませんか? パートナーとお幸せに!」となる。
マコトは名実共にリーダーとなって以降それなりに慕われてはいるのだ。あまり本人は自覚的ではないが……本来の慧眼を鈍らせているのは、やはり彼が犠牲にしてきたものの大きさに寄るところなのだろう。
犯罪者を焚べ、秘密や目的の為なら同族をも焚べ、動く死体も動かない死体も積んできた。その事実が「人に好かれる訳がない」という認知を生む。
能力共有の探偵特殊能力に目覚める感受性。世界中の未解決事件の根絶という途方もない願い本気で叶えようとした共感性と善性。ナンバー1の持ちえた素養が牙を剥いているのが現状のマコトだ。
ユーマを「記憶と経験を漂白しアイデンティティクライシスを起こしたナンバー1」とするならば。マコトは「自己とそれに纏わるものを強制的に破却されアイデンティティクライシスを起こしたナンバー1」なのである。
その欠落を埋めるべく、両者には必然的に自己再定義が起きた。
ユーマが夜行探偵事務所やその周辺、探偵であることを拠り所としたように、マコトはカナイ区を……欠陥ホムンクルス達を拠り所とした。ひとりで負うには余りにも膨大なものを愛護しようとしたのだ。
元来は世界中の人間に向いていたと思えばむしろ縮小されたと言えるそれは、現状でも十分重たい。その上で、彼には未だ余裕がない。最大の問題は解決したとしても、カナイ区の問題も、彼自身の問題もまだ山積みだ。
そんな中、個人個人が自分に対して好感を持つ余地があると認めるのは難しい。ある種の処理落ちを起こしているのだ。
ユーマがマコトとセフレという形で関係性を結ぼうとしたのは英断だった。仮にあの時点のマコトに真っ当な交際を申し込んだとして、いい答えは期待できなかったであろう。
最も、現段階でもこの関係性が恋人に近いとマコトが気付けば。関係を解消しようとしてしまうであろうことは安易に想像がつく。
(そう気付いてるから、あまり露骨に恋人のようなことは避けようと思ったんだけど……)
マコトと別れた同日に、あまりにも早い次の逢瀬の催促を受けてユーマは唸った。
「……都合悪い?」
電話口からするやや機嫌の悪そうな声にユーマは苦笑した。
「いや、あなたに合わせるのも約束の内だから。一週間後だね。予定を空けておくよ」
「そう。じゃあ、また家で待ってるから」
そう告げて切れたスマホを片手に、ユーマは次の逢瀬の間隔の短さを思った。今までで一番短い。働き詰めを思えばこれぐらいの休みはむしろ積極的に摂って欲しいものだが、彼の目的的にはむしろ休まらないだろう。
「2日間か……」
わざわざ日数の指定も入ったあたり「おねだり」を本格的に仕掛けてきそうである。
それが困る反面、少し嬉しく感じてしまう自分に危機感を覚えつつ、ユーマは当日を迎えた。
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