計算違い2

計算違い2

ユウカガチギレ→拘束まで

【計算違い1】

==================

先生とアリスちゃんとコユキに怒鳴ってしまった日から1週間後…苛立ちを強くはぶつけないと誓ったはずの私は愚かにも同じ…いやそれ以上の過ちを犯した

それは、ミレニアム北側に位置する区域にて怪しい商品の売買をしているという噂がある業者の調査をC&Cに依頼し報告を受けた後の事…







ユウカ「はぁ…アカネ。なんで調査しに行っただけで、問題の業者が入っていたビルが倒壊した上周りの建物まで爆発の被害を受けてるの?私は『不穏な動きがあるかどうかを調査して』って言ったでしょ?『一片も残さずぶち壊せ』とでも聞こえた?」

アカネ「その、私もなんとか抑えるように努力はしたのですが…ごめんなさい。潜入したネル先輩が『まだるっこしい』と言って、警備ロボットや監視カメラを破壊してしまって…当然お相手様も大勢襲来したので、やむを得ず大規模戦闘に発展してしまい…その途中私がC4爆弾を仕掛けた場所がちょうど火薬庫だったみたいで、連鎖爆発した結果…」

「チッ…もういいっ!そんなに暴れてぶち壊すのが好きならゲヘナにでも行ったらどう!?あんた達みたいな野蛮人に頼るのは今回きりにするわっ!ミレニアムにまだ居続けたいならエージェントなんかさっさと辞めて、メイド喫茶でもやって少しくらい収益に貢献しろっ!!!」


通話越しに怒鳴りつけた私は、アカネの返事を聞く前に受話器を電話へ叩きつけて破壊し強制的に切った

幸い誰も居なかったから空気が悪くなることはなかったけれども、とはいえ私のストレスが減ることはない…むしろ1週間の間に多くの生徒と言い合いが頻発していて爆発寸前だった。それなのに、ネル先輩達はお願いを全く聞かずまたしてもとんでもない損害を与えて賠償請求されたので、正直私の怒りゲージは最早限界近くまで上がっていた…



しかしこれからヴェリタスとエンジニア部が1週間の間にやらかした事を問い詰めに行く必要があった私は、壊れた電話機を適当にゴミ箱へ投げ捨ててブツブツと悪態をつきながら部室へと向かう

「毎回あいつらが出してる被害の穴埋めしてんのが私だって分かってんのになんでああいうことするの!?絶対わざとに決まってる!なにが『まだるっこしい』だよあのチビ、ふざけやがって…!」



道中すれ違った生徒が驚き怯える様子に気づかないまま、私はヴェリタスの部室へとやって来た

今回は異常な量のエナドリ缶を放置していた事と、ここ数日間セミナーに黙って校内にある一部監視カメラをハッキングし、尚且つ盗聴していたらしいけれど…


なんで事前にセミナーへ許可を得ようとしないのかしら!?倫理観足りないとかじゃなくて生まれつき持ち合わせて無いんじゃないの!?ミレニアムの生徒なんだから一定の倫理観ぐらい持てよ!

その上空き缶の始末さえできない子供も同然だっていうの!?百歩譲って大量に飲んだとしても、せめてゴミの処分くらいはちゃんとやれ!



そう思いながら部室のドアを乱雑に叩く


ユウカ「…ちょっと!いるんでしょ!?早く出なさいマキ!コタマ!ハレ!説明聞くまで帰らないわよ!」

ドンドンドン!

マキ「うわわっ!?ユウカちょっとだけ待って!今開ける!」

「証拠隠滅とかしようと思ったって無駄よ!全部証拠は抑えてるんだから!」

ドンドンドンッ!

「違う違う!今ちょっと手が離せないだけで…終わった!待たせてゴメン!開けるね!」

ガチャ

「チッ…遅いんだよ…チヒロ先輩とヒマリ先輩は居ないのね?」

コタマ「はい、今は個人の調査とやらで席を外しています。まあ部長は普段からこの部室自体あまり訪れませんけど」

ハレ「………」(カタカタカタ)

「あっそ、じゃあ本題に入るわよ。ここ数日ミレニアムの監視カメラを私たちに許可を取ろうともせず勝手にハッキングして、しかも至る所に盗聴器を仕掛けたのはどういうこと?」

「そ、それは…別にやましい理由があるわけじゃなくって…チヒロ先輩に…」

「はぁ?そう言うってことはやましい事があるって証拠でしょうが!あんた達はいっつもそうよね!?私にバレなければ好き放題ハッキングして良いと思ってるからあちこちで騒動を引き起こす!何が[正義のハッカー集団]よ!あんた達のやってることは[大迷惑な悪質ハッカー集団]同然じゃない!」

「ちょっ…そんな言い方無いでしょ!」

「…確かにあまり褒められた事ではないかもしれませんが、そのお陰でいい事に繋がったこともあったはz」

「黙りなさいっ!機器の操作しか取り柄がないトラブルメーカーなバカの集まりが偉そうな事ほざいてんじゃないわよ!それだけじゃないわ!ここ最近部室から溢れ出た大量のエナドリの空き缶で迷惑してる子がいるの!その責任も早く取りなさいよこのバカッ!」

「なっ…!?ユウカがそんなひどいこと言うなんて思わなかったよ!それにあのエナドリ空き缶は、私たちもどうすればいいか悩んでるのっ!」

「…あれはハレが沢山飲むことで出ています。私と副部長、マキもなんとか説得していますが、逆に摂取しないと機嫌が凄く悪くなってしまって…」

それを聞いた私はハレを睨みつける
彼女は私に一瞥もせず、無言でエナドリ片手にパソコンへ向かい作業中だ


「ハレ」

「………」(カタカタカタ)

「聞きなさいよこのカフェイン中毒者がぁっ!」

ハレが片手に持っているエナドリの缶を奪い取りそれを部屋の隅へ放り投げた

「あんたがバカみたいにエナドリ飲みまくって迷惑してる子がいんのよっ!今後一切エナドリを買うための金は出さないから、あんな物いい加減絶ちなさ…」

「……せ」

「あ?聞こえないっ!ちゃんと喋りなさいよこの…」

「…かえ、せぇぇぇぇぇッ゛!!!」

突然ハレが私に向かって飛びかかった
私はバランスを崩して倒れる

背中側には空き缶の山が積まれており、そこに倒れ込んだので衝撃は和らいだが硬い空き缶なので結構な痛みが襲う

その痛みで、私は完全に激昂した

「このヤク中があああああっ!!!」

ハレを引き剥がし、常に装備している銃[ロジック&リーズン]へ手を伸ばす
一発撃たないと気が済まない



その時、コタマが私を羽交い締めにした

マキはハレを必死に抑えつつ、未開封のエナドリを手渡す

「待ってよ待ってよ!ちょっと!2人とも落ち着いて!ほら、ハレ先輩!こっちに新しいエナドリあるから!」

「ッ゛…は、ぁ゛……サンドMAX…」

「ユウカ!銃を持ち出そうとしないでください!ハレのエナドリ問題は私たちでなんとかします!」

「うるっさいわねっ!離しなさいよっ!こんなクズさっさとミレニアムから追い出した方が未来のためになるわよっ!」

「ユウカ!なんでそんなこと言うの!?これ以上は流石に怒るよっ!」

「黙れ黙れ黙れぇッ!あんた達全員この学校から追放してやるッ!
マキも!コタマも!ハレも!チヒロ先輩も!ヒマリ先輩もぉ゛っ!」

「──ユウカ…」

コタマの力が弱まり、私は乱暴にその腕を振り解いた

マキは信じられないものを見るような目で私を見ている



ウザい イラつく 腹が立つ


「いい!?今回だけは撃たないであげるけど、もしまだこの学校に居るって分かった時はすぐに撃つ!あんた達の顔さえ見たくも無い!とっとと失せろっ!」

そう暴言を吐き散らすと、空き缶の山を思いっきり蹴飛ばして部室を出た





このままエンジニア部に行かなきゃいけないと考えると憂鬱でしかない

今日は人生最悪の日だ

「チッ…なんなのよ、あのハレの態度は…次会ったら脳天に弾丸ぶち当ててやろうかしら…!っあ゛ぁーっ!毎日毎日私をイライラさせやがってクズ共がっ!」

廊下に怒号を響かせながら、私は最悪の気分で次のバカが蔓延る巣窟へ赴く…





──────────────────────────

マキ「ユウカ…あそこまで言うなんて…どうしちゃったんだろ…」

コタマ「……………」

ハレ「ったく、邪魔しないで欲しい…」

「ねえハレ先輩、ハレ先輩も最近おかしいよ…いくらなんでもエナドリ飲みすぎだし、缶の掃除するの大変なんだよ?」

「うるさい。気が散る」(カタカタカタ)

「…ねえコタマ先輩もなんとか…」

その時コタマ先輩の顔を見て気づく

──先輩は、泣いていた


「ちょ、ちょっと先輩!?」

「ご、ごめんな、さい…マキ、私はもうどうすればいいのか分からない…ユウカが、どうやったら許してくれるのかも…ハレが、どうやったらエナドリ絶ちしてくれるのかも…ひくっ…」

「うぅ…私だって、なんとかしたいよ!したいけど…ねぇハレ先輩っ!」

「うるさいって言ってるでしょっ!」

ハレ先輩はアテナ3号を私にぶつけて電撃を浴びせる

「ぎゃうっ!?」

「ハッカーのくせに、集中乱すような事しないでくれるかな!?ワーワー喚いてないで早く作業戻ったら!?」

「…チヒロ先輩…ヒマリ先輩…私たち、これからどうすればいいの…?もう分かんないよ…うぅ…うぁぁ…っ…」



エナドリの匂いが充満する部室内は
マキとコタマがすすり泣く声と、ハレがエナドリを啜りながらキーボードを打つ音のみが響いていた…

──────────────────────────

エンジニア部のやらかしたことはいつも通り、依頼した機械に意味不明な機能を付け足して被害を生んだ。これに尽きる

天井の高い体育館並みの広さを誇る部室へ足を踏み入れた私は、広々とした空間に響く大声でバカ共を呼び出した



ユウカ「…いるんでしょウタハ先輩ッ!ヒビキッ!コトリッ!早く顔見せなさいよっ!」

ウタハ「やあユウカ。どうしたのかな?随分とピリピリしているみたいだが」

「よくもぬけぬけと…2日前にあんた達が納品した道案内ドローンが何しでかしたか知ってる!?」

ヒビキ「うーん…一応依頼通りに作ったつもりだけど、何かあったの?」

「道案内ドローンにハンマーを内蔵した理由は何!?セミナー室で動作チェックしてると挙動がおかしくなったから軽く触ったら、突然ハンマーを中から出して見境なく振り回し始めたのよ!そしたら部屋中を滅茶苦茶に叩き壊そうとして、最終的に買い置きしていた私のお菓子を全部粉砕したわっ!どう責任取ってくれるわけ!?その場ですぐ文句言いに来なかった私に対して何か言うこととか無いのかしら!?」

「おや…それは申し訳ない。まさか接触しただけで暴走してしまうとは…改良の余地はまだまだありそうだ。」

コトリ「ちなみにハンマーを取り付けたのは、道無き道を案内する際障害となり得る岩や瓦礫を破壊するためです!あの案内ドローンはミレニアム中を案内するためのもの…つまりは廃墟も案内出来るように改造すべきだという意見により、ハンマーを内蔵し障害破壊プログラムを用意したのですが…どうやらプログラムが勝手に作動してしまったようですね?それに関してはすみません…」

ブチッ


「…はぁ〜!?あんた達ネジを締めるのが得意な癖に自分達の頭のネジは締めるどころか紛失してんじゃないの!?誰がいつ『廃墟も案内するドローンを作って欲しい』つった!?緩むどころかどっかに消え失せたネジを今すぐ探してきたらどう!?…ああそうね!お得意の発明で自分達の失くした頭のネジを探す機械を作りなさいよ!もちろん自腹でね!それで延々探し続けてミレニアムからずっと遠く離れた場所まで行って野垂れ死ねばいいんだっ!!!」

「ちょ、ちょっとユウカ…いきなりどうしたの?余計なものをつい付けちゃった事は謝るから…ごめんね?」

「ごめん!?毎度毎度人に危害を加えるポンコツばっかり作っといて、ごめんの一言で済むとでも思ってるのヒビキ!?前々から言おうと思ってたけど、あんた達みたいなバカ共とはもう付き合いたくないっ!!何がマイスターよ!何が天才よっ!あんた達が齎す損害賠償額は最早C&C顔負けレベルに膨大なの!これからも理解不能な発明しか出来ないのなら、金輪際予算は出さないからっ!!!」

「…すまない、本当にすまない。この先ロマンを追求したくなって斬新な機能を組み込みたいという意思が芽生えた時は事前相談をすると誓おう。…だから予算だけは用立ててくれないかい?」

「発明家にとって予算は命綱同然です!それが無くなってしまっては我々の人生は終了してしまいます!反省すべき点はしっかり反省致しますので、どうかお金だけは…!」


──守銭奴ってレベルじゃない

このバカ共は痛い目を見ないと懲りない

そう思った時にはもう行動していた


「っざけたことほざいてんじゃないわよ金食い虫共がぁッ!!!」

私はさっき撃ちそびれたサブマシンガン[ロジック&リーズン]を構え、バカ共に銃弾の雨を降らせる

「ぐっ…あぁっ!?ユウカ、やめっ…!い゛づぅっ!」

「うぁっ…!ま、まって…あぐっ!?」

「ぎゃっ!?お、落ち着いてください!謝りますから発明品だけは…!」

「黙れッ!!!ポンコツばっかり作って予算を無駄使いする度に金せびってくる金食い虫のバカ共ッ!!その上ポンコツ共は毎回毎回問題起こして迷惑しかかけないしっ!!あんた達もぶっ壊される側の苦しみを味わえッ!!!」


私は3人がまともに動けなくなるまで銃弾を撃ち続けた後、新しい弾丸を補充すると部室に置いてあるポンコツを全て破壊していく

3人は必死になって止めろと喚いてる

ほんっといい気味

私が止めてと言っても全然聞かなかったくせに、こんな時だけ必死になる

それがあまりにも無様で胸がスッとする

足に縋り付くヒビキ達を蹴飛ばしながら銃をポンコツに向けて撃ち続けた──





数十分後

「はぁ゛…はぁぁ…!ロマンとか面白さなんか重視せずに、予算相応の効率的で完璧な物を作っていれば私だって壊さずに済んだのよ…!これからは、自分達で予算を稼ぐといいわ…今まで犯した罪をしっかり噛み締めることねっ!」

部室中の機械を全部破壊した私は、粉々になった破片を拾い集めるバカ共へ吐き捨てるようにそう言うと、部室から早々に立ち去る

ここまで言えば、二度と同じ過ちは犯さないだろうと思いつつ、後ろで聞こえるか細い声を無視して足早に退出した



ストレスの原因だった連中へ、ようやく一発ガツンと制裁出来たという開放感はあったものの…苛立ちは収まらない

早く自室へ帰ってお菓子でも食べよう…そう思いながら戻るも、この時今までの比じゃない頭痛の元凶が近づいていて、私の怒りが遂に臨界点を突破することになるだなんて…その時の私には全く予測出来ないことだった





──────────────────────────

ウタハ「私たちの…発明が…」

コトリ「げほっげほっ!あ…うぅ…全部破壊されて…しまいました…」

ヒビキ「……………」

ユウカに撃たれ、蹴られ、大事な発明品を全て破壊された私たちの心と体は完全にボロボロになっていた

彼女の怒り自体は正当なものだ。私たちはレッドウィンターとミレニアムの外交問題にまで発展しかけた原因を作った事があり、晄輪大祭にて私達が作った応援ロボットが混乱を引き起こした…という事も記憶に新しい

…ユウカに対する憎悪の気持ちは私にもコトリにもウタハ先輩にも無い

怒り以前に、もはや無気力

ユウカの言ったことが正論なだけあって私たちは完全に折れてしまったのだ



『ロマンとか面白さなんか重視せずに、予算相応の効率的で完璧な物を作っていれば』



ヒビキ「──あ」

「…ヒビキ?どうしました…?」

「うん、そうだ。効率的で完璧なものを作れば…私たちはミレニアムにいれる」

「えっ、えっ?ヒビキ、何を言って…?正確な説明をしていただけると…」

「ああ…コトリ。ヒビキの言う通りだ。これより先のエンジニア部は、ロマンを捨てて“完璧なもの”を作る部活となる」

「完璧な、もの…?」



ウタハとヒビキの目に光は無かった

コトリは2人がまるで別人になったように見え、痛覚を忘れるほどの恐怖を感じる


この時こそ、遊びを忘れたエンジニア部が始動した瞬間だった

──────────────────────────

廊下を早足で歩く

その途中ゲーム開発部の部室前を通る

こんな所通りたくなかったけど、最短がこの道だったから通っていく

…でもそれは間違いだった




「やっと見つけたよ!ユウカッ!」

後ろから「私を見つけた」と叫ぶ、忌々しい大声が耳に届く

──ああ、本当に最悪の日ね



ユウカ「モモイ…ミドリ…ユズ…」

まさか3バカが揃ってるなんて

よりにもよってこんなタイミングで

アリスちゃんだけが居ないという状況で

一番会いたくなかった連中に遭遇した




「…何の用?あんた達とは正直話したくなんかないんだけど」

モモイ「それ!その発言っ!先週アリスから聞いたからね!?部室から追い出すとか!」

ミドリ「部活を取り潰すとか…」

ユズ「は、恥を知れ…とか…!」

「アリスを泣かせたばかりか、私たちの居場所を奪おうと脅迫するなんて絶対に許せないんだから!」

「チッ…その事については謝ったでしょうがっ!アリスちゃんも許した事なのに、なんで今頃になってほじくり返すの!?このバカモモイ!」

「なっ!?お姉ちゃんに向かってそんな事言うなんて…!それにアリスちゃんには謝ったけど私達には謝ってない!あの発言も取り消して!」

「ごちゃごちゃうるさいのよっ!厄介者の身も弁えず我が物顔で好き放題してる以上当然の扱いでしょうがっ!」

「ゆ、許せ、ない…っ!私の居場所で…アリスちゃんとモモイとミドリの居場所でもあるゲーム開発部を、軽々しく取り上げようとするばかりか潰そうとするなんて…!この人でなしっ!」

「──なんですって?もう一度言ってみなさいよユズ」

「な、何度でも聞かせてあげる…!この人でなしっ!人情なしっ!予算の事しか考えてない鬼っ!体重100kg!悪魔っ!大魔王っ!金の亡者っ!意地悪会計っ!冷酷算術妖怪っ!先生に対してメスの顔をする薄汚い小姑っ!最低ロリコンッ!計算バカッ!ガラクタ電卓っ!極悪非道っ!無慈悲っ…」


このっ…クソガキ…ッ゛!

「言わせておけばあ゛ァ゛ッ!!!」

バヂィッ!

ユズの頬を手加減せず引っ叩く

「っぁ゛…」

彼女の頬に大きな赤い跡が出来て、鼻と口から血が垂れた

「ユズちゃん!?大丈夫!?」

「ぁ…う、うぅぅ…うぁぁぁっ…!」

「…アリスちゃんだけじゃ飽き足らず、ユズまで泣かせたね?」

「だったらなんだってのよ!?あんた達が自分の悪い事棚に上げて、私のせいにするからこうなるんでしょうが!本当にいい加減にしろこのクソガキ共ッ!」



──その言葉は開戦の合図となった

モモイとミドリとユズが銃を向ける

その目は私と同じ
砂糖不足で苛立った目だった


「よくも言ったなぁ゛ぁぁぁーッ!!」

「今度という今度は許さない゛ッ!!」

「ユウカなんか…死んじゃえッ゛!!」

「いいわ!かかって来なさいよクソゲーばっかり作ってるクソガキ共ッ゛!返り討ちにしてやるッ!」





そこから先は、今までの比じゃない熾烈な戦いだった


モモイは私を罵倒しながら、無数の銃弾を浴びせにかかる

ミドリは普段の大人しめな様子を微塵も見せない苛烈さで、私に毒を込めた弾を撃ち込む

ユズは死ねと連呼しながら、私が行く所を予測してグレネードを発射する


私はこのガキ共に自らの手で鉄槌を下せるという感情に支配され、今まで彼女らに感じていた怒りを全開放しつつゲーム開発部の部室がある棟が崩壊しかねない激しさで、3人相手に接近戦も織り交ぜた戦いを繰り広げた





その時

アリス「やめてくださいっ!!!」

ネル「おいテメェらっ!さっきから何してやがんだっ!!!」


アリスちゃんとネル先輩が現れた

「何してるって!?分かんないかな!?この口やかましい太もも妖怪をみんなで討伐しようとしてるだけだよッ!」

「アリスちゃんもネル先輩も加勢しないなら邪魔しないでっ!この無慈悲なクズ会計に報いを受けさせるんだからっ!」

「殺す…殺す殺す殺す…!」

「まだ私に勝つつもり!?本気でウザすぎて私まで殺したくなるんだけどッ゛!あんた達こそさっさとくたばれッ!」


ネル「………01、02、03、04、アリス」

アスナ「はーい」

カリン「現在狙撃ポイントにて待機中」

アカネ「私も指定の位置に」

トキ「行動開始の合図に合わせます」

アリス「…魔力充填完了です…」

「これより、あの頭が茹だったバカ達を止める。行くぞぉっ!」

「「「「了解っ!」」」」



──────────────────────────

ユウカ「………っ!いった…!…あれ?ここ、どこ…?」

ノア「気が付きましたかユウカちゃん」

「ノア!?な、何があったの…っていうかモモイ達は!?」

「ユウカちゃんが暴れたと聞いて急いでC&Cへ連絡を取り急行させました。説得を試みましたが、みんな言っても聞かなかったのでC&Cの皆さんがユウカちゃん達を気絶させ拘束したといった感じですね。それとモモイちゃん達は別室です。禁断症状で苦しんでいますけど…」

「きん、だん…?どういうこと?」

「単刀直入に言いますね…ユウカちゃんは、“薬物中毒者”です」


──え?

私が、薬物中毒…!?



「はぁ!?そ、それどういう…!?」

「…ユウカちゃんがヴェリタスを訪れたその数十分後、ミレニアムの一部生徒達が自治区から出ていって行方不明となりました。その中には、ヴェリタスのハレちゃんもいました。他の生徒から聞いた情報と辛うじて拘束できた生徒を聴取したところ…彼女らはアビドスから流れてきた特殊な砂糖、[サンド・シュガー]という名の麻薬効果がある砂糖によって薬物中毒者となっていたのです」

「サンド・シュガー…?」

「そしてその砂糖はユウカちゃんやハレちゃん、更にアリスちゃん以外のゲーム開発部のみんなにも影響していました。怒りっぽくなり甘党みたいになっていた原因はそれです」

「………うそ…でしょ…」

「残念ながら本当です。…先生には一応お伝えしましたが、私たちが出来る対処法はこうやって拘束することのみ…」

「えっ?は!?ちょっ!外してっ!」

「いいえ、外せません…これは、ユウカちゃんが二度と砂糖を摂取せず暴れないために必要な措置です。ごめんなさい。私のことは恨んでもらって構いません」

そう言ったノアは、席を立って部屋から出て行こうとする

「ま、待ちなさいよノアッ!これから私はどうなるの!?」

「…特効薬が開発されるまで、禁断症状に苦しむ生活が続くでしょうね。先生の面会は許可しているので会うことは出来ます…ですが栄養は点滴ですし薬が抜けるまで真っ当な生活は受けられません」

「…そんな…ねえやめてよっ!私たち、友達でしょう!?なんでこんな…!」

「これから私は、人の道を外れる作戦を行います。幸いにも協力者が名乗り出てくれましたので…そんな私と友達でいるなんて、もう無理でしょう?」

こちらをちらと見たノアの横顔は
まるで死神のようだった


「それではユウカちゃん…くれぐれも、先生に作戦の事は言わないように」

その顔を見た私は硬直し、部屋から出るノアを見届けるしかなかった


──────────────────────────

ウタハ「ノア“生徒会長”。これで準備は整ったんだね?」

ノア「…はい」

ヒビキ「じゃあ続きを始めよう」


──アビドス自治区を滅ぼすための

『アブズ作戦』


==================

          (SS一覧はコチラ)

Report Page