言葉無き花の光輪1

言葉無き花の光輪1

アイリのみ正気だったIF

【言葉無き花の光輪2】

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もしも、スイーツ部で唯一砂糖の影響を受けなかったのがカズサではなくアイリだったら…という前提のifです

陰鬱描写が続くので、念の為ご注意を…

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私除くみんなは、ある日偶然立ち寄ったキッチンカーのスイーツを食べた

私だけは、偶然その場にいなかったので食べれなかった


──でもその時以来


ナツちゃんも

ヨシミちゃんも

カズサちゃんも



狂ったように砂糖を摂り始めた

甘いものを食べてテンションが上がる時は確かにあったけど、あれは異様としか言いようがない


満たされている…というには、異常な程幸福感に支配されてたあの姿

砂糖を摂れてない時は凄く苛立っていて周りや私に対して乱暴になる


どこからどう見ても砂糖に依存してる…そんな友達をなんとかしたかった


…しかしそれは叶わなかった


みんなが欲しがっていた砂糖が、とても依存性が強く恐ろしい麻薬

[砂漠の砂糖(サンド・シュガー)]

だと知った時


私は深い絶望とショックを感じた

みんなは知らないうちに薬物を盛られて狂わされたんだ


そんな酷いことをする人がいたなんて

大好きな友達がその悪意の対象に選ばれたなんて

私には信じられなかった



その事を知った私はみんなに教えた

砂漠の砂糖という恐ろしい麻薬の事を


なのに──





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アイリ「だから、みんなもう砂糖を摂るのはやめて!お願いだから…!」

ヨシミ「はぁ?今更そんなの出来るわけないでしょ!ていうか、アイリはなんでまだ砂糖食べないわけ?いっつも善意で勧めてあげてんのに毎回断ってくるの、いい加減ムカついてくるんだけど!?」

ナツ「ああ…君は砂糖の素晴らしき甘さを理解しようとする事さえ拒み、砂糖を悪しきものだと断定し食わず嫌いに走るのだね…なんと愚かな…アイリ君。残念ながら今の君が放課後スイーツ部に在籍する資格は無い」

「っ…ナツちゃん…な、なんで…なんでそんな事言うの!?酷いよっ!」

カズサ「酷い?ははっ、どっちが酷い事言ってるか分からなくなるくらいイカれちゃった?ああもしかしたら脳みそまでチョコミントで汚染されちゃったんじゃない?アイリがそこまでチョコミントに毒されてるとは思わなかったよ」

「カ、カズサちゃん、まで…」

「ていうか私達、これから砂糖の総本山らしいアビドスに行くんだけど…アンタも来る?」

「い、行かないっ…!みんなも行っちゃダメッ!お願いだから!ねぇっ!」

「チッ…うるさいなぁ…!行かないのは勝手だけどさ、私達の邪魔までしないでくれるかな!?鬱陶しいんだよっ!」

(ドカッ!)

「きゃぁっ!」

カズサちゃんに銃で殴られる


「おいおいカズサ君、君の内なる魔獣が顔を見せ始めているぞ?」

「…あ、やば」

「あははっ!キャスパリーグさんが一瞬起きてやんの!」

「アイリ君、もし君が私達の邪魔をするというのなら…私達は君を邪魔者と認識して攻撃するよ。君がアビドスに行くか行かないかまでは強制しない」

「その代わりまだ邪魔すんなら、ガチでボコるからね!?」

「うぅ…っ…!ダメ…アビドスなんかに行ったら、戻って来れなくなっちゃう…だから…絶対行かせないっ!」

大好きな友達から告げられた、あまりに酷くて恐ろしい脅迫

でも私は、みんなを守りたい一心で行手を遮った


「はぁ…アイリ。君は退部だ」

「砂糖の事何も知らないくせに、生意気な事言うんじゃないわよバーカ!」

「ほんっとウッザ…宇沢よりイラつく。消えろよ裏切り者が」





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私はみんなを止められなかった

気がついたら、救護騎士団の人が運んでくれた先の病室で寝ていた


私は3人に撃たれて気絶していたところを正義実現委員会の人に助けられたらしい



身体の傷はすぐに治ったけど

心の傷はもう治療不可能な程深かった


あれから何日もみんなの事を探したけど

トリニティでは殆ど手掛かりを掴む事ができなかった



唯一分かったのはアビドス方面に向かう似た姿の3人の目撃情報だけ

つまりみんなは本当にアビドスへ行ってしまったんだと思う



私はアビドスに向かった

とは言っても自治区の境目まで…広大な砂漠に足を踏み入れる事は出来なかった


熱砂が発する陽炎の向こう

この先にみんなは行ってしまった



そう感じた私は深い絶望に襲われる

砂へ膝をつき慟哭した

「うわああああぁぁぁぁーーーっ!!」


涙は砂を濡らす

憎い

この砂が憎い

両手で砂を掴み振り撒く

全く意味のない行為

でも憎しみと怒りをぶつけたくて

泣き叫びながら砂を握りしめた


「うあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」


返してよ

ナツちゃんを

ヨシミちゃんを

カズサちゃんを

平和を

日常を


「がえ゛じでよぉ゛ぉ゛ぉッ!!!」


泣きじゃくりながら叫ぶ

返事はない

虚しい風の音しか聞こえない

無駄な訴えでしかなかった






…だから私は


アビドスへの復讐を決意した──



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モブA「──それにしてもアイリさん…?あの花の咲いている場所だなんて…何故そのような事をお聞きに?」


トリニティの“植物学研究部”に所属する生徒達を訪ねたアイリ

彼女の目は酷く濁っていた

そんな目つきに研究会は困惑する


アイリ「…貴女達に言う必要あります?いいから早く教えて下さい」

B「で、でもあの花ってかなり危険性が高いので常人が扱うのは…」

「ごちゃごちゃ言わずにさっさと教えて下さいよっ!」(ダァンッ!)

B「ひぃっ!?わ、分かりましたわ!」


声を荒げ、机の上に置いてある空の花瓶を撃ち壊したアイリ

あの温厚で優しいアイリだとは思えない行動に、部員の生徒達は恐れ慄きながらとある花の群生地を教えた


B「なのでこの地区には生い茂っているはずです…こ、これで良いですか?」

「………」

C「あの、アイリさん…?」

「うぅっ…ぐすっ…」

A「えっ」

「ごめんなさい…私、皆さんに、無礼な態度をとってしまって…」

A「えっと…???」

「こんな乱暴者、絶対に許されないですよね…ほんとうに、ごめんなさい…」

B「い、いえ、少し驚きましたが、何もそこまで…」

突如泣き出した彼女の姿に、またしても困惑する部員達



彼女らは気づいていなかったが…先程の荒っぽい時と、反省して泣く現在、彼女のヘイローは大きく形が変わっていた

常に形がブレて不安定になっている状態だったのだ

月桂冠のような形だったヘイローは見る影もなく、花の形には見えるものの奇妙に変化し続けている

アイリの情緒が不安定なのはヘイローの異常が原因だ


月桂冠。つまり月桂葉の花言葉は

「私は死ぬまで変わりません」

なのだが、今のアイリは常に悪い方へと変化し続けていた…




その後アイリは、植物学研究部に教えてもらった“ある花”の群生地へと赴く

そこに生えていたのは、黄色い花弁が5枚ある綺麗な花だった



「これがあの…

別名:断腸草

ゲルセミウム・エレガンス…」

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