血の導きは
——何だ……? 今……はっきりとは見えなかったが……。
——仮面の……
「仮面の模様、違くなっとったなァ……」
「っきゃあっ⁉︎ ……な、撫子!」
「やっほ、ルキアちゃん! なんや久しぶりやねー」
朽木ルキアが振り返った先。肩と背中部分がボロボロの白い衣服を身にまとった平子撫子が、ひらひらと手を振っていた。彼女の足下には別の場所で倒れていた茶渡と阿散井が横たえられている。
「無事だったか……! 尸魂界では死んだことになっていたのだぞ!」
「うん、織姫ちゃんから聞いた。ルキアちゃんがアタシが生きてるって信じてくれたって。ホンマにありがと、ルキアちゃん」
「撫子……」
「とりあえずチャドくんと阿散井くんは回収がてら回道で応急手当しといたから」
「! 茶渡! 恋次!」
撫子はルキアから視線を移し、ヤミーを相手に立ち回っている一護を見る。
遠目に見えた一護は仮面を出そうとして——しかしそれは仮面の形を成す前に砕け散る。
——時間切れ⁉︎ こないな時に⁉︎
その隙を逃さんとばかりにヤミーの巨大な手が一護を捕まえた。
「一護っ!」
「ルキアちゃん! アタシ行ってくるわ!」
「なっ、撫子⁉︎」
撫子は己の仮面を出し斬魄刀を抜き、一護を捕まえているヤミーの手に向かって一息に跳躍する。
——思い出せ。藍染はどう動いてた?
——あのとんでもない剣の腕。どう動いてた?
——アイツはどう斬った?
「——ふッ‼︎」
一閃。
記憶の中の藍染の動き。それをなぞり一護を捕まえていたヤミーの手首を一刀のもとに斬り落とす。
「撫子⁉︎」
「一護! 無事やな?」
——いつの間にヤミーの腕を斬り落とすくらい強くなったんだ……?
一護は撫子がヤミーの腕を叩き斬ったことに驚きつつ体勢を立て直す。
「よくも俺様の腕斬りやがったな‼︎ 殺すなって命令も関係ねえ! 死ねカス!」
「! 縛道の——」
「破道の三十三、『蒼火墜』」
撫子が鬼道を使うより速く、鬼道の炎ががヤミーに命中する。
「な……何だぁ⁉︎ 出てこいコラァ‼︎」
さらに何者かがヤミーの足を斬り飛ばした。足の一本を斬られたヤミーはバランスを崩して倒れる。
「てめぇ何先に手ェ出してんだ、スッ込んでろよ」
「……何を言う。此処へ着いたのは私が先だ。兄こそ分を弁えるが良い」
「ハッ、巻き添えで八ツ裂きンなっても知らねェぞ」
「白哉……剣八……‼︎」
「ルキアちゃんのお兄さんと更木さん!」
朽木白哉、更木剣八。隊長二名が参戦する。
**
「待って」
一護と卯ノ花が黒腔に飛び込む前。二人に声を掛けたのは撫子だった。
「アタシも行く」
「撫子」
「貴女は……たしか、石田撫子さんですね?」
「ハイ、石田は友達から借りた偽名でホンマは平子ですけど」
卯ノ花はやはり、と目を細める。撫子の面差しは、かつて五番隊隊長であった平子真子によく似ていた。
「足手纏いにはなりません。鬼道は回道も修めとるし、始解だってできます。それに、アタシは藍染の娘やから、もしかしたらアイツに対しての盾になるかもしれへんし」
誰かが息を呑む気配を感じながら、卯ノ花の言葉を待つ。
「平子撫子さん。貴女は救出対象だったはずです。これ以上、無理に戦いに踏み込む必要はありませんよ。どうしてそこまでして戦いへ向かおうとするのですか?」
「アイツを一発ぶん殴ってやりたいから! 理由なんてそんなんで充分やろ!」
単純明快、宣う撫子は「家族と織姫ちゃんの分も合わせると最低十発は殴らんとアカンなあ」と指折り数えている。
卯ノ花は撫子を見る。不自然な程抑えられた霊圧の奥に、彼女本来の霊圧が渦巻いているのを感じる。隊長格に匹敵、或いは倍するほどの凄まじい霊力量。
「やっぱり十発は少ないかなァ。一護と石田、チャドくん、ルキアちゃん、阿散井くん。……追加五発やな、十五発は殴らんと」
「——分かりました。貴女もこちらへ、平子さん」
「! ハイ!」
既に黒腔の裂け目は開かれている。一護が涅マユリの逆鱗に触れるアクシデントはあったが、一護と撫子、卯ノ花は黒腔へと飛び込んだ。
娘ちゃんの父親について各人の反応
剣八→ほーんみたいな感じ あんまり興味がない
マユリ→まあそうだろうネって感じ 監視菌からの情報で知ってた
卯ノ花→なんとなく察してた 平子の血縁というのは顔を見れば分かる
白哉→素直に驚いている
チャンイチ→スペースチャンイチ2回を経て娘ちゃん関連についてはもう動じない
ルキア→遠かったので聞こえてない
チャド・恋次→ダウン中