虚の存在を知ろう
スレ主目次
「…う……ん…ダ…ダメだよ黒崎くん…ちがうよ…それはプーさんじゃなくてピータン…似てるけど違うの…ピータンじゃスクデットは狙えないムリよ…ムリなの…」
先程まで眠っていた脳が覚醒した織姫は自身の頭の裏に直撃し鼻血を垂らしている茶渡とその近くに居た璃鷹に挨拶をした。
「ムリだってばぁっ!!!…あれ?茶渡くん 鳶栖さんおはよう」
つい数刻前まで初めて虚と戦闘を繰り広げた者の顔には思えないその能天気な顔は寝ている拍子に全て忘れているのではないかと思う程に穏やかだった。
鼻を摘みながらそう律儀に返した茶渡に続いて璃鷹も挨拶を返した。
「…おはよう…意外と石頭なんだな井上……」
「おはよう井上さん」
畳に垂れそうになっている様子を見かねた璃鷹は制服のポケットを弄りそこからポケットティッシュを一つ茶渡に差し出した。
「大丈夫?茶渡くん はいこれ」
「あ、ぁ …ありがとう」とティッシュをを鼻に詰めた。茶渡は何の夢を見ていたのか織姫に尋ねた。
「…随分うなされていたな…何の夢を…?」
織姫は顔を赤らめながら恥ずかしそうに答えた。
「そ…ッそんなの言えないよ…ナイショナイショ♪」
そこまで羞恥心を感じる夢だったのかとと困惑している茶渡の思考を読んで「羞恥の感じ方はまぁ人それぞれだからね」と茶渡にアドバイスをした。
織姫は何かを思い出したように固まると突然辺りをキョロキョロと首を回して動揺した。
「そ...そういえばここどこ!?学校...じゃないよね!?どこ!?」
そうやら自分が先程までどういう状況だったのかを今思い出したようだ。織姫はワンテンポズレた反応に茶渡が再び何とも言えない顔になった。璃鷹はその織姫のいつもと変わらない様子をジっと見つめた。
(常人なら恐怖であの場から動けず殺されてる。戦える力があったとしてもあの瞬間素人が虚相手に勝てた事を見ても彼女が異常なのは確かだ)
璃鷹は織姫の問いに答えようと声を出した。
「あぁ、ここは...」
空気を読んで背後で三人の様子を黙っていた浦原は璃鷹の言葉を途中で切って声を掛け、それを遮った。
「おや ようやく目覚めたみたいっスね」
織姫は浦原の居る方向を見て「...えっとだれかな...?」と茶渡と璃鷹に尋ねた。
「私も深くは知らないんだ」
璃鷹がそう織姫に言うと茶渡は浦原に話の続きを求めた。
「俺も知らない...ただ...どうやら俺達は...あの男に救われたらしい...」
「さぁ...井上も目覚めた...聞かせてくれ..…鳶栖が言っていた続きを...俺達に妙な力が生まれた理由...そして それと一護との関係を...」
聞き覚えのある名前に井上が神妙な顔をしながら聞き返した。
「─── ...黒崎くんが... ......何って......?」
浦原が話し始めた内容に2人は動揺を顔に浮かばせていた。璃鷹はそれを涼しい顔で見ていた。
茶渡が眉間を指で押さえながら浦原の中断させた。
「…ちょっと... 待ってくれ···」
「…何スか? 信用できない?話が突飛すぎますかねぇ?」
「…ああ...」
織姫もその異様な現実の出来事とは思えない話を怪しんだ。
「あたりまえです...死神とか…ホロウ?そんなのいきなり言われて信じろって方がムリ…」
「否定しますか?それなら順番が違う 先程キミ達が襲われた胸に孔のあるばけもの…あれが虚っス こっちの話を否定したけりゃ 先程キミたちが受けた恐怖と痛み‥先ず そっちから否定しなくちゃ」
璃鷹はただ浦原と2人の問答を聞き流していた。最初は疑い困惑していた2人も次第に信じて行ったここまでは想定通りだったが、しかしその中の黒崎一護に引き出された力、という単語に璃鷹は反応した。
(そんな事が仮の死神に… ?……もしかして霊力が高いただの人間ではなく朽木さんと出会う前から…何か出生に秘密が)
そこまで考えて織姫が浦原が話し始めてから黙ったままの璃鷹にか細い声で声を掛けた。
「鳶栖さんはずっと虚…?が見えてたんだよね」
「うん、まぁそうだね」
その返答を聞き「なら鳶栖も俺達と同じ力を…」を茶渡が疑問を口にした。
「私のこれは生まれつきだからちょっとちがうよ」
その少ない言葉に浦原が横から説明を入れる。
「彼女は滅却師という対虚戦に強い一族です 」
「クイン…シー?」
「今で言う黒崎サンのような霊力の高い人間達が虚の存在に気付き それに立ち向かうべく修行を始めたのがその始まりとされています」
璃鷹は少しため息を吐いて「あまり関係者以外には教えたくないのですが」と呟いた。浦原は謝罪した。
「おっとこれは失礼しました」
茶渡と織姫はまたいきなり出てきた言葉を聞いた。
「それで話は終わりましたか?」
2人何かを言う前に璃鷹が言った。
「まぁまぁ落ち着いてくださいって もう直ぐ準備も‥「店長」」
浦原の言葉を遮って襖の近くで姿勢を低くした鉄裁が言った。
「空紋が‥収斂を始めました‥‥!」
「そうか‥準備は?」
「万端!」
「よし それじゃ行こうか‥」
「準備…?」璃鷹がそう呟いた。織姫は慌てて浦原を引き留めた。
「ちょ‥ちょっと待ってください!あたし達まだ‥」
「ついて来ますか?」
「‥‥‥え‥‥‥」
「見せて差し上げますよ 自分達で確かめるといい これからキミ達の踏み入れる世界を ──そして キミ達の戦うべき敵をね」