義兄弟
ウタルテットの不当な読者「ロジャー船長の息子?! ・・・改めて見るとそっくりじゃねぇか」
シャンクスが驚愕の声を上げた。
反面、エースは苦い顔を浮かべている。
「こら! ウタ! 勝手に人の秘密、漏らしたらダメだろう!」
「シャンクスだけだしいいじゃん! エースがうじうじしてるからさ! いっそ現役海賊のロジャーのイメージも聞いてみたいじゃない!」
ウタがルフィに預けられて数年。シャンクスは久しぶりに顔を見にフーシャ村に訪れると、ルフィの家に見慣れない少年、エースが滞在していた。
「まさか俺に弟がいたとはなァ」
「何言ってんだお前」
シャンクスの物言いに、ルフィは変なもんでも食べたのか、と視線を向ける。
「いやな。俺、ロジャー船長に育てられたんだよ。敵船から奪った宝箱に入ってたんで、そのまま育てられたんだ」
「何だか聞いたことある話なんだけど・・・」
ウタが恐る恐るとシャンクスに聞き返した。シャンクスから、自分の出生について聞いたとき、似たような話を聞かされていた。
「そうだぞ。俺がウタを育てようと決心したのは、同じ境遇だったからだな」
「やっぱり! じゃあゴールド・ロジャーは私のおじいちゃん?!」
「その理論だと、俺はウタの叔父になるんだがいいのか・・・???」
エースはついていけないと、頭を振った。
「シャンクスもラフテル行ったの?」
興味深げなウタへの問いに、シャンクスは苦笑した。
「ラフテルにだけは行ってないんだよな。同じように育てられた兄弟みたいなヤツがいてな。そいつが病気してたから看病してた」
「え〜、そうなんだ。そんな人がいるんだね」
和気あいあいとウタとしゃべるシャンクスに、ルフィは訝し気な視線を向ける。
「待てよ。ロジャーはエースをじいちゃんに預けて、シャンクスはウタを俺に預けてんのか? 親子揃って、うちを何だと思ってんだよ・・・」
「まあ、そういうなよ。ロジャー船長がガープ中将に預けた理由が俺にはわかるぜ。海賊にはさせたくなかったんだろうな・・・。俺やバギーは海賊になったからなァ」
「ねえ。ルフィ。私との赤ちゃんは大事に私たちの手で育てようね! この負の連鎖を断ち切ろう!」
「いや。ウタと子供を作る予定はないっつうか、今、まさにお前を子育てしてるじゃねェか」
言い争いが始まったウタとルフィを尻目に、シャンクスはエースに向き直った。
いい笑顔だった。
「・・・ということで、俺のことは兄と呼んでくれ!」
「誰が呼ぶか! おっさん! 結局、ゴールド・ロジャーの共犯者じゃねぇか」
以来、シャンクスはエースに馴れ馴れしく絡み続け、ますますエースには距離を置かれることになった。
そして遠い未来。
このとき結ばれたシャンクスとの縁が、エースの命を救うことになる。