第四章

第四章

ターゲット捕捉

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双殛の丘


⦅残る敵は――⦆


 狙いを定める獣のような眼差しで戦場を見渡した。その瞳に映る獲物の数は三――“剣の鬼”山本重國、“初代剣八”卯ノ花八千流、そして“隠密機動総司令官”砕蜂。


⦅かつての陛下さえも瀕死に追い込んだ初代護廷十三隊……その生き残りを相手に、力を封じたままでは挑めない。となると――⦆


 獰猛な光がちらちらと燻る瞳が向いた先――倒れた姉を心配して駆け寄ろうとする清音と、小椿を弾き飛ばして清音の背後に迫る砕蜂の姿があった。


「待て砕蜂!!!」


 血相を変えて叫ぶ浮竹の足元に杖が突きつけられた。カワキは遠目に総隊長の動きを注視する。


「動くな」


 好々爺とした顔つきを崩さぬまま、けれど威圧感が伝わる声色で、浮竹と京楽に諭すように語りかける。


「罪人を連れて逃げたのは副隊長。斬って挿げ替えれば替えは利く。じゃが儂が許せんのはおぬしらじゃ。おぬしらは隊長としてしてはならん事をした」


 それがどういう事かわからない筈はない。そう告げる総隊長の言葉に固まる浮竹。カワキはその様子を絶好の好機だと捉えた。


⦅誰を狙うにも総隊長は油断ならない。あの二人がその相手をしてくれるなら、これに越したことはない⦆


 京楽がいち早く逃げの手を打った。


「よォし仕方ない!! それじゃいっちょ逃げるとしようか浮竹ェ!!!」


 浮竹の肩を掴んで崖から飛び降りた京楽。部下を置いていけないと言う浮竹に、ここで戦う方が危険だと返した。

 カワキは落下していく二人を睥睨する総隊長を一瞥した後、卯ノ花を視界に捉える。どうやら、倒れた副隊長達を治療しつつ他の場所へ向かうつもりのようだった。


⦅決まりだな。来た時は隊長達と真っ向からぶつかるつもりは無かったんだけど……⦆

『ここまで来てじたばたする方が格好がつかないか……。仕方ない』


 目を伏せてため息混じりに小さく囁いた声は風に消えた。せめて後の逃走が少しでも楽になるよう、今できることをしよう。その思いで、カワキは次の動きを決めた。


***

カワキ…戦場を見渡して…鬼、鬼、蜂! よぉし! 次の相手はキミに決めた!

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