海上のトーチカは少年の安息地たるや?2

海上のトーチカは少年の安息地たるや?2


(前)海上のトーチカは少年の安息地たるや? – Telegraph

※前回はキング主役の話を書いたので、今回はカイドウさん中心です。他SSの概念を勝手ながら拝借してます。

※キャラ崩壊と独自設定につき閲覧注意。


素性が分かったことで、彼に話を合わせることができるようになった。いくら大人びているとはいえそれでも成人しきっていない少年なのだ、現実を教えても混乱する。そう考えていたドレークは、「次の戦場に君を護送する、我々は味方と契約を結んだ海賊だ」とカバーストーリーを咄嗟に思いついた。功を奏して一先ず安心。


ドレーク「彼への指示は俺が行おう。同じ軍歴を持つ者だ、彼も接しやすいだろう」

サンジ「成程ね・・・・役割分担か」

ドレーク「あぁ。ローは診察、サンジは食事、モネ、ルフィ、ドラゴンはカイドウとの触れあいを。少しでも警戒心を解いた方が心身共に良いからな」

モネ「キングは、彼は大丈夫なのかしら」


一番のショックを受けたのはやはり右腕だったキング。地震の記憶が抜け落ちていたこと、そして何よりも目の前の子供が上司だなんて知ったら誰だってひっくり返るから無理もない。キングは現在気を紛らわせようとするがどれも集中できず何やら唸っている。


ルフィ「お、いたか」


そこに来たのがルフィ。キングの横に座る。


キング「何しに来た」

ルフィ「いやさ、聞きてぇことあってよ。一番知ってるのはお前だし」

キング「・・・・何のことだ?」

ルフィ「カイドウ」

キング「・・・・・・」


ドレーク・モネ・サンジ(いや直接的過ぎる・・・・!)


ルフィ「アイツの好きなもんとか、癖とか。後はそうだなー、服のセンスとか歌上手いのかとか・・・・」

キング「貴様、分かってて言っているのか」

ルフィ「ん?」


言葉を続けることはなかったが、深いため息を吐いた。隣にいる人間はまるで気にしていないような純粋な眼差しで見てくる。


ルフィ「・・・・お~い?」

キング「あのなぁ・・・・」

ルフィ「ん」

キング「言っただろうが、俺は若い頃のカイドウさんなんて・・・・」

ルフィ「今から知れば良いだろ?一緒じゃねえか。俺達も最初はお前のこと「親切な黒ミイラ」としか分かんなかったし。それに、一度仲良くなれたんだろ?」

キング「おれとカイドウさんはそんな関係じゃ・・・・」

ルフィ「あいつも、分かんなかったってよ」

キング「何がだ?」

ルフィ「初めて会った頃どうすれば良いか。この前夜番してたときに聞いたんだ」


“お前は強ぇ、 “キング”と名乗れ!!”

“俺の陰にいろ!!誰にも渡さねぇ!!”


あの時の出会いからずっと、彼は頼れる存在だった。今朝見たその姿に、ふとかつての自分を重ねる。あの日彼がそうしたように、自分がそうする番が来たのだろうか。そう思うと、少し感慨深いものがある。


キング「成程、師の心弟子知らずか・・・・」

ルフィ「まるで手のかかる息子のようだったってよ」

キング「それは坊ちゃんに聞かせたら不味いやつだ」


ゾロとチャカは自分達でもできることが何一つ思い付かないこともあり、有識者に尋ね回ることにした。映像電伝虫がいればどんな遠方にいる人間にも繋げることができる。凄い時代になったものだ、なんてぼやきながらチャカは通信環境を整え、ゾロは上手く映らずザー・・・・と画面に流れるモザイクと睨めっこしている。


チャカ「こんなもの、か?」

ゾロ「お。映ったぞ」

『聞こえ・・・・・もしm・・・・おーい』

ゾロ「途切れ途切れだな」

チャカ「まぁお互い海上なのだ、電波も悪かろう・・・」

チョッパー『・・・・ーし、もしもーし、聞こえるかぁ~?』

チャカ「聞こえているぞ」

ゾロ「久しぶりだな」

チョッパー『ゾロ~!!久しぶりだな~!』


彼等と最後に会ったのはドレスローザになる。


チョッパー『急に通信が入ったもんだから驚いたけど・・・何かあったのか?』

ゾロ「ウチの船医でも分からねぇことがあるようでな。専門の奴に聞いた方が早い。急な形で悪ィが今大丈夫か?」

チョッパー『び、病人が出たのか?!』

ゾロ「あー、まぁ似たようなもんか・・・・実はな、」


チョッパー『そうなのか・・・・「キンダーガーデン」、か』

チャカ「どうやら2日3日で治る見込みだというが・・・・」

チョッパー『ローがそう言ってたのか・・・』

ゾロ「でも不安らしい。そこで内科に詳しいお前を頼らせて貰った」


数十分後、積み上がった書籍の山からひょっこりと顔を覗かせたチョッパーから、衝撃の事実を伝えられる。


チョッパー『実は、「キンダーガーデン」の効果は人それぞれなんだ。精神的に辛いことがあった罹患者はその効果が長くなる。治療法はただ1つ、罹患者本人の悩みや苦しさを解決することだけなんだ』

チャカ「解決、か・・・中々難しいな、これは」

ゾロ「そうか、分かった。有り難うな」

チョッパー『それで、罹ってしまったのは誰なんだ?ルフィ?ロー?』

ゾロ「カイドウ」

チョッパー『カイドウ~~?!』

チャカ「そうか、君達はワの国まで来てないんだったな・・・・キング救出の際も政府は隠蔽してしまったし・・・」


一通り別れの挨拶を済ませ、次の人物に連絡する。電波が安定している陸地にいたからか、すぐに返事が入った。


マルコ『元気そうで何よりだよい・・・・それで、どうしたんだ?』

チャカ「本当に世話になっている中で申し訳ないが、ヤマトを呼んで欲しいんだ」

マルコ『それくらい気にすんな。おーい、ヤマト。エースの弟の仲間からだよい』

ヤマト『え、ホントだ!久しぶり!』


カイドウの一人娘・・・・否、一人息子のヤマト。現在は「白ひげ海賊団」残党と共に船長の故郷スフィンクスの防衛に就いている。


ゾロ「あー、ちっとばかし緊急事態でな。協力してくれると助かるんだが・・・」

チャカ「カイドウの過去について、何か知っていることはあるかね?」

ヤマト『へ?牛ゴリラの?・・・・何か聞いたことはあるんだけどなぁ・・・・う~ん』

マルコ『何があった?』

ゾロ「いや、それがな・・・」


歯切れの悪い2人。そこに、ひょっこりとツノをつけた少年が入り込んできた。後ろからは少年にも懐いたように見えるドラゴンもついてきている。


チャカ「・・・こういうことだ」

ヤマト・マルコ『え』

子カイドウ「何だこれは」


本日二度目の絶叫。


マルコ『・・・・へぇ、「キンダーガーデン」でそうなったのか』

ヤマト『面影も何もない・・・・あんなむさ苦しかったのに』

ドレーク「こら、勝手にほっつき歩くんじゃない、全く・・・・あ」

マルコ『どうも』

ドレーク「あー、ウチのがお世話になってます・・・・・・」

マルコ『さっきも似たこと聞いたよい』


ヤマトからは断片的ながら色々な話を教えて貰った。母となる女性との馴れ初め。好敵手についての述懐。酒癖の悪さの原因。妻に先立たれた時。苦労人ぶり。ただ幼少期に関してはカイドウ自身が誰にも言わなかったのだろう、ヤマトもとんと検討がつかないようだ。渦中のご本人は会話に興味が行かずドラゴンと戯れていた。


ヤマト『力になれなくてごめん・・・アイツ子供の頃の話は一切しなかったから・・・・』

ゾロ「いや、いいんだ。こっちも唐突に悪かったな」


そこでふと画面を見て気づいたのか、カイドウが映り込んできた。無理矢理間に割って入ったからかゾロとドレークの間からすっぽりと出てきた構図になる。じっと自らを見つめてくるその瞳に動揺しながら、ヤマトは恐る恐る声をかける。何せ喧嘩ばかりだった為に通常の接し方を忘れてしまったのだ。しかも父は自分よりも年下。とてもじゃないが緊張が凄い。


ヤマト『どうしたんだい・・・・・・?』

子カイドウ「お前、アイツ知ってんのか」


アイツ?


子カイドウ「知らねぇのか?」

ヤマト『ごめんね・・・分かんないや』

子カイドウ「何故か俺にずっとついてくるガキと似てるんだ。丁度お前と同じ髪色の女だった。この前はそいつが握り飯をくれた」

ヤマト『女・・・名前は?』

子カイドウ「名前?確か・・・・・・」


その名前は一同の耳に残った。あのカイドウに接してきた同年代の女子という存在だけでも強烈な印象を及ぼすが、その名前を聞いたヤマトの反応を見てより驚愕と感慨深さに包まれる。


ヤマト『お母さん・・・・・・』


カイドウの妻でありヤマトの母である女性は、彼をずっと見守っていたのである。


子カイドウ「おいお前、泣いてるぞ」

ヤマト『だ、大丈夫、気にしないで・・・良かった、お母さん・・・』

ドレーク「・・・カイドウ二等、まだ案内が終わっていない。着いてきてくれ」

子カイドウ「分かった。ドラゴン、お前も行くぞ」


2人と1匹が去った後の場には、しんみりとした空気が残った。


ヤマト『2人ともごめんね、いきなり泣いちゃって・・・・お母さんの話を聞けて、つい嬉しくて』

チャカ「大丈夫だ、家族を思う心は何より大切だからな」

マルコ『やっぱ家族って、良いもんだなぁ』

ゾロ「アイツにも妻がいたのか・・・・そりゃそうだが」

ヤマト『確かに意外に思えるよね・・・・でも、本当に良かった。お母さんのこと、覚えててくれたから』


その後別れの挨拶を済ませ、通信を切る。一旦情報整理だ。


チャカ「しかし、根幹たる過去に関しては、我々自身が導き出すしかないようだな」

ゾロ「そこまで詮索しなくても良いんじゃねぇか?」

チャカ「と言うと?」

ゾロ「あんまほじくられるのも気持ち悪いだろ。そういうのは残りのアイツらに任せようぜ。何も全員が知る必要もない」

チャカ「そうだな、流石はゾロだ」

ゾロ「ヘタクソなヨイショだな」


ゾロは大きく欠伸をしながらせず時を伸ばし、再び鍵となる情報を知っていそうな人物を探す作業に入った。チャカはその姿に安心感を覚えた。大丈夫だ、きっと何とかなる。そして、ここにはいないが、他の仲間達も上手くやってくれると確信し、彼も作業に戻った。


ここからは、彼等の視点に映る。


(続)海上のトーチカは少年の安息地たるや?3 – Telegraph





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