死神代行vs滅却師

死神代行vs滅却師


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空座町・郊外の洋館内


 一護が月島と戦っている頃、洋館の広間ではカワキと銀城の戦いが激しさを増していた。

 距離を詰めて斬りつけようとする銀城の動きを読んで、カワキが神聖弓を持つ手と逆の手にゼーレシュナイダーを構える。

 身の丈ほどもある大剣と細身の刀身が、甲高い音を立てて幾度もぶつかり合った。

 間合いを詰めれば斬撃が、開ければ銃撃が雨のように銀城へ降り注ぎ、戦況は徐々にカワキ有利へと傾いていく。


「援護は……必要無いようですね」

「ああ。月島が挟んでくれて助かったよ。いくらあたしらでも銀城とあんな化け物の相手を同時になんて出来やしないからね」


 天井の高い広間のあちこちを飛び回り、駆け回り、カワキと銀城の殺し合いは余人が立ち入る隙がないほど過熱していく。

 完現光と霊子の残光が花火のように何度も瞬いて広間を照らした。

 カワキには元より他人を気遣うつもりは毛頭なく、銀城もカワキの猛攻に他へ意識を割く余裕は失われ——戦いの余波は同じ広間にいるXCUTIONの面々にも降り注いだ。


「うわッ!? あっぶな……こっちにまで瓦礫が飛んできたよ……。ホント容赦ないなぁ」

「ったりめえよ! あの人は空座町の伝説の不良、志島カワキさんだぞ! あの戦いぶり、痺れるぜ……!」


 吹き飛んできた瓦礫を間一髪で回避した雪緒が、冷や汗を浮かべて、殺し合う二人から逃げるように広間の端へ移動した。

 手に汗握って、どこか憧れを感じさせるキラキラとした眼差しで、興奮した笑みを浮かべるのは獅子河原だ。

 感嘆に打ち震えながら、戦いを見上げる獅子河原の言葉に、目を吊り上げたリルカが地団駄を踏んで叫ぶ。


「意味わかんないわよ! いくらなんでもアレはやり過ぎでしょ!」

「確かに……。月島の奴、一体何を挟んだんだい……」

「さて、それは月島さんに聞いてみない事にはなんとも言えませんね。ですが、銀城さんのしぶとさは折り紙付きです。殺されはしないでしょう」


 激しい戦いの余波を避けて自然と広間の端に集まりながら、XCUTIONの面々は思い思いに言葉を交わす。

 一人、声を荒げたリルカは先刻から続く二色の光の瞬きを指差して、マイペースに話す仲間に訴えた。


「冷静に言ってる場合!? 「万が一の時はどうすんの」って言ってんの! あたし達にあんなのを止めろって言うの!?」

「空吾が頑張って切り抜けるのを祈るしかないんじゃない? あんな戦いに割り込むなんて、どう考えても無理でしょ」


 触らぬ神に祟りなし——至極当然の事のように、呆れた調子で雪緒はそう呟いた。


◇◇◇


 剣を交えながら、敵意にぎらついた目でカワキを睨めつけた銀城が、怒りに燃えた口調でカワキを糾弾する。


「やっぱり、てめえは一護の敵だったんだな! ハッ! 雪緒達ならともかくてめえが相手なら手加減の必要は無さそうだ!」


 ゼーレシュナイダーで大剣の鋒を弾き、距離を開けたカワキが眉を顰めた。


『……“やっぱり”? どういう意味かな』

「白々しいこと言ってんじゃねえよ。月島とグルだとは予想外だったが……最初からアイツと組んでたのか?」


 少し離れた位置で油断なく大剣を構え、唸るように低い声で問い質す銀城。

 カワキは得心が入ったという態度で目を細め、つまらなそうに肩の力を抜いた。


『ああ、そういう……。答える必要の無い質問だ。それを聞いてどうする?』

「あァ?」

『つまり君はここで死ぬという事だ。私の情報を手に入れる意味が無い』


 明確に敵対の意思を示したカワキへと、吼えた銀城が斬りかかる。


「そうかよ!」


 激情に身を任せているように見えても、銀城の戦い方は隙の無いものだった。

 攻勢に回った銀城の鋭い剣戟をいなし、カワキが銀城を床へと叩き落とす。

 砕けたタイルの破片と舞い上がる白煙に視界が煙った。

 勢い良く地面に激突しながらも、すぐに立ち上がって大剣を構えようとした銀城。

 煙に紛れて飛びかかったカワキが、大剣を掴む銀城の腕と頭を押さえ、容赦なく頭から床にめり込ませる。


「!? ぐあッ!!」

『おしまいにしよう。私にはもう一人——殺さなくちゃいけない男がいるんだ』


 倒れ込んだ銀城の首筋目掛けて、カワキがゼーレシュナイダーを振り下ろし——

 霊子の刃に貫かれる寸前、死に物狂いで躱した銀城が大きな窓から洋館の外へ飛び出した。


「くそ……っ! さすがに強えな……!」

『……外に逃げたか。面倒なことを……』


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