拓海達の新年
モテパニ作者年が明けた1月1日。
拓海とゆいとダークドリームは神社に来ていた。
初詣というのもあるが…
あまね「来たな品田ぁ!」
例によってあまねから呼ばれたのもあった。
拓海「てか菓彩、なんだよその格好」
あまね「フッ、さすが目敏いな品田。見ての通りこれは巫女服だ」
出迎えたあまねは紅白の衣服に身を包んでいたのだ。
ゆい「あまねちゃん巫女さんやるの?」
あまね「ああ。社会経験の一つとしてな。ちなみに話をつけてあるから皆がよければ参加しても構わないぞ。お手伝いの報酬はお汁粉食べ放題を約束してもらった」
ゆいリム「「やるー!」」
食べ放題に釣られて二つ返事で了承するゆいとダークドリーム。
拓海「…たくっ、お前ら」
あまね「品田にも手伝ってもらうぞ。まさかゆいとダークドリームを放置はしないだろう?」
拓海「わかってるよ」
ここに呼ばれた時点でこうなるのはわかっていた。
ハメられた感があるのは若干悔しいが、まあ素直に従っておこう。
拓海「俺たち意外には誰か来てるのか?」
あまね「今年はソラ達が外せない用事でスカイランドに行っているからな、あまり手広く呼びかけてはいない。来ているのは私たちを除いて三人だ。もう来ているからそちらへ向かおう」
拓海たちはあまねに連れられすでに来ている者達の元へ向かう。
あまね「おっと忘れていた。明けましておめでとうだ。品田、ゆい、ダークドリーム」
拓海「明けましておめでとう菓彩」
ゆい「明けましておめでとうあまねちゃん」
ダークドリーム「明けましておめでとうあまね」
道中で新年の挨拶を済ませて待ち合わせ場所に辿り着く。
のどか「あ!明けましておめでとう拓海くん、ゆいちゃん、ダークドリームちゃん」
さあや「今年もよろしくね」
ローラ「ふんっ!女の子を待たせて!あんた最低よ!」
拓海「花寺、薬師寺、ローラ」
待っていたのはのどか、さあや、ローラの三人。
中々珍しい組み合わせだ。
あまね「ではみんなで巫女服に着替えに行くぞ。品田は社務所の人に聞いてくれ」
拓海「わかった」
そうして拓海とあまね達は一旦別れるのだった。
〜〜〜
ゆい「あれ?ダークドリームちゃんのそのネックウォーマー拓海のと同じやつだよね?お揃いにしたの?」
更衣室にてダークドリームが外した防寒具を見てゆいが訪ねる。
先程まで上着に隠れていてよくわからなかったが、よく見ると以前拓海が身につけていた物と同じだった。
ダークドリーム「これ?拓海がもういらないからってくれたけど」
あまね「ほう品田め、自分のお古を年頃の女子に着せるとはいい趣味をしているじゃないか」
ローラ「女の子に自分のを着せて自分に染めてやろうっていうの!?なんてやつなの!」
ダークドリームへお下がりを譲渡したのに対して本人不在なのにいつも通り揶揄い口調のあまねと罵り口調のローラ。
この二人はマイペースだ。
さあや「防寒具がいらなくなっただなんて、なにがあったんだろう、ね、のどか」
のどか「そ、そうだね。なにがあったんだろうね…」
〜〜〜
そして時間は経ち、先に着替えを済ませた拓海の元へ六人の巫女が現れた。
ゆい「拓海〜、どうどう?」
のどか「に、似合うかな?///」
ローラ「ふふん、褒めてもいいのよ?」
拓海「おお…」
拓海は圧倒されてしまう。
白と紅があしらわれたシンプルなデザイン。
それゆえに身につけた少女達の魅力が押し出されている。
そんな娘達が一斉に現れれば拓海も言葉を失う。
あまね「フッ、言葉も出ないか品田。私たちの巫女の姿の衝撃がすごいとみえる」
拓海「………いや菓彩はさっき見せてただろ」
あまね「ならその時感想を言わんか品田ぁ!」
拓海「悪い悪い、…菓彩の言う通り似合ってて感想忘れちまったんだよ」
あまね「な!?///」
思わぬ反撃に顔を赤くするあまね。
あまね「……誤魔化すな品田ぁ!」
拓海「おっと、どうだかな」
ローラ「ちょっと!?なにわたしたちほっといてあまねといちゃついてんのよ!?」
あまね「い、いちゃついてなど!」
拓海「ごめんな。みんなすげー似合ってるぞ」
ゆい「えへへ〜」
のどか「そ、そっか///」
ローラ「フンッ///」
さあや「うふふ」
その褒め言葉に皆一様に喜ぶ、一人を除いて。
ダークドリーム「さすがにありきたり過ぎでしょ、もっと気の利いた事言えないの?」
拓海「悪いな、こういうの慣れて無いんだよ」
ダークドリームはこういう事を遠慮なく言う。
ある意味いい関係である。
あまね「んんっ!それはともかくそろそろ仕事の時間だ。我々は主におみくじや御守りなどの販売を手伝うぞ。早朝から働いていた巫女の方と交代を行うのでついてくるように」
あまねは話を区切りみんなで神社のお手伝いを始めるのだった。
〜〜〜
拓海「ふぅ…」
それから時間が経つ。
女性陣は主に社務所でおみくじなどの販売。
拓海は備品の整理などを頼まれていた。
さすが年始の神社。備品整理の量も多く、体力に自信のある拓海でもハードな仕事だ。
ダークドリーム「拓海、疲れたんならそっちのもよこしなさい」
しかしそれは無限の体力がある彼女には関係ない。
さすがに男女比が偏り過ぎているということでこちらに回されたダークドリームは拓海以上の活躍を見せていた。
拓海「いや大丈夫だよ。てかそんな臼持ったままじゃこっちのは持てないだろ」
ダークドリーム「これ臼っていうんだ。なにする道具なの?」
拓海「餅つきの道具だ。そろそろ始まるみたいだからな」
ダークドリーム「餅つき?」
そんな会話をしながらお互い本殿の近くへ行くと。
あまね「こっちだ品田。さあ今回のメインイベント餅つきの始まりだ!」
幾つかの臼と杵、そして餅米等が用意されて周囲の人間が集まり餅つきが開催される。
ダークドリーム「拓海、餅つきってなに?」
拓海「その名のとおり餅米を突いて餅にするんだ。今日のお汁粉用の餅もあれから用意されるらしいぞ」
ダークドリーム「なんですって!?拓海!私たちもやるわよ!」
拓海「いやそんな勝手に…」
あまね「ふむ、いいアイディアかもしれないな、掛け合ってみよう」
拓海「え?」
あまねは餅つきを見守っている立場のありそうな人に駆け寄って話をすると。
あまね「よし品田!許可をもらったぞ!我々で美味い餅を作ろう!」
拓海「お前の交渉能力どうなってんだ…」
〜〜〜
それからゆいたちも集めて餅つきを始める。
一番手の突き手はダークドリーム、返し手は拓海となった。
拓海「いいか?よいしょーっ!で突いて、俺がはいっ!っていったら形を整える。それを繰り返すんだ」
ダークドリーム「わかった」
二人は構え…
ダークドリーム「よいしょーっ!」
拓海「はいっ!」
ダークドリーム「よいしょーっ!」
拓海「はいっ!」
それを何度も繰り返す。
そしてそれなりにやったあたりで…
ゆい「はーい、じゃあ次あたしがやるー!」
ダークドリーム「え?私まだまだいけるけど?」
拓海「こういうのは交代でやるもんだ。疲れてなくても交代しとけ」
ダークドリーム「そう、わかった」
ダークドリームはゆいに杵を渡す。
拓海「よしゆい、さっきと同じ感じで行くぞ」
ゆい「わかった!よーし!よいしょーっ!」
拓海「はいっ!」
ゆい「よいしょーっ!」
拓海「はいっ!」
先程同様に軽快に餅を突いていく二人。
ゆい「はい、次のどかちゃん」
のどか「うん、それじゃ…ふわっ!」
ゆいから何気なく受け取った杵が予想以上に重くのどかはバランスを崩してしまう。
ゆいとダークドリームが普通にやっていたから勘違いしてしまったが、普通の女子中学生に杵は重かった。
さあや「(ぴーん!)」
その様子を見たさあやに天啓が降りる!
さあや「その杵はのどかに振るうのは難しそうだね」
のどか「うん…ごめん誰か代わって…」
さあや「だから拓海、手伝ってあげたら?返し手は私が代わるからさ」
のどか「……………え?」
さあやの言葉に固まるのどか。
拓海「俺はいいけど、花寺はいいのか?」
さあや「いいんじゃないの?ね、のどか」
のどか「う、うん…」
のどかが了承したことで拓海はのどかの後ろに周り、杵の持ち手をのどかに合わせて持つ。
のどか「(ふわわわわ!?)」
拓海「よし花寺、タイミングは花寺に任せるからさっきと同じようにな」
のどか「う、うん!よ、よいしょーっ!」
さあや「はいっ!」
のどか「よいしょーっ!」
さあや「はいっ!」
のどかは拓海に手伝ってもらいなんとか餅を突く。
終わる頃にはのどかはかなり息を切らしていた。
おそらく餅を突いたのだけが理由ではない。
さあや「えーっとそれじゃあ…」
ローラ「次はわたしがやるわ!」
次の突き手を決めようとしているとローラが強く立候補する。
拓海「お、次はローラか。じゃあほい」
のどかが手を離した事で杵は拓海が持っていたのでそのままローラに渡そうとする。
しかし…
ローラ「なにわたしだけにやらせようとしてんのよ!グランオーシャンの次期女王たるわたしの大切な体になにかあったら大変でしょ!だから!あんたに手伝わせてあげてもいいのよ!」
拓海「お、おう…」
すごい勢いでローラに押し切られてしまう。
拓海はローラの後ろにも周り合わせて杵を握る。
ローラ「〜〜〜///」
拓海「よしローラ、さっきと同じようにいくぞ」
ローラ「よ、よ〜し!よ、よいしょーっ!」
拓海「うわっ!」
先程のようにいこうとするも、ローラが緊張のあまり乱暴にいってしまったためバランスを崩す。
拓海「落ち着けローラ!」
ローラを宥めるために杵から手を離してローラの体を抑える。
ローラ「ちょっ!なにさわってんのよ!?」
拓海「悪い、嫌だったか」
ローラ「嫌とは言ってないけどね!」
そんなやりとりをしながらローラも餅を突いていく。
終わった頃には煮魚が転がっていた。
さあや「じゃあ次は私。拓海、私も手伝ってくれるよね?」
拓海「あ、ああもちろん」
さあやの雰囲気に当てられて若干怯むが、ここまで来て断る理由もない。
素直に要請に応じる。
あまね「返し手は私がやろう」
空いた返し手はあまねが付く。
さあや「さあ、よいしょーっ!」
あまね「はいっ!」
さあや「よいしょーっ!」
あまね「はいっ!」
前の二人程のぎこちなさもなく息の合った動きで餅を突いていくさあやと拓海。
ある程度突き終わる。
さあや「ふぅ、よかった」
それはなにに対してなのか、誰も聞かなかった。
さあや「はい、じゃあ次はあまね。もちろん拓海に手伝ってもらうよね?」
あまね「い、いや私は…」
さあや「せっかくだからみんなでやろうよ。ゆいとダークドリームも合わせて、ね」
ゆい「!?」
ダークドリーム「え?拓海と一緒にってこと?一人の方がやりやすそうだし私はそっちの方がいいんだけど」
あまねはさあやの提案の意図を察する。
先程の流れから次々と女性陣の餅つきの介助を行う拓海を見てゆいは僅かに心を燻らせていた。
一人で杵を振るえるから拓海の介助がいらない。
それゆえに拓海がみんなにやっていることを自分にはしてくれないことを気にしてだ。
しかしここであまねがさあやの提案に乗ればいちおうみんなでやろうという流れが生まれる。
拓海とゆいの関係を応援するあまねにここで断るという選択肢はなかった、例えあまねが自主的に拓海と一定距離を取っているとしても。
しかしさあやは何故こんなことをしているのか。
決まっている、良かれと思ってだ。
事実この流れは誰も損していない、むしろ得してるといっていい。
あまねも拓海と触れ合うのが嫌ではない、そしてそれはこの場の全員がそう。
さあやは己を利するために他人にも利したのだ。
狡猾、しかし慈悲深い。
いろいろな意味で天使の名を冠するにふさわしいプリキュアといえた。
あまね「で、ではやるぞ!品田ぁ!」
拓海「お、おう…」
あまねと拓海は位置につき、返し手は再びさあやが担当する。
あまね「よいしょーっ!」
さあや「はいっ!」
あまね「よいしょーっ!」
さあや「はいっ!」
そして突き終わるとあまねは拓海に顔を見せないまま少し離れる。
拓海「菓彩?」
あまね「なんでもない!」
とりあえずあまねは置いておき再びゆいに杵が回ってくる。
ゆい「じゃ、じゃあ拓海、や、やろっか?」
拓海「う、うん…」
さあや「ふふふ♪」
拓海にとっては想い人、ゆいはまだ無自覚ながら一番意識してる異性。
お互い緊張しながら二人は餅を突くのだった。
ダークドリーム「で?結局私も拓海と一緒に突くの?」
拓海「…まあ、流れだしやっとこうぜ」
ダークドリーム「まあいいけど」
そうして再度ダークドリームは餅を突き、その後みんなで突いたお餅が入ったお汁粉をみんなで食べるのだった。