帰る場所 3
私が読みたくなっちゃっただけのちょっとした話
正史組達との戦いでIFミンゴを無事に倒した後の、IF世界に残ったIFロー達の話
いろんな好きな概念を無理矢理詰め込んでます
前回「帰る場所 2」
ドフラミンゴもこんな辺境の島の、小さな街の情報は得られなかったんだろう。だから今もこの街はあの時と変わらずにそこにあった。街の人達も変わらず生活していた
帰ろう、それが分かっただけでもう十分だ
踵を返せばベビー5が止めてきた
「会いに行かないの!?」
「あぁ」
「……本当に良いのか?」
「良いんだ、生きているって分かっただけで俺としては十分なんだ」
それに今の俺を、一緒に島を出発したあいつ等を守れなかった俺を、きっと島の人達は受け入れられないだろう。だから会わなくて良いんだ
でも、本当に、皆生きててくれて良かった
次の瞬間、俺の足は地面から離れて、体は宙に浮いていた
「は?」
何が起きたか分からない
視界の隅に両腕を伸ばして、俺を突き飛ばしたであろうベビー5が見えた
何してんだお前と睨み付ければ、ベビー5は泣きながらドレーク屋にしがみ付いた
地面に倒れた音で街の人達の視線が一気にこちらに向く
「……ロー?」
「あ……」
拙い、見られた
元の面影の無い今の俺を、大切にしてくれた街の人達には見られたくなかった
慌てて立ち上がるが、それよりも早く街の人達が俺のすぐ側に駆け寄って来ていた
「ロー!!」
また何が起きたか分からなかった
街の人達に泣きながら抱き締められていた
「生きてたんだな!!」
「良かった、良かった!!」
「ロー!!」
何で
本当にこの街の人達は何でこんなに優しいんだ
「何で…だって俺、ベポ達を守れなかったのに……何で良かったなんて……」
「お前だけでも生きててくれて嬉しいからだよ!!」
叫ぶような声でそう言われた
皆泣きながら頷いている
嘘じゃない、本心から皆俺が生きている事を喜んでくれているのが分かった。こんな俺の事を、この街の人達は今でも大切に思ってくれていた。それが嬉しくて、申し訳なくて、受け入れてくれないだろうと勝手に思っていた自分が嫌になる
気が付いた時には涙が溢れていた。違うんだ、生きていて良かったは俺のセリフなんだよ
街の人達を抱き締め返せば、更に力強く抱き締められた。少し苦しいと笑えば、皆慌てて俺を離した
「兎に角お祝いだ!」
「生きて帰って来てくれてありがとう!」
「おかえり!!」
口々に俺の帰還を歓迎する言葉を投げられて、俺は嬉しくて笑っていた
そんな時、聞き覚えのある音が聞こえてきた
今でも覚えてる、この音は昔俺達を乗せて街まで走ったバギーのエンジン音だ。ヴォルフの発明のバギーのエンジン音
後ろで停車の音が聞こえて振り返れば、オールバックの白髪、真っ赤なサンバイザー、圧倒的に雪景色の中にそぐわない変な柄のアロハシャツと短パン、足元はサンダル
俺の友達がそこにいた
「ヴォルフ……」
驚いた様子のヴォルフはすぐにバギーから降りてくると、俺の顔を拳で思い切り殴り飛ばしてきた
ベビー5に突き飛ばされた時とは明らかに違う強い衝撃で宙に浮いた体は、背中から地面に叩き付けられた
肺から空気が一気に押し出されるような感覚に何度も咳き込んだ
「ちょっと貴方ローに何するのよ!!」
傍で様子を見ていたベビー5とドレーク屋が出て来てベビー5はヴォルフに声を上げた
「誰じゃお前は!関係無い奴は黙っておれ!!」
ヴォルフが怒鳴った瞬間にベビー5は泣きながらドレーク屋にしがみ付いた。もう少し頑張れよそこは!
俺は咳き込みながら起き上がれば、島の駐在のラッドが慌てた様子でヴォルフを押えていたが、この爺さんの実力は相当なもんだ、簡単に投げ飛ばして俺のすぐ前まで歩いてきていた
再び腕を振り上げたヴォルフに俺は咄嗟に目を瞑って腕で頭を守る動作をした
痛みは来なかった
目を開けばヴォルフの腕は俺の体を抱き締めていた
「……ヴォルフ?」
「要らん気苦労をかけさせおって……どれだけ、どれだけ心配したと……生きてたんなら、もっと早くに言わんか……」
声が震えていた
鼻を啜る音も聞こえる
俺はヴォルフの体を抱き締めた
「ごめん、ごめんヴォルフ…心配かけてごめん……あいつ等の事守れなくてごめん……」
「……ふん!」
顔を上げたヴォルフの目には涙は無かったが、目尻は赤くなっていた