帰る場所 終
私が読みたくなっちゃっただけのちょっとした話。これでラスト
正史組達との戦いでIFミンゴを無事に倒した後の、IF世界に残ったIFロー達の話
いろんな好きな概念を無理矢理詰め込んでます
前回「帰る場所 3」
何年ぶりかに帰って来たヴォルフの家は記憶の中にある景色と変わっていなかった
ドレーク屋とベビー5も連れて帰って来たが、二人はどうしたら良いのか分からない様子だった
取り合えずリビングルームに移動して適当な椅子に座らせる。その時に少し気になる事があった
「なぁヴォルフ」
「何じゃ?」
「このダイニングテーブルこんなに大きかったか?」
昔全員で食事をとったダイニングテーブル、ヴォルフと俺と、ベポとペンギンとシャチ、このメンバーが問題無く使えていたサイズだったのは確かだが、もう少し、もう一回りくらい小さかった気がする
と、そう問い掛ければヴォルフは「ふん」と鼻を鳴らす
「大きい方が何かと使い勝手が良いんじゃ」
「元のサイズでもお前一人なら十分だっただろ」
「なぁトラファルガー、そろそろ彼の事を教えてもらえないか?」
ドレーク屋がそう言えば、俺が紹介する前にヴォルフが自己紹介し始めた
「ワシの名はヴォルフ!希代の天才発明家、ヴォルフ様じゃ!」
「こいつの言う事は適当に流しとけ、実際はただのガラクタ屋だ」
「やかましいわロー!相変わらず失礼な奴じゃな!!」
確かこのやり取り昔にもしたな。あの時はペンギンとシャチに対してだった
今度は俺の方からヴォルフに二人を紹介する
「こいつ等は俺を助けてくれた奴等の内の二人だ」
「X・ドレークだ」
「ベビー5よ」
「随分と変わった名前のお嬢さんじゃな」
「コードネームよ」
紹介を終えたら今度は何を話したら良いのか分からなくなる。ただ兎に角謝らずにはいられなかった
「ヴォルフ、その…本当に悪かった……」
「ふん、お前からの謝罪はさっき聞き飽きたわ。そもそもお前が謝ったところで失った物は戻ってこないんじゃ。なら前を向いて歩いて行かんか、昔のお前がそうしたようにな。でなければあいつ等も花マル無敵号も浮かばれん」
「「花マル無敵号???」」
「……ポーラータング号の事だ」
この爺さんまだその名前で呼んでたのか。何だか可笑しくて笑えてきた
ヴォルフのさっきの言葉がもう一度頭の中で再生された
前を向いて歩いて
かつての俺はいろんな物を失って、それでも俺はヴォルフやいろんな人達と出会って、ただがむしゃらに突き進んでいた。そうだな、いつまでも足踏みしている姿を、きっとあいつ等は見たくないだろう
完全に前の俺の様には出来ないだろうけど、それでも今の俺に出来る限り必死に生きてみよう
「なぁヴォルフ、俺さ、またこの街で、この家で暮らして良いか?」
「勝手にせい。お前の人生なんじゃ、変に口出しする気は無い」
そうだな、そうやってあの時も送り出してくれたんだもんな
「ドレーク屋、ベビー5、お前等も此処で暮らすか?」
「「え?」」
「お前はまたそうやって勝手に家に住民を増やそうとしおって!!」
「俺の人生なんだ、変に口出ししないんじゃなかったのか?」
「そもそも此処はワシの家じゃ!!」
俺が笑えばヴォルフは大きく溜め息を吐いた
ドレーク屋とベビー5はお互いの顔を見た後に俺を見た
「素敵ね!私も一緒に暮らすわ!」
「俺は一度センゴクさんに連絡を入れないと」
「よし決まりだな」
「相も変わらずのクソガキじゃな!!だがロー、忘れてるかもしれんから言うがワシの信条は」
「『世の中はギブ&テイク』だろ?散々言われたから覚えてるよ」
「それなら良い。ならワシは部屋を使わせてやる。変わりに掃除は自分達でやるんじゃぞ」
「分かってる」
席を立って空いているであろう部屋に向かった。俺の後をヴォルフ達がついて来た
とある一室の前
かつて俺達が使っていた部屋の前で俺は足を止めた
あれから結構時間が経っているんだ、どうせ中に何も残っちゃいないだろうと思いながらドアノブに手を掛けようとしてヴォルフに止められた
「一応言っておくが、散らかっておるぞ」
「……え?」
「人の物は、流石に勝手に捨てられんかったからのう」
そう言って俺の代わりにヴォルフがドアを開けた
部屋の中は俺達が最後に使った時と全く変わっていなかった
ベッドの位置も、机の位置も、カーテンもラグも、記憶の中の景色と何も変わっていなかった
初めて街に行く前日の夜、不安に駆られるあいつ等を励ました
島の財宝の伝説と海中を飛ぶツバメの話をした
悪夢に魘されて飛び起きた
あいつ等に海賊として海に出ようと提案した
あの時の部屋がそのままそこに残っていた
「……ったく、いっそ全部捨てておけよ。これじゃあ断捨離しねぇと使えねぇじゃねぇか」
「ふん、ならいっそ出航の前にお前達が全部処分しておけば良かっただけじゃろう」
「良いじゃない、ちょっと掃除したら家具を揃える手間も無くすぐ使えるって事でしょう?私掃除は得意なの!ほら貴方も手伝って!」
「え、あ、おい!」
ベビー5は意気揚々とドレーク屋を引っ張って部屋の中に入って掃除を始めた
「「「ただいまヴォルフ!お帰りローさん!」」」
あいつ等の声が聞こえた気がして振り返る。変わらずの廊下の景色があるだけだったが、それでもきっとあいつ等も一緒に帰って来たんだと、何故か確信出来た
「なぁヴォルフ」
「何じゃ?」
そういえば俺もまだ言ってなかった
「ただいま」
「……あぁ、お帰り。よく戻った」
もうどこにも無いと思っていた帰る場所は、確かにここに残っていた