加筆まとめ②

加筆まとめ②

破面との接触

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空座町・郊外の森


「ぶはァ〜〜! 面付いてた頃に何度か来たが、相変わらず現世はつまんねえ処だなァ、オイ! 霊子が薄すぎて息しづれえしよォ!」

「文句を垂れるな。俺は一人でいいと言った筈だ。来たがったのはお前だぞヤミー」


 地面にクレーターが出来ている。カワキは獣のように茂みに隠れて、クレーターの中心に降り立った二人組を観察していた。

 白い死覇装に割れた仮面――…破面だ。霊圧、濃度、安定性から見てかなりの強敵である事は間違いない。


「へーへー、すいませんすいません」


 不貞腐れた態度でズンズンとクレーターの中心から大柄な男が歩いてくる。破面が徒党を組んでいるという事実に、カワキが厄介な…と眉を顰めた。


「…何だ…? 隕石か…?」

「なんもねーぞ?」

「じゃあ何が落ちたんだよ…!?」

「近付いて大丈夫なのか…?」


 霊力のない人間も落下音やクレーターは認識できていた。野次馬が次々と集まる中でカワキの思考は氷のように冷えていく。


⦅現世に出て来たんだ。破面なら今が一番弱っているタイミングの筈。得られる情報はすべて手に入れたい⦆

「……何だこいつら。ジロジロ見てんじゃねーよ、吸うぞコラ」


 カワキは隠れていた茂みから立ち上がると、野次馬など目に入らない様子で銃を手に歩み出る。野次馬に不愉快そうな態度で何かしようとしていたヤミーが、カワキに気付いた。


『こんにちは、随分派手な登場だね。これほどの霊圧の持ち主が、現世に一体どんな用向きで?』

「…あァ!? 何だお前?」

『見ての通りの人間だよ』


 周囲に集まった野次馬が困惑に騒めく。

 薄く微笑みを浮かべた少女の蒼い双眸が見つめる先には何も無い。涼やかな声色で紡がれる言葉には意味不明な単語が並ぶ。彼らにはさぞや不気味に見えただろう。


「ウルキオラ!! こいつか!?」

『? 現世に探し人でもいるのかな?』

「な…なあ、あんた……さっきから一体、誰と話してんだ…?」

「悪ふざけしてる場合じゃ…」


 己の言葉を遮られたように感じて舌打ちをしたヤミーが、不快感を隠しもしないで首を鳴らした。大きく息を吸うような動きをすると、周囲一帯の魂魄が口に向かってどんどん吸われて行く。


⦅雑魚向けの技だな。とは言え、この辺の人間は全滅だろう。また一護が騒いで首を突っ込んでしまう……⦆

「ぶっはーーっ!! まじィ!!」

「当たり前だ。そんな薄い魂、美味い訳がないだろう」


 カワキは銃を肩に担ぐようにしてため息をついた。ウルキオラの視線が、カワキに向けられる。それに気付きカワキも視線を返した。緑と蒼。色こそ違えど大樹のウロのような昏い瞳はよく似通って見えた。


「だってコイツらが、ヒトが喋ってんのにゴチャゴチャうるせーからよォ! で? 結局こいつが標的か?」

「いや、違う。…だがゴミではないな」


 ウルキオラが警戒の色を瞳に浮かべる。カワキは評価される程の霊圧を放っているつもりなど無かった。ウルキオラの言葉に首を傾げて、続きの言葉を待つ。


「黒髪に碧眼、霊子の銃――……その女は志島カワキだ。藍染様の仰っていた、現世でまともに戦えるレベルの霊圧を持つ者の一人――…」


 ウルキオラの言葉に、カワキがすっと目を細めた。その瞳は凍る様に冷たい。紡ぐ言葉からも温度が抜けていく。


『へえ、君達は私の名前を知っているんだね。“藍染”……と言うと、私の知る藍染と同じ人物でいいのかな?』

「話す必要はないな」

『冷たいね。虚は心に穴が開いている、と言う話は本当らしい』


 ウルキオラの眉がぴくりと動いた。表情こそ変わらないものの、その言葉の何かがウルキオラの神経を逆撫でしたらしい。

 カワキはじっと二人を観察しながらも、情報収集に最適な手法を考える。前髪の間からちらつく瞳は爛々と輝いていた。


⦅この破面達は強い。情報を引き出す為に交戦するなら今だ⦆


 霊子に満ちた尸魂界や虚圏と違い、現世では破面は弱体化する。万が一、想定以上に相手が強く、カワキの力が及ばなかったとしても今なら生き残れる可能性が高い。


「…ちっ。標的じゃねえのかよ」

『標的とやらが誰の事かは知らないけど、ここで騒ぎを起こされては私が困るんだ』


 退屈そうに吐き捨てたヤミーに、カワキが銃を持つ手を持ち上げた。カワキに戦意がある事に気付いたヤミーが凶悪な笑みでそれに応えた。


「そうかい!」

『ああ、悪いけどハチの巣になってくれ』


***

カワキ…情報収集チャンスは逃がさない。たつきがやられるより早く到着していたが特に助けてくれない。冷たい。

心に穴が開いているのはお前(定期)


たつき…ヤミーが魂吸したので多分、画面外で倒れている。まだギリギリ意識ある。


ウルキオラ…カワキの言葉が癇に障ったがここはまだ動かない。藍染による「現世のヤバい奴リスト」にカワキが載ってるので警戒はしている。


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