Dear My Friend
石田の生徒会加入勿論捏造仲のいい男の子 の続き
びっくりし過ぎて頭が追いついていない。
前触れもなく、オブラートに包むような回りくどさもなく、真摯で熱烈な告白はまるでドラマのようだ。
ずっと仲間だと、友人の関係がこれからも続いていくのだろうと思っていた石田が自分に恋愛感情を抱いていたなんて撫子は思いもしなかった。
ーーアタシも好きやで、とは言えなかった。
どうすれば良いかわからない。
「今日はありがとう、送るよ」
弁当箱を洗い終えた石田が声を掛けてきたが、まともに目を合わせることができない。
家まで送る、という申し出を断り、撫子は夜の空座町を1人歩いて帰る。
心臓が大きく跳ね上がっている。大きく息を吸って、吐いた。
驚いているし、正直、まだ気持ちの整理がつかない。
でも石田が真剣なのは伝わってきた。だから自分も向き合わなければならないと思う。
ーーーどんな顔して何いえば良いんや……
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連絡を受けて撫子を迎え入れたときから、顔色が悪いような気はしたのだ。しかし、真冬にショートパンツという恰好だから単に外が寒かったからかもしれないと思い、一護はとりあえず自室に通しエアコンの温度を上げてやった。
「ホラ、冷める前に飲めよ」
と言いながらコーヒーの入ったマグカップを膝を抱えた撫子へ差し向けた。
「ありがと……」
撫子が礼を言い、マグカップを受け取ると一護は少し安心し、自分の分のコーヒーに口を付けた。
「で、話って?」
「うん……あの、……石田がアタシの事好きって、一護は知ってた?」
いきなりの質問に一護は面食らう。
「知らねーよ!つーか、いつから!?」
驚きすぎて思わず大きな声が出てしまった。
先程までの緊張感はどこへ行ったのやら、撫子は堰を切ったように喋り出す。
いくら信頼する仲間とはいえ一人暮らしの男の家へ、飯と変な本を持ち、そんな格好でホイホイ上がり込む所に突っ込もうと思ったがとりあえず後回しにする。
撫子の話を纏めると、先程石田から突然告白され、少し考えたが混乱してしまい、こうして一護に相談に来た、ということだった。
石田が撫子に好意を抱いていることは薄々気づいていたが、まさか告白され、それを俺に持ちかけにくるというのはどういう、とは聞かずに飲み込んだ。
撫子は一護の事も石田同様大切な仲間だと思っているから、なにか遠慮する必要は無いと思って相談しにきたに違いないからだ。
「……なんか、ゴメンなぁ。急にこんな話してもうて……」
「別にお前が悪く思う必要は無ェよ」
「うぅん……つ、付き合った方がいいんかな?」
「無理に付き合ってもお互い気まずくなるだけじゃねぇの?」
立てた脚のつるりとした膝頭が目に入るが、何となく見ないようにする。
「ーー石田が生徒会入ったの、お前がピアスの穴開けたいけど校則で禁止されてるからって話してすぐ後だよな」
「言われてみたら…」
撫子は耳たぶに手を当てる。校則が変更になってすぐ、一護達に開けてもらったピアスホールには今も小さな石がぶら下がっている。
改めて石田の行動を考えると何か不思議な気がした。
「アイツ変な所で真面目すぎるんだよ。それで仕事増やしてろくなことねーぞ」
「ふっ……」
撫子は堪えきれないといった様子で
「あははははは!」
と笑い出した。
「なんだ、元気じゃねーか」
「はははは! そうやね……。なァ、一護……アカンかも知れへんけど、アタシ石田と明日ちゃんと話すわ」
「おう、そうしろ」
「あとな、これ……」
撫子は自分の鞄を探り、ラッピングされた小さな包みを取り出し、一護に差し出してくる。
「ちょっと早いけど、チョコ」
「サンキュ」
「試作品でも味は保証するで?…リサ姉の本は今度持ってくるわ」
「今度も何も読まねぇよ!そう言う事なら3倍返しなんて期待すんじゃねーぞ」
「ぶはは!ありがとう一護」
いつも通りふにゃりと笑っているのにホッとして、撫子の頭をぽん、と撫でるように叩いた。
撫子を玄関まで見送ると一護は机に置いた、本命では無いチョコレートを見る。
2人がどうなるのかはわからないが、何となく上手くいくような気がしていた。