・主従ハーレムは突然に?
俺の家にはメイドがいる。しかし、俺は別に金持ちの坊っちゃんと言うわけではない。では何故か、と言うと。
「ウマ娘の彼女いるけど質問ある?っと、スレ立てヨシ!」
この、現在絶賛利用中の掲示板と関係がある。
「『嘘乙』『寝言は寝て言え』『お前…頭が……』『以下タフスレ』『お前変なクスリでもやってるのか』………うーんまあ、そんなもんだよなって反応」
「どうしたんですか?ご主人様」
俺がパソコンに向かいながら独り言を言っているとやってきたのが、当のメイドである。ただし彼女はただのメイドではなく……頭には馬のような耳が、腰にはサラサラの尻尾が生えている。────そう、ウマ娘だ。
「お前のことでスレ立てしてみた」
「あ、この以下タフスレって私のレスです」
そう言って彼女はスマホの画面を見せてきた。確かに該当のレスは青い報告ボタンではなく赤い削除ボタンになっている。
「お前かよバカ!おい待て、しかもお前のせいでタフ語録に侵食されてるじゃねぇか」
……話が逸れた。
このアホメイドは俺と同じくあにまん掲示板の住民であり、『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』なるふざけたボタンを押した結果、ウマ娘になったうえで俺の家へ飛ばされたらしい。それが大体半月前のことであり、ボタンの条件であるエッチ…自体は1週間ほど前に済ませたのだが。
「スレの流れ戻すぞ…ニュースの話題を出して、あれはウマ娘になってあにまん民の元に召喚されるボタンを押したことによるもので…っと」
こっそり内容の一部を削ぎ落としたがまあ嘘は言っていないのでいいだろう。さすがに全国レベルで報道されていた内容だからか、これにとりあえず疑ってかかるようなレスは大分減った。
「ん?おい、なんだこの1は。俺のレスじゃねぇのに」
と、ここで折角流れを戻せたのにハンドルで1を詐称し釣り宣言しだす不届き者が現れた。それを咄嗟にスレ主権限で削除したのだが、今度はそのせいで大量の偽物が現れだして収拾がつかなくなった。
「あはは、皆案外乗っかってくるものなんですね!」
その声で振り向くと、バカメイドが俺のスレでスレ主を騙ってやりたい放題レスしているのが目に入った。
「またお前かいい加減にしろ!」
「きゃっ☆」
(一応)主である俺に反逆する不躾なメイドをわからせてやろうと押し倒すと、その瞬間、向かって右側が強く煌めいた。
その様子には既視感がある。このウマ娘がやってきた時とほとんど同じ光だ。
……と、いうことは。
「ん……なん、ですの……あら…?」
目を開けると、そこには腰まで伸びたブロンドヘアをツーサイドアップにした美少女がいた。瞳はサファイアのような澄んだ青色で、頭の上にはメイドと同じくウマ耳が生えている。
服装は青毛ウマ娘と最初に会った時のようにトレセン制服だが、胸は服の上からでも分かるほどの大きさだ。クリークとかドトウ程…ではないか。でもハヤヒデとかタイキくらいはあると思う。
「なあ、一つ聞くけどウマ娘になれる代わりに~とか変な名前のボタン押してないか?」
一度経験したことだから予想が付く。
「はい、そうですわね…その通りです。どうせ何も起きないだろうと思って適当に押したらこんなことに……」
しかしこのウマ娘……見た目が華やかなだけでなく、それに応じた風格と言うか、オーラと言うか。そんな感じのものが備わっている、自分たちよりも一段階上の世界の人間に思える。こんな奴が元あにまん民とは思えなくて、質問してみることにした。
「あにまん掲示板って知ってるか」
「ええ、通学や講義の合間などでよく見ておりましたが」
こんな、住む世界の違いそうな人間でもあにまん見るんだなと思いつつ、状況の整理に移る。
「それはいいとして、今のあんたの状況は分かるな?俺…とついでにそこのメイドもあにまん民で、あんたは『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』を押してここに現れた。つまりはまあ、そういうことだが」
単刀直入に言ってしまえば、ヤるのか、ヤらないのか、ということだ。
「イヤですわ」
「……そこまではっきり言われると傷付くんだが」
まあ、俺の方も美少女とは言え中身あにまん民には未だに抵抗があるが。
「そうですねぇ……ご主人様ってばベッドヤ○ザで乱暴なプレイばかりですからね。お嬢様では耐えられないやもしれません」
「おいやめろ、今関係ないだろ」
「ひっ………近寄らないで、このケダモノ…!」
大体、こいつの趣味に合わせてるだけ(のはず)なのだが。余計なことを言ったせいでご令嬢に怖がられてしまう羽目になった。
「いや、その……ちが…くはないけど…」
「こんなところには居られませんわ!家に帰らせてもらいます」
と、帰ろうと退室する彼女を拗れさせた元凶が呼び止めた。
「どうやって帰るんですか?」
「えっと……それは……」
「私、ウマ娘になってから半月経ちますが未だに捜索届とか出てないんです。もしかしたら前の自分がいたって痕跡自体無くなってるかもしれませんよ」
「…………」
尾花栗毛のウマ娘はしばし考え込み、そして口を開いた。
「一先ず、その…セッ、クスは保留として……これからのことを考えさせていただきますわ」
そうして、俺の一人暮らしには広すぎた家には俺と二人のウマ娘が同居するようになった。
───数日後。パソコンであにまんにアクセスしてウマカテのスレを見ていると、顔を赤らめたお嬢様を連れてメイドが俺の部屋に入ってきた。
「なんだ?二人して」
「はい!体の疼きが抑えられなくなったそうなので、私もあにまん民だからと百合エッチを試みたのですが効果はありませんでした!」
「何ヤってんだお前ェ?!」
というか無効なんだな。女同士だからなのか、あくまで対象あにまん民が俺だからかなのかは知らないが。
「そういうわけですので……その…あまり気乗りはしませんが……」
そう言って、お嬢様は紺色のワンピースを脱いで下着姿になる。
「だ、抱いて…いただけませんか…」
顔を上気させながら言う。その姿はあまりにも妖艶で、相手が元あにまん民であることを忘れてしまいそうな程だった。
「わかった………ところでお前はなんで部屋に残ったままなんだ?」
「え?嫌ですねぇ、私も混ぜてもらうからに決まってるじゃないですか。美少女ウマ娘二人と3P、両手に花ですよ?」
「その花、見た目は綺麗でも中に毒あるよな?」
可憐な見た目だが毒のある花…例えば、スズランとか。そう突っ込むとどうやらお気に召さなかった様子で、メイドは俺をベッドに押し倒した。
「うるさいです☆」
「うわちょっ、やめろ!」
「ちょっと、勝手に始めないでくださいまし」
お嬢様ウマ娘もベッドに駆け寄り、上がってきた。そうして俺のハーレムタイムが始まる───。
……と、思ったが。
「もう……勘弁……出ないから……」
待っていたのは一方的な搾取であった。いつも通りなメイドと、ああは言っていたもののいざヤると女性としての感覚に興味津々なお嬢様に、搾り取られて干からびかけている。逃げようとしてもウマ娘に勝てるわけがなく。
「ご主人様情けないですね~♡ざぁこ♡ざぁこ♡」
「もう終わりですの?そう──つまらないのね」
メイドだけの時点で怪しかった俺のヒエラルキーは、圧倒的種族差によってウマ娘二人の下に置かれることが確定した。
「俺…この部屋の主のはずなんだけど……」
「はい!私たちの為に引き続き居場所提供お願いしますね☆」
「あなたのような変態が、わたくしを支えることができると言う事実に感謝することですわね」
俺はこうしてメイドとお嬢様、二人の玩具にされるのだった。たすけて。
