・ウマムスメイドは突然に

・ウマムスメイドは突然に



《それでは次のニュースです。全国各地で突如馬のような耳と尻尾の女性が現れる事態が多発しています。この現象は数日前から現在も続いており、競走馬の擬人化コンテンツである『ウマ娘プリティーダービー』との関連を疑う声もSNS上では多く寄せられています。しかし、ゲームアプリが2周年を迎えたばかりの同コンテンツでは生放送で新キャラクターが発表されましたが、既存のキャラクターとも新キャラクターとも現実に現れた“ウマ娘”は一致しておらず、その正体は謎に包まれるばかりです》


因子周回の最中、BGM代わりに流していたテレビのニュースでそんな興味深い内容が流れてきた。ウマ娘が現実に現れるという、そんな有り得ない内容が放送されているのだ。このニュース番組はカジュアル寄りとは言え、嘘っぱちやフェイクニュースを出すような番組ではないから……事実ということになるだろう。

周回作業を一旦止めて画面を見ると、街中を歩いていたウマ娘へのインタビュー映像だった。


《「突然ウマ娘になったんですか?」》


《「はい、そうですね。目の前に突然こう…ボタンが現れて、それを押したらこの人の家に飛ばされて、ウマ娘になっていて……」》


インタビューを受けている女性は首から下しか映っていないものの、ロングストレートの髪と同じ色の艶やかな黒色の尻尾が生えていて、それが不規則にブンブンと揺れている。どうやら“本物”らしい。


「ウマ娘になっていて……ボタンを押したら……いいなぁ、欲しいな」


子供の頃に見た性転換モノの漫画にすっかり性癖を破壊され、それが特段容姿が優れているわけでも、勉強や運動の能力も高くないことと結び付き、美少女に生まれ変わってチヤホヤされたい願望を持つようになった。

それで成人してからTSモノの催眠音声や漫画、ゲームを買って楽しむうちに、段々M属性へと傾いていき。


「美少女ウマ娘になって……それで身体能力では余裕で押し退けられるはずなのに恐怖で抵抗できず、されるがままに…滅茶苦茶にされるとか……いい…いいぞ…!」


いつしかそんな倒錯した性癖を持つようになってしまった。お気に入りのシチュは、獣人奴隷メイドになって粗相をしたらご主人様に乱暴なオシオキをされる、とかそんな感じ。


「あ、そうだ。ついでにあにまん見よ」


妄想を膨らませそれを書き殴って投下する。それが自分のあにまん民としてのルーティンであり、更なるネタを探すためにあにまんを漁ろうとすると。


「なんだこれ……」


視界の端に見覚えのない物が映った気がしてスマホから目を離して前を見ると、ボタンが置いてあった。


「『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』……」


そんな、冗談みたいな内容が側面に書いてある謎のボタン。そしてここで、さっきのニュースを思い出した。


「目の前に突然現れたボタン……それを押したらウマ娘に……ということは」


数日前から続いているというウマ娘化現象はこのボタンによるもので、それが自分の前に現れた。そういうことではないだろうか。


「ウマ娘になれる代わりに…あにまん民と…」


右手に持ったままのスマホに目を落とす。あにまんのトップページを開いているそこにはちょくちょく【閲覧注意】と入ったスレタイが並んでおり。


「これを押したら……飢えたあにまん民が待っていて……ウマ娘になったとはいえ、元男だろうと躊躇なく襲ってきて……滅茶苦茶にされる……」


まさに自分の性癖通りの展開。押さない理由があろうか?

ここで左手に持ったボタンを見つめる。押しても何も起きないかもしれないし、自分の思ったようなことが起きないかもしれない。それでも、と躊躇いながら押すと、眩い光に包まれ、体を焼かれるような熱が駆け上がっていった。



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「クソッ、最初の無料10連はSSR無しかよ…」


イラストの圧倒的妖艶さに惹かれ、ラモーヌSSRの一点狙いで回す。がしかし、さすがにここでは出なかった。


「まあいいや。まだ100連はあるしいつか出るだろ」


そう自分に言い聞かせて、アプリを一旦閉じる。そしてあにまんを開いてウマカテの様子を見る。傷の舐め合いでもしようと思ったのだが…。


「こいつ10連目でラモーヌ引いてやがるよ。あ、こっちは10連だけで3枚だと?チクショウ…」


………傷は深くなるばかりであった。まあパッとしない結果でわざわざスレを立てるような人間はいないのでバイアスだろう。こういう幸運は幾多の爆死した屍の上に成っているわけだ。


「で……うあっ?!」


正面から突如とんでもない強さの光が放たれ、思わず目を閉じる。少なくともこんな強い光を発する代物は置いてなかったはずなんだが。

そろそろ光が弱まってきたかと思い目を開くと、そこには女の子がいた。


「だ、誰?」


「や…」


「や…?」


「やめて!ぼ、私に乱暴する気でしょ?!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」


「しねぇよ、というかお前誰だよ」


いきなり人聞きの悪いことを言い出す失礼な少女。改めて見ると、その格好には見覚えがあった。青色ベースで、セーラー襟に白いリボンの制服……トレセン学園の冬制服だ。

視線を上げて顔を見る。やや幼い可愛らしい顔立ちで、瞳は藍色。青みがかった黒髪をポニーテールにまとめており、頭頂にはウマ耳?が生えている。視線を今度は下へ移すと、髪と同色の尻尾が右へ左へ振れるのが目に入った。その容姿は間違いなく。


「………ウマ娘?」


「そう見えるってことは、成功ですね!」


「そう見えるって……お前ウマ娘じゃないのか?」


「はい、『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』を押してウマ娘になった元人間です!」


「ウマ娘になれる代わりに……え、待てよなんて言った」


そんなふざけたボタンがあるか、と思っていたら聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするので再確認する。


「『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』です」


「お前は、ウマ娘になってて。で、俺はあにまん民で……えぇ、マジかよ」


誰が何のためにそんなボタンを用意したんだろうか?不気味で不安になる。そしてここで、目の前の相手は多分あにまん民が何かをわかった上で押したはずだということに気づく。


「ってことはお前あにまん民なのか?」


「はい!」


「えっ、ますます嫌なんだけど」


元男のあにまん民。相手が例え美少女でウマ娘だとしても大幅なマイナスポイントが付く属性である。そりゃあ確かに女とヤってみたいという欲はあるけど、さすがにこいつを選ぶほど形振り構っていられないわけではない。


「なんで断るんですか?あにまん民は女と見るや多勢に無勢だいっけぇと飛び付くケダモノじゃなかったんですか?」


「くっそ失礼だなお前!もういいよ、出てけ」


そう言って追い出そうとするが、そのウマ娘は腕にすがりついてきて上目遣いでこちらを見上げてきた。見た目だけはいいからその様子でつい追い出すのを躊躇ってしまった。


「待ってください!か弱い女の子を着の身着のままで外に放り出すつもりですか?」


「ウマ娘なんだから別にか弱くないよな?」


そう、ウマ娘は何tもあるタイヤを一人二人で引っ張り、壁をパンチで破壊し、柵を脚で蹴り壊す。およそか弱いという言葉とは程遠い存在である。


「それは……その……まあそうなんですが」


「じゃあ俺は知らないからな、あにまん民が必要なら他を当たってくれ」


「えっと…あの、見捨てないでぇ……何でもしますから……」


突き放すとさっきまでの勢いはどこへやら、急に大人しくなった。そのしおらしい様子を見て、追放へと傾いていたシーソーが逆方向に動く。

……何でも、か。


「じゃあ…家事とかは?できるのなら置いてやってもいいが」


「はい、そこそこできますよ!」


「じゃあメイドとしてここに居させてやるよ」


昔読んだ漫画の、主人公の知り合いであるお坊っちゃんにに仕えていたメイドキャラ。時折しか作中では出てこないもの、俺の初恋はそのキャラだった。

以来、メイドの出てくる作品を読み漁って、エロゲを買える年齢になったらメイドモノのゲームをしばしば買った。

だから、ヤるとかはちょっと無理だが、メイドとしてならまあ家に置いてやらんこともないというわけだ。


「はい!じゃあよろしくお願いします、ご主人様」


「分かってるじゃん。良いよなぁご主人様呼び」


こうして、俺は突如現れたウマ娘と暮らすことになった。





そうして1週間ほどが経過した。例のウマ娘には通販で取り寄せたメイド服を着せ、主人とメイドとしてロールプレイを楽しんでいたのだが。


「最近抜いてねぇ……」


長い間一人暮らしで自由を満喫していたところに、元男とは言え常に家に家族でもない女がいる状況となったんだ。落ち着いて抜くことなどできるわけがない。

それに加えて、あいつは中身がアレだが見てくれは美少女ウマ娘メイド。それが時たま無防備な姿を見せたりするものだから性欲は溜まる一方だ。


「ご主人様、お風呂の用意が……きゃっ!?」


そこへ風呂の支度をしていたあいつが呼びに来たので、ついに性欲に負けて床へ押し倒してしまった。


「……ふふっ、ようやくその気になったんですか?」


いたずらっぽく微笑んで見せるウマ娘。その余裕ありげな態度に、俺は自分の余裕のなさを笑われたように思ってヤケクソ気味になる。


「ああ、そうだよ。強制的に、なんだろ?逃げるなよ」





「くっ、うっ……ふぅ……」


精を吐いた後でも、まだ高揚が止まらない。メイド姿の美少女での童貞卒業。思い描いていた理想通りだ。ただし相手の中身があにまん民の元男という点を除けば、だが。


「うぅ…痛い……ひどいです……私…汚されてしまいました……もうお嫁に行けません……」


当の相手がそんなことを言い出すが、どうせ本気で言っているわけではないだろう。


「おい、嘘泣きやめろ。分かるわさすがに」


「あ、バレちゃいました?」


彼女が舌を少し出しながらウインクするのを見てやはりというか、なんというか。例えばこの1週間、お仕置きされたいが為なのかこのメイドはわざと俺にスープやジュースを溢したりしていた。


「あ、でも痛かったのは本当ですよ。この赤いのは血です」


「それは……すまん。初めてで周りが見えなくて」


そこについては俺の落ち度なので正直に謝る。が、彼女は気にしていない様子…というかむしろどこか嬉しそうで。


「それにしてもご主人様、素質ありますね。初めての女の子相手にポニーテールを操縦桿みたいに引っ張ってバックで犯すなんて鬼畜そのものですよ?」


え、俺そんなことやってたかと思い出すが………ああうん、つい興奮してやってたわ。その時のこいつ演技じゃなく素で泣いてた気がする。


「すまん……」


「いえ、その…私、乱暴にされるの割と好きなので……いい、ですよ」


「いいのかそれ……」


こうして俺は結局このウマ娘とヤってしまい、追い出すに追い出せなくなってしまったのだった。



青毛メイドちゃん


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